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サッカー フットサル コラム 2020年8月10日

再開後無傷の8連勝……。川崎フロンターレがどうにも止まらない

後藤健生コラム by 後藤 健生
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7月のJ1リーグ再開から無傷の8連勝。奪ったゴールは、「1試合平均3」に近い23得点というのだ。川崎フロンターレがどうにも止まらない。

第9節の大分トリニータ戦も、得点こそ2点にとどまったものの、内容はまさに圧勝だった。川崎のシュート数14本に対して、大分のシュートはたったの1本。前半終了間際にCKから島川俊郎が放ったヘディングシュートだけだった。

川崎は開始5分で右サイドからワンタッチ・パスを小気味よくつないで、左サイドまで回し、フリーになっていた三苫薫が(本人によれば「ミスキック」だったそうだが)決めて早々と先制。2点目は前線からのプレスが効いて大分のDF間のパスが乱れたところをレアンドロ・ダミアンに拾って決めたものだが、川崎のプレッシャーを受けて大分はなかなかパスを回せず、GKへのバックパスを選択せざるを得ない場面がこの失点シーンの前にも何度もあった。

川崎のゴールが2点だけだったことが不思議に思えるほどの一方的な試合だった。

川崎がパスのうまいチームであることは、今さら紹介すべきことではないだろう。

「相手のマークから1歩でも離れればフリーになれるし、何も広大なスペースを求めて走り回る必要はない」といったパスの基本を植え付けたのは風間八宏前監督だった。短いパスをゆっくりとつないでいるのに、相手チームは川崎のボールを奪うことができない。ポイントは、相手からフリーになれるスペースを見つける目である。

風間八宏前監督が確立したそんなパスワークのサッカーに、後継者となった鬼木達監督が守備意識や攻めの鋭さを付け加えて作り上げたチームは2017年と2018年にJ1リーグで連覇することになる。

ゆっくりと正確にボールを回しながら、相手守備陣に隙を見つけると一気にスピードアップしてワンタッチのバスをつないで相手守備陣を切り崩してしまう……。2018年のヴィッセル神戸戦での、ワンタッチ・パスをつないで最後に大島僚太が決めたあのゴールこそがその集大成だった。

だが、昨シーズンの川崎は「あと1点」が取れずに勝点を失う試合が多く、結局、屈辱的な4位という成績に終わった。従って、川崎にとって今年は「新たな挑戦」の年なのだ。そのため、鬼木監督が徹底させたのは、、より速くゴール前にボールを送り込むという意識、パス・スピードの意識の徹底だった。

実際、今シーズンの川崎は、従来からのパスの正確性はそのまま維持した上で“パス・スピード”を大幅にアップさせており、これによってその攻撃力はかつてないほど強力化している。

試合前のウォーミングアップを見ても、“パス・スピード”の意識を理解することができる。ウォーミングアップでは、どのチームもいわゆる「鳥かご」と呼ばれるボール回しを行う。だが、そうした場面でも今シーズンの川崎はとにかく狭いスペースでスピードのあるパスを回そうとしているのだ。

シュート練習でもそうだ。後ろの選手が前方の味方にパスを供給して、前の選手がシュートを撃ったり、あるいは前の選手が落としたボールを後方の選手がシュートするなどパターンはいろいろだが、たいていのチームはシュートを撃つ、つまりキックすることだけを意識している。だが、川崎のシュート練習では前の選手につけるパスが実に速くて、また厳しいのだ。そのパスを足元にピタリと収めて、時間をかけずに早いタイミングで正確なシュートにコースを狙って撃つ。つまり、実戦と同じ感覚でシュート練習をしているのだ。

いずれにしても、大事なのは「パス・スピード」に対する意識付けだ。

リーグを連破した当時の川崎と比べると、ロングパスが多いのも今シーズンの特徴だ。かつての川崎は“小さなスペース”を見つける目が優れていたが、その目の届く範囲が広くなったようだ。パスの出し手も、受け手も、スペースが見えているから、スペースに走れば、そこに絶妙のタイミングで正確なパスが送り込まれてくる。

かつての川崎では、1本のパスで局面を変えるのは中村憲剛の仕事だった。そして、大島僚太がそれを補っていた。

その中村も間もなく40歳を迎える。そして、中村は昨年11月には左膝前十字靱帯損傷という重傷を負ってまだ復帰には至っていない。だが、今シーズンの川崎を見ていると中村憲剛の不在をまったく感じさせない。何しろ、今ではどの選手も中村憲剛ばりのロングボールを駆使できるようになっているのだ。

川崎の試合を見ていると「なぜ、この選手がそこでフリーになっているのだろう?」と不思議に思えることがあるが、それは相手より早くスペースを見つけて正確で速いパスが出せているからだ。

過密日程で行われている今シーズンのJリーグでは、川崎の選手層の厚さも大きな武器だ。再開前に負傷した小林悠は復帰するやすぐに得点を重ねているし、大学サッカー界最高のアタッカーだった旗手怜央と三苫薫がそろって加入し、2人ともすでに川崎のサッカーに完全になじんでいる。チームのスタイルが確立されているので、新しく入った選手がすぐにチームになじめるというのも、このチームの大きな特徴だ。

さらに、複数ポジションをこなせる選手も多いので選手をローテーションしながら戦うことができる。まさに、どのポジションにも複数の選手が控えているのだ。

また、「人が走るよりもボールを大きく速く動かす」という川崎のプレースタイルは暑さの中での過密日程の中では有利に働くはずだ。

たとえ、なかなか得点できなかったとしても、相手チームは川崎にスピードのあるパスに振り回されて足が止まってくる。そこで、川崎は豊富な駒を使ってさらに攻撃力を上げて仕留めることができるのだ。

さらに言えば、今シーズンの川崎はACLの負担もない。川崎がこのまま独走してしまう可能性は極めて高い。逆に言えば、今後のJリーグの最大の興味は「いつ、どのチームが、どのようにして川崎を止めるか」なのではないだろうか。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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