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サッカー フットサル コラム 2020年8月27日

“大砲”の加入で攻撃力を取り戻した横浜FM。SBの攻撃参加は自重気味ながら、分厚い攻撃

後藤健生コラム by 後藤 健生
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2月の開幕戦以来J1リーグで結果を残せずに苦しんでいた昨年の覇者、横浜F・マリノスが、ようやく覚醒したようだ。きっかけとなったのは、ジュニオール・サントスと前田大然の加入である。

彼らの加入によって、少なくとも得点力不足という問題は解消した。横浜は8月19日の第11節の清水エスパルス戦は激しい撃ち合いの末に4対3で勝利。そして、第12節のサンフレッチェ広島戦も3対1で勝ち切ったのだ。

第10節までの10試合で21得点。しかも、複数得点試合もたった3試合に終わっていたチームが、直近2試合で7ゴールを奪ったのだ。順位も8位まで上げてきた。

柏レイソルから期限付き移籍でやって来たジュニオール・サントスは想像以上の拾い物だったようだ。柏では好調オルンガの陰で今シーズンは1試合に出場しただけだったブラジル人ストライカーは、パワフルで強引な突破とシュート感覚の良さを発揮して、清水戦では2ゴール、そして広島戦でも1ゴールを決めた。

これまでの横浜の得点源といえば、昨シーズンの得点ランキング1位を分け合ったマルコス・ジュニオールと仲川輝人だった。どちらも、小柄ながらスペースに走り込んで、点で合わせるのがうまい選手だった。

だが、ジュニオール・サントスは188センチ、85キロというパワフルな体躯を生かして、相手のDFが持っているボールにも激しくチャージして、奪ったボールを単独で持ち込んでシュートを狙うことができる。つまり、「個の力」を存分に発揮するタイプのCFだ。

もう一人の前田はスピードを生かした切れ込みが鋭いアタッカーだ。

横浜のドリブラーといえば遠藤渓太がいるが、遠藤の場合は縦に抜けて、そのままクロスを上げたり、シュートを狙ったりする直線的なドリブルが持ち味だった。それに対して、前田はもちろんスピードを生かして縦に抜けることもできるが、コーナー付近までドリブルでボールを運んで、味方のフォローを待って攻撃の起点を作るタイプだ。

つまり、横浜の攻撃陣は、従来とは異質な要素が加わったことによって活性化したようである。

横浜は、もともと攻撃的なチームだ。“超攻撃的”と言うべきだろうか。DFも攻め上がった分厚い攻撃で相手を追い詰め、トップ下のマルコス・ジュニオールがパスで攻撃を操る。

今シーズンの横浜の問題点は、守備にもあった。

横浜は両サイドバックをMFの位置に上げて前線の人数を増やして分厚い攻撃をしようというコンセプトで戦っているが、高い位置にポジションを上げたサイドバックの裏のスペースを狙われたのだ。相手が昨年のチャンピオンということもあって、横浜と対戦するチームはどこも横浜を分析して、その弱点を探して戦っている。その際に、横浜の両サイドバックの裏のスペースは狙いどころだったのだ。

独特のシステムで戦う横浜だけに、相手チームの監督としては狙いどころもはっきりしたはずだ(それが、実際にピッチ上で機能するかは別として)。

横浜はDFラインを高く上げてくる。その裏側にパスを通しさえすれば、そこには攻撃陣が利用できる広大なスペースが生じているのだ。とくに、サイドバックの裏のスペースを狙えば、サイドでの突破口を開くこともできるし、横浜の強力なCBを外に引っ張り出してスペースを作ることもできる。

この、両サイドバックの裏のスペースの問題をどう解決するのか……。

超攻撃的サッカーを標榜し続けてきたアンジェ・ポステコグルー監督も、さすがにこの問題は放置できなかったようで、最近の横浜はサイドバックの攻撃参加を自重している。

左サイドバックのティーラトンは、昨シーズンと同じようにMFに入ってビルドアップに携わり、そしてトップ下でキラーパスを出すような仕事を続けているが、それでも攻撃に出ずっぱりではなく、行くべき時と行くべきではない場合を見極めて効率的に攻撃に参加ようとしているが。

しかし、右サイドからの攻撃参加は昨シーズンほど活発ではなく、攻撃に出ても従来のサイドバックと同じようにタッチライン沿いを駆け上がる、オーバーラップがほとんどだ。

サイドバックの攻撃参加が昨シーズンより少なくなったとしても、タッチ数の少ないパスを好感しながら早めに前線までボールを送り込むというコンセプトは同じ。そして、相手ボールになった場合も攻め上がった状態のままで、前線からプレッシャーをかけて、相手陣内でのボール奪取を狙っている。

また、攻撃の厚みを増すためには、ボランチ2人のパフォーマンスも、このチームの勝利に直結する。

たとえば、第12節の広島戦、前半はともにミスもあって、攻撃のテンポが上がらない状態が続いていたが、後半に入ると横浜のリズムとなり、2点を追加した。前後半を比べてみて、いちばんの違いはボランチの一角、山口蛍の動きだった。前半、山口はあくまでも守備的なMFとしてプレー。むしろ、もう1人のボランチ、喜田拓也の方が攻めに出ていたが、後半に入ると山口が前線まで飛び出すようになる。

多少、攻撃参加などを犠牲にしても、失点を減らすことができれば、もともと攻撃力が高いチームなので、昨年のリーグ戦後半の強さを取り戻すことも可能だ。

もっとも、首位の川崎フロンターレは、先日名古屋グランパスに敗れたものの、2位との勝点差を開いている。そんな、横浜と川崎は9月の初めに直接対決を控えている。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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