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サッカー フットサル コラム 2020年9月23日

カウンターによる得点が増えている?「守から攻への切り替え」が今季のJリーグのテーマ

後藤健生コラム by 後藤 健生
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9月19日と20日に行われたJ1リーグ第17節では、右サイドバックによる素晴らしいシュートを2つも目撃することができた。

1つは柏レイソルの北爪健吾によるもの。そして、もう1つは川崎フロンターレの山根視来によるものだ。

北爪のゴールはサンフレッチェ広島戦の前半45分。広島が9分のドウグラス・ヴィエイラのゴールで1点をリード。前半はその後も広島ペースで進んでおり、このまま0対1のスコアでハーフタイムに入るかと思われた場面だった。

MF大谷秀和からのボールがハーフラインを越えたあたりにいたオルンガに渡ると、広島のDFがオルンガを囲んだ。この位置で現在得点王争いトップにいるオルンガに突破を許したら失点を覚悟しなくてはならないのだから当然の対応だろう。実際、この試合では広島のDF荒木隼人や佐々木翔が早めに体を寄せることでオルンガに自由を与えず、オルンガも得点機会をつかめていなかった。

相手に囲まれたオルンガは突破を諦めて左サイドにいた江坂任にボールを預けた。その瞬間、広島のDFがオルンガに集中していたため、右サイドに大きなスペースが生まれており、そこに北爪が走り込んでいた。そして、それを見逃さなかった江坂のパスに合わせると、フリーの北爪は広島ゴールの左下隅に強烈なゴールを叩き込んだのだ。

「DFとは思えぬほどの」と形容したくなるようなクリーンシュートだったが、今のDFはこれくらいのシュート力を誰でも持っているのだろう。

翌日、浦和レッズとの試合で山根が決めたシュートはまさに一級品だった。前半37分の先制ゴールである。

浦和の選手は個人能力が高いからデュエルで川崎相手に一歩も引けを取らず、川崎も前半は攻めあぐむ展開が続いていた。そんな時間帯に左サイドの齋藤学から大島僚太、脇坂泰斗を経由して右の家長昭博にボールが渡った。家長はここで足を止めてボールをキープ。3人の浦和DFを引き付けると、後方から走り込んできた山根に浮き球のパスを送ったのだ。

家長はDFに取り囲まれていたから、たしかにパスを通すには浮き球という選択以外にはなかった。だが、かなり高いボールだったから山根にとっては処理が難しいかと思われたが、山根はジャンプしてボレーで叩き込んでしまったのだ。

ただ、この2つのゴールの共通点は、サイドバックが素晴らしいシュートを決めたということだけだ。

むしろ、浦和戦の川崎の3点目(90+2分)の方が、ボールが動く経路としては柏の北爪のゴールとよく似ていた。左サイドにいた守田英正が右に大きく振ったボールを受けたのはサイドバックの山根ではなくサイドハーフの家長だったし、その後、家長は自分自身でシュートを決めるのではなく、再び左に折り返して、最後は宮代大聖のシュートの跳ね返りをレアンドロ・ダミアンが決めたのだが、大きなサイドチェンジによってカウンターが成立したところがよく似ている。

今シーズンの川崎は1試合平均得点が3を超えているが、こういう長いボールを使ったカウンターによる得点が非常に多い。従来は、ショートパスをつないで攻めるイメージが強かった川崎だが、今シーズンはロングボールを駆使して相手を攻め崩す怖さが加わっている。

川崎が先制してリードを保ったまま終盤を迎える。すると、相手は前がかりになるとともに、川崎のパスワークに翻弄されて足が止まってくる。そこで、川崎は豊富な選手層にものを言わせて交代の駒を使ってさらに攻撃を活性化。そして、相手陣内に生じる広大なスペースをロングボールを使って崩していくというのがカウンターによる得点のパターンである。

そして、柏の北爪のゴールもそうだったが、ロング・カウンターによる得点は、川崎以外のチームでも目立っているように思われる(あくまでも、僕の印象レベルの話なのだが)。

ここ数年、世界のサッカー界ではドイツで「ゲーゲンプレッシング」ということが言われるようになって以来、ボールを奪われたらすぐにプレスをかけてボールを奪い返すという考え方が強調されてきた。「攻から守への切り替え」流行の外来語で言えば「ネガティブ・トランジション」が大事だということだ。

だが、ボールを奪い返すことだけを考えて相手を追い回していたのでは、ボールを奪い返した瞬間に攻撃の体形ができていないために攻めに転じることができなくなってしまう。奪い返してから、うまく攻めに切り替えるためには、攻から守に切り替えてプレスをかけに行っている時も、常に攻撃をイメージしながらポジションを取ることが必要なのだ。

今シーズンのJリーグでは、そういう意識が高いチームがいくつか存在する。その結果が、カウンター(ショート・カウンターも、ロング・カウンターも含めて)による得点の増加につながっているのではないだろうか。

つまり、これまでよりも一歩進んで「ボールを奪い返してからどのように攻め崩すか」ということをテーマに戦術を整備してきたチームが多いということだ。

今シーズン、J1に昇格して善戦を続けている横浜FCはボールを奪い返したその瞬間に攻撃のための配置が出来上がっているため、素早く攻めに転じることができる。守備を整備したセレッソ大阪も、守から攻への切り替えの速さが武器になっている。そして、川崎フロンターレは、パス能力の高さを生かしてロング・カウンターを常に狙い続けている。

このように考えてくると、第17節の2試合(柏対広島と浦和対川崎)で、どこか似たようなイメージのゴールを目撃することになったのは、どうやら偶然の出来事ではないように思えてくるのだ。

Jリーグも、毎年のように進化を続けている……。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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