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横浜FCが浦和レッズに“連勝”した。
まず9月26日のJ1リーグ第19節。前半の立ち上がりこそ押し込まれたものの、次第にボール・ポゼッションでも互角に持ち込んだアウェーの横浜FCは16分に左サイドの松尾佑介がコースを狙ったシュートを右下隅に決めて先制。さらに35分には左のタッチライン際で抜け出した松尾が、レアンドロ・ドミンゲスからのパスを受けてフリーで決めて2点目。
後半は、浦和が選手の並びを変更し、2列目からボランチの位置に下りた柏木陽介のパス回しを中心に攻め立てたが、横浜FCは冷静に守り切ってそのまま2対0で勝利した。
そして、その翌27日には高円宮杯U-18プリンスリーグ関東の第3節で、浦和駒場スタジアムに乗り込んだ横浜FCユースが浦和レッドダイヤモンズユース相手と戦い、3対1と逆戦勝利を収めたのだ。
後半の立ち上がりに一気に攻勢をかけてきた浦和ユースが57分に分厚い攻撃を展開し、最後は盛嘉伊人が決めて先制。だが、72分には横浜FCユースの金子颯太の入れたクロスがオウンゴールを誘発して同点となり、88分にはカウンターからエースの「10番」中川敦瑛が持ち込み、パスを出すと見せかけてそのままシュートを決めてリード。さらに、追加タイムにも中川が相手DFからボールを奪って原大貴のゴールをお膳立て。3対1の見事な逆転勝利だった。
J1の試合では、代表クラスの選手を多数を抱える浦和が個人能力としては上回っていたが、横浜FCはパスの質の高さで対抗した。浦和の方はパスがつながっても、受けた選手が後ろを向いていたり、さらに次にパスを付ける選手がスペースに入っておらず、結局パスを下げざるを得ないような状態が多かった。
一方、横浜FCはパスを受ける選手がきちん動いてスペースに入り、前をむいて処理することができていたし、次にパスを受ける選手がスペースに入り込んで複数のパスコースを確保。パスをつなぐことによってボールを前へ進めていくことができていた。
ユースの試合でも、横浜FCは基本的にはパスのサッカーを繰り広げた。
センターバックにはともに180センチの長身ながら足元の技術のある増田健昇と杉田隼のコンビ。そして右サイドバックでキャプテンの田畑麟を含めた3人でゆっくりつなぎながら攻撃のスイッチを入れるのを待つ(もう少し、早めに仕掛ける場面もほしかったが)。そして、両サイドをワイドに使ってボールを運んでいく道筋がしっかりとできていた。3ゴールのうち、勝負を決めた2ゴールはカウンターであり、中川の個人能力だったが、同点ゴールはここからの攻めが実ったものだ。
J1を戦うトップチームと同じように、ユースの方もパスをつなぐことによってボールを効率的に前に進めることができていた。
横浜FCのトップチームは、今シーズン13年ぶりのJ1を戦っている。2007年には4勝しただけで最終的に最下位に終わったが、今年はすでに6勝し、現在は13位。鹿島アントラーズや浦和レッズといったビッグクラブにも勝利し、つい先日には首位を独走する川崎フロンターレ相手にも2対3で敗れはしたものの善戦した。そのパスをつなぐサッカーの質も開幕(再開)当時に格段に向上している。
一方、ユース(U-18)の方も、今シーズンが高円宮杯プレミアリーグ初参戦である。今シーズンは残念ながら新型コロナウイルス感染症の拡大で変則的なリーグ(関東だけの大会)となっているが、それでも強豪ひしめく関東のリーグである。第3節で浦和に勝った横浜FCユースは、同日に首位のFC東京U-18が引き分けに終わったために、ついに首位に立つこととなった。
トップチームとユースチームが、ともにリーグ戦で好成績を収めており、横浜FCというクラブにとって、2020年はまさに画期的なシーズンとなりそうである。
トップではユース出身の斉藤光毅も活躍中。一昨年16歳でトップチームにデビューした斉藤は、昨年はJ1昇格に貢献し、U-20ワールドカップにも最年少で招集された。斉藤のような存在は後輩たちにとっても大きな刺激となるはずだ。
またトップチームを率いる下平隆宏監督は、かつて柏レイソルの下部組織で多くの優秀な選手を育てた経験の持ち主だけに、ユース年代の育成についても理解があるはず。もともと財政的に豊かではない横浜FCのようなクラブにとっては、育成部門の充実はきわめて重要だ。ユースとトップがともに活躍する今シーズンは、将来のクラブの礎を築くための重要な年となることだろう。
それにしても、トップチームとユースチームが連日、同じ相手と対戦したというのは面白いスケジュールだった。
プリンスリーグの方は現在無観客開催で、スタンドには家族や関係者以外の姿がなかった。今シーズンは仕方がないが、これから今回と同じようなスケジュールが実現したら、ぜひ多くのサポーターがユースのゲームも観戦できるようにした方がいいのではないか。
たとえば、トップチームのゲーム(埼玉スタジアムで18時キックオフ)の前に、埼玉スタのサブグラウンドでユースのゲームを行ってもいいだろうし、できることなら埼玉スタでダブルヘッダーにしたらいい。
僕は、もう10数年前のことだが、ブエノスアイレスのボンボネーラでアルゼンチンのスーパークラシコ、ボカ・ジュニアーズ対リーベルプレートの試合を観戦したことがあるが、前座試合として3軍(ユースのこと)の試合が行われていた。アルゼンチンではトップリーグと同じ日程で各年代の試合が組まれるので、その週末にはボカとリーベルの各年代のチームが各地のグラウンドで対戦していたのだ。
前座試合とはいえ、3万人以上のサポーターがそれは熱烈な応援を繰り広げていた。ユースの選手たちのプレーを多くの人に見てもらえるし、サポーターからのプレッシャーを受けながらプレーする経験もできる。日本でも、そんな試みができないものだろうか。
プリンスリーグの次節(第4節、10月3日)には横浜F・マリノスとの「横浜ダービー」も組まれているのだが……
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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