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サッカー フットサル コラム 2020年10月20日

名古屋の善戦に見る「川崎対策」。相手の良さを消すサッカーこそがJリーグの特徴

後藤健生コラム by 後藤 健生
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10月18日のJ1リーグ第23節で名古屋グランパスを破った川崎フロンターレが、リーグ戦11連勝を記録した。同一シーズン中の連勝の新記録だそうだ。

7月に再開された第2節以降、第11節まで「10連勝」を記録した川崎だったが、第12節のアウェーゲームで名古屋に敗れて連勝は途切れた。そして、第13節以来、10試合連続勝利を達成して、第23節で「11連勝」を懸けて再び名古屋と対戦することになったのだ。

名古屋とはJリーグYBCルヴァンカップのグループステージでも2対2の引き分けに終わっており、今シーズン圧倒的な強さを誇っている川崎にとって、まだ勝てていない名古屋との対戦は「34節の中の単なる1試合」以上の意味を持つ試合だった。

そして、実際に第23節の試合でも名古屋は川崎と互角の戦いを繰り広げた。

結果として、この試合は川崎が3対0で勝利し、「11連勝」を達成すると同時に名古屋に対する“リベンジ”も果たすことになった。しかし、川崎にとって今シーズンの中で最も難しい試合のひとつだったのではないか。

ボールが川崎に渡ると割り切って自陣に引いて守る名古屋を川崎が攻めあぐねた。1試合平均3ゴール近くをゲットしている川崎としても、ついに最後まで流れの中から得点することができなかったのだ。

もっとも、それならそれで、セットプレーから3ゴールを決めてしまう、それも前半終了間際の44分にCKから先制してしまうあたりに今年の川崎の強さを見ることができる。そして、名古屋は攻撃でも川崎のゴールを再三にわたって脅かした。

実は、川崎は10日ほど前の10月7日にも同じ等々力陸上競技場で敗戦を喫している。YBCルヴァンカップの準決勝でFC東京に0対2で敗れたのだ。

しかし、この試合のFC東京は守備一辺倒だった。自陣に引いて守り、ボールを奪ってから俊足の永井謙佑を使ってカウンターに徹した。そして、永井が粘って獲得したFKをレアンドロが直接決めて先制。そして、62分にも永井のクロスをレアンドロが決めた。“永井の俊足”という武器を有効に生かした勝利だったが、内容的には川崎が攻め続けた90分で、川崎が大量点で勝っていてもおかしくはなかった。

だが、名古屋の戦い方は違った。名古屋もたしかに守るときは引いて守った。だが、そこからカウンター攻撃を仕掛けて名古屋は再三のチャンスをつかんだのだ。

攻撃の際の基本コンセプトはロングボールを使って、ピッチを大きく使ってダイナミックに攻めることだった。

そして、前線では金崎夢生が体を張った。何度も倒されてFKを獲得。ファウルをとってもらえなかった場面を含めれば金崎はいったい何度倒されたことだろう。また、両サイドバックも攻め上がってサイドから粘り強くつなぎ、左サイドからは(64分以降は右サイドから)マテウスがドリブルで川崎の守備をこじ開けた。

「名古屋が勝っていてもおかしくない」。そんな試合だった。

名古屋の戦い方からは「打倒川崎」を目指すチームへのヒントのようなものが見えてくる。

まず、守備一辺倒にならないことだ。どんなに守備を固めたとしても、今の川崎の攻撃を90分に渡って凌ぎきるのは難しい。どこかで崩されてしまうか、あるいはこの日の名古屋のようにセットプレーから決められてしまう。

それなら川崎の攻撃を受け続けるのではなく、川崎相手には攻めを仕掛けるべきだ。

川崎の守備はたしかに強い。自らがパスを効果的につなぐサッカーをしているので、相手のパスコースを読み、危険なスペースを察知する「目」を持っている。だから、相手がパスを回してくればスペースを消してパスコースを限定し、守備の網に追い込んでボールを奪いきることができる。

だから、そんな守備の網をかいくぐれるようにロングボールを使って攻めるのだ。

たとえば川崎のCBジェジエウはボール奪取能力の高いDFだ。だが、ジェジエウは時々ミスを犯し、パスミスもある。そこで生まれたセカンドボールを拾うことができれば大きなチャンスになる。また、川崎はパス回しを大事にするチームなので、DFから無理にパスをつなごうとしてカットされることもある。そうしたパスカットを意図的に狙えば、チャンスを拾うこともできるだろう。

そうした意味で、名古屋の攻撃は他のチームにとっても参考になるのではないか。金崎のポストプレーとか、マテウスのドリブルといった個人能力を前面に押し出し、川崎のプレッシャーを掻い潜りながら攻めた名古屋の戦略が功を奏したといっていいだろう。そうした、戦略性を持って戦えば、川崎に対して攻める場面も増やせるのではないか。

昨年のJ1リーグで優勝した横浜F・マリノスだが、今シーズンはなかなか上位に上がれないでいる。各チームが横浜の超攻撃的なサッカーの弱点を研究して、スペースを埋めて守り、そして攻撃参加してくるサイドバックの裏を狙うロングボールで攻撃を仕掛けた。その結果、横浜の良さが消されてしまったのだ。相手の良さを消して戦う……。それが、Jリーグというリーグの特徴だ。 

おそらく、これから終盤戦にかけて、対戦相手はさまざまな「川崎対策」を立てて臨んでくることだろう。そういう中から、どんな「対策」が有効なのかも見えてくる。そして、来シーズンにはどのチームも有効な「対策」を身に付けてくるはずだ。

そうした「対策」に川崎がどうやって対抗していくのか……。そうやって、この国のサッカーは進化していくのである。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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