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JリーグYBCルヴァンカップが再開された。
今シーズンは新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の拡大によって長い中断があったためレギュレーションが大幅に変更となり、グループステージはホーム&アウェーでなく1回戦制で行われることになった。そのため、来週8月12日の第3節でグループステージは終了となる。
第2節終了時点で、すでに柏レイソルのプライムステージ進出が決まった。
グループステージの4つの組の首位チームと2位の中で最高の成績を収めたチームがプライムステージに進み、ACL出場の3チームと合わせて8チームによる準々決勝が行われるのだ。
そして、勝点が並んだ場合は全試合の得失点差ではなく、当該チームの戦績が優先されるので、第2節に湘南ベルマーレに勝利した柏は次節敗れて湘南と勝点が並んだとしても首位となることが確定したのだ。
Jリーグ開幕前の1992年に「Jリーグヤマザキナビスコカップ」として始まったこの大会は、1年だけ開催されなかった年があるので(1995年)今年で通算28回目となる。長い歴史を刻んだカップ戦だ。
最近では、各クラブともこの大会にはリーグ戦での出場機会が少ない選手を出場させることが多いため、“若手の登竜門”的な大会となっている。
たとえば、昨年、この大会を通じて頭角を現したのがFC東京の渡辺剛だった。ルヴァンカップ第1節で先発デビューを果たすと、いきなり初ゴールも決めた渡辺は、その後チームでレギュラーをつかみ取り、さらに12月のEAFF E−1選手権では日本代表にも選出されることになった。まさに、この大会がきっかけだったわけだ。
また、来シーズンに向けてその去就が注目を集めている久保建英も、昨年の開幕直後はルヴァンカップを主戦場として活躍していた。
今シーズンの大会も、やはり若手にとっては大きなチャンスになるはずだ。
とくに、今シーズンはJ1リーグも超過密日程となっており、ルヴァンカップやACLで勝ち進んだクラブはさらに試合が過密になってくる。暑さの中での連戦となるのだ。
つまり、「総力戦」である。若手にも例年以上に出場機会が与えられることだろう。
そうした状況を考えると層の厚いクラブが絶対有利だし、プレースタイルとしては運動量が求められるチームよりも、ボールを動かすスタイルのチームが有利なのは間違いない。実際、J1リーグでは、この2つの条件に合致する川崎フロンターレが2位以下との勝点差をつけて独走態勢を築き上げつつある。
ルヴァンカップでも、同じような傾向になるだろう。
川崎フロンターレは昨年のリーグで4位と低迷したおかげで、今シーズンはACLには出場していない。その点、ルヴァンカップだけなら、勝ち進んだとしても日程はそれほどきつくはならないことになる。準々決勝以降も1試合制なので、優勝するためにはあと4試合を戦い抜けばいいのだ。
川崎フロンターレほどの選手層があれば、リーグ戦と同時にルヴァンカップを戦い抜くことは十分に可能だ。
しかし、今シーズンのレギュレーションを考えると、下位チームにとってもタイトルを狙うチャンスなのかもしれない。
つまり、リーグ戦で上位を争っているチームは、水曜日開催となるルヴァンカップではメンバーを落としてくるはずだ。一方、リーグ戦では優勝争いから脱落してしまったチームにとってはリーグ戦よりルヴァンカップを優先して戦うことも選択肢となる。
なにしろ、今シーズンはJ1リーグ戦には降格がないのだ。普通だったら、最優先はJ1残留なのだろうが、今シーズンは思い切ってルヴァンカップに全力を注いでタイトルを狙うことだって可能なのだ。
しかも、ノックアウトステージに入れば、通常のホーム&アウェー方式ではなく、1試合で決着するので、番狂わせの可能性はさらに高くなる。
従って、今シーズンのルヴァンカップの見どころは、まず「下克上」だ。そして、そんな戦いの中で急成長を遂げる若手の姿も見てみたい。昨年の渡辺剛のように一気に日本代表あるいはU−23日本代表に抜擢される選手が現れるかもしれない。
秋にはワールドカップ予選があるが、ウイルス感染症の状況によってはヨーロッパのクラブに所属する選手が帰国して代表に参加できないといったこともありうる。そうなれば、日本代表が国内組中心の編成になることも考えられるので、ルヴァンカップで活躍してリーグ戦でも主力となれば、一気に代表への道が開かれるかもしれない。
まずは来週8月12日のグループステージ最終日に注目しよう。先述のように柏レイソルはすでに首位通過を決めた。2位以上になってプライムステージ進出の可能性を残すのは、第2節終了時点で勝点3以上のチームだけだ。
Aグループでは勝点6同士の名古屋グランパス対川崎フロンターレが最大の注目カード。仲良く引き分ければ両チームともプライムステージ進出が決まるのだが、まさか“談合”はしないだろう……。
Dグループの湘南は、すでに敗退決まったガンバ大阪をホームに迎えることになるが、ここで点差をつけて勝利すれば2位通過の可能性も出てくる。柏相手に0対1で敗れた試合でも、互角に渡り合っていただけに“可能性”は十分にあるはずだ。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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