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サッカー フットサル コラム 2020年8月5日

育成の名門東京ヴェルディ。新たな有望株がMFの藤田譲瑠チマ

後藤健生コラム by 後藤 健生
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今シーズンは、横浜FCがJ1に昇格したので神奈川県内にJ1クラブが4つも存在することになった。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためには、移動をなるべく少なくする必要があるので好都合なのかもしれないが……。

その結果、東京近辺のJ2クラブが減ってしまった。また、コロナウイルスの問題で遠距離移動が憚られるような雰囲気もあるので、J2の開催日には自宅から最も近い味の素スタジアムに通って東京ヴェルディの試合を観戦することが多い。

その東京V、第8節を終了した時点で2勝4分2敗と引き分けが多いのであまり勝点を伸ばすことができず、順位表の上では13位とやや低迷している。

しかし、実際に東京Vの試合を見ると、永井秀樹監督の東京Vはしっかりとボールを保持して、ピッチを広く使って攻撃的なサッカーを展開している。完全な負けゲームは大宮アルディージャとのアウェー戦だけだった。

第8節では、前節まで5位と好調のアルビレックス新潟と対戦したが、まさに互角の見ごたえある攻め合いを展開した。シュート数では10対5で新潟の方が上回ったが、ゴール前の決定機では東京Vの方が多かった。

とくに、前半の立ち上がりには右の若狭大志からのアーリークロスに左から走り込んだ井上潮音が合わせた場面(11分、手前にいた端戸仁がオフサイドで旗が上がったが、後方から走り込んだ井上はオンサイドだったという微妙な判定でノーゴール)や右サイドを深くえぐった端戸のマイナスのクロスを若狭がフリーで狙った16分の場面など何度か惜しい場面を作っていた。

そして、79分には右CKにDFリーダーの高橋祥平が頭で合わせて先制した東京Vだったが、追加タイムにロングスローからのこぼれ球を決められて、またも引き分けに持ち込まれてしまった。リードしてからも、うまくパスを回して時間を使っていただけに、惜しい引き分けだった。

攻撃の形を作るところまで行くのだが、最後のフィニッシュの段階でズレができていしまうのが、得点力不足の原因だ。3トップのセンターにいる端戸は、シャドーやサイドアタッカーとしては能力が高いが、トップに張ってプレーするタイプではない。実際、最近の試合でもMFに落ちてきてパス回しに加わる時間が多い。このポジションに強力なストライカーを置ければ、かなり得点力は上がるはずなのだが……。

東京Vは、前身の「読売サッカークラブ」の時代から選手育成の伝統があるクラブだ。「読売サッカークラブ」として発足したのが今から50年以上も前の1969年。将来のプロ・クラブ化を目指して、初期の段階から育成部門を設立。高校や大学のスター選手が実業団チームに進むのが一般的というより唯一の道だった時代に、中学生や高校生がトップ・プレーヤーたちと同じグラウンドで練習して上を目指すというのは、当時の日本ではまさに画期的なことだった。

実際、ブラジル出身の与那城ジョージやラモス瑠偉のプレーを体感しながら育った戸塚哲也や都並敏史は日本を代表する選手に育っていった。その後、トップチームは日本サッカーリーグの末期からリーグ発足直後まで、日産自動車(後の横浜マリノス)とともに日本最強を争うクラブに発展していった。だが、経営問題などが原因で低迷し、今ではすっかりJ2に定着してしまったものの、育成の伝統は受け継がれている。

たとえば、森保一監督が就任して以来日本代表でも、中島翔也(現ポルト)や安西幸輝(現ポルティモネンセ)、畠中槙之輔(現横浜F・マリノス)、三竿健斗(鹿島アントラーズ)といった東京Vユース出身選手が活躍している。

現在のメンバーでも、井上潮音や藤本寛也といった選手が年代別代表に名を連ねて飛躍を狙っている。井上は22歳、藤本は21歳という、ともに東京オリンピック出場を狙う世代の選手だ。そして、現在のメンバーには、さらに森田晃樹(19歳)や山本理仁(18歳)といったティーンエイジャーが名を連ねている。

今シーズン、トップチームに昇格したのが藤田譲瑠チマだ。「ふじた じょえる ちま」と読む(J2デビューは2019年9月)。ナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれた藤田は、昨年のU17ワールドカップでは中心選手の一人として全試合に出場しており、今後は来年インドネシアで開かれるU20ワールドカップ出場を目指す。

さて、正式にトップチームに昇格した藤田は、開幕戦からチームの主力として定着。第8節まで全試合に出場と、完全にレギュラーに定着した。ポジションは4-3-3の中盤。逆三角形に並んだMFでアンカーのポジションを務めている。

特徴は身体能力の高さを生かした競り合いの強さだ。

身長は172センチで、体重が70キロと小柄だが瞬発力があり、接触でバランスを崩したり倒れたりしても、すぐに起き直って再び競りに行けるのが強みだ。一度失ったボールをすぐに取り戻す場面を何度も見る。J1昇格を目指すJ2は、激しいゲームが多い難しいリーグだ。しかも、今シーズンは前代未聞の過密スケジュールの中で戦っている。

そんな中で、トップチームに昇格したばかりの18歳でありながら、接触プレーがあってもけっして負けることのない身体能力は非常に魅力的だ。

もちろん経験不足のせいでミスもあるが、確実につなぐところはシンプルにつなぐし、スペースを見てロングボールを入れたりする判断力もある。

さらに、最近は次第に自信もついてきたようで、ボールを奪ってチャンスがあると、見れば自ら持ち上がって攻撃に絡む場面も増えてきた。

10月に開催されるAFC U19選手権を目指すU19日本代表の影山雅永監督が視察に訪れた第8節の新潟戦では、連戦の疲労のためかその積極性を十分に発揮できなかった藤田だが、相手のパスコースを予測する能力
も含めてボール奪取能力の高さはしっかりと見せた。

これまでの日本にはないタイプの守備的MFとして成長してほしい選手である。伸び盛りの18歳だけに、今後の東京Vでの成長ぶりを見続けていきたい。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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