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「13シーズンぶり」となったJ1リーグでの横浜ダービー。結果は、4対0で横浜F・マリノスの勝利に終わり、横浜FMが「昨季優勝の貫禄を示した試合」となったわけだが、実際には見どころ満載の面白い試合だった。
この試合、90分という試合時間をいくつかの段階(フェーズ)に分けて考えてみたい。最終的には4対0というスコアになってしまったものの、途中までは拮抗した試合だったからである。
キックオフから25分頃まで、試合は明らかに横浜FCのものだった。これが「第1フェーズ」である。
今シーズンの横浜FCは、中盤でのしっかりした守備を生かして前から激しくプレッシャーをかけることをコンセプトとしている。
このダービーマッチでも、横浜FCのMF佐藤謙介、松浦拓弥、手塚康平の3人が、横浜FMの喜田拓也、仙頭啓矢、マルコス・ジュニオールに対して激しいプレッシャーをかけるところからゲームが始まった。ここで、個人々々が頑張って横浜FMのパスを寸断したことによって、こぼれ球を拾う回数が増えてきたのだ。
J SPORTS 放送情報
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天皇杯 JFA 全日本選手権クラシックス 2007年1月1日 第86回大会 決勝 #2 浦和レッズ vs. ガンバ大阪
放送日:2020年8月12日(水) 放送時間:午後 10時 30分~深夜 1時 00分
この守備の局面で、サイドハーフの松尾佑介(左)、マギーニョ(右)は守備に参加しないで外に開いていることができたから、奪ったボールをすぐに外に開いて2人のドリブルで素早い攻撃をしかけることができた。
今シーズンに入ってから、「昨季王者」と対戦するチームは、ポジションを上げて攻撃に参加する横浜FMのサイドバック(この日は右が小池龍太、左がティーラトン)の裏を狙ってくるのが常套手段となった。ただ、“持ち駒”の特徴によってロングボールを使うか、スピードを使うかといった違いがあり、横浜FCの場合は松尾とマギーニョのドリブルが武器だったのだ。
両サイドを走らせたのは、MF佐藤からのパスだった。大学卒業後、横浜FC一筋でプレーしてきた佐藤のパスワークは、J1でもまったく問題なく通用することが証明された。また、右のストッパー、星キョーワァンからマギーニョへのパスも有効だった。
こうして、サイドで優位に立った横浜FCは再三チャンスを作り、ツートップの一美和成と斉藤光毅が何度か決定機をつかんだのだが、横浜FMの強力なDFの前に先制点を奪うことはできなかった。
こうして、25分頃までフルパワーでプレッシャーをかけ続けた横浜FCの選手たちの足が動かなくなってくると、横浜FMがボールを保持して攻撃を仕掛ける時間が増えてくる。これが、ゲームの「第2フェーズ」ということになる。
しかし、横浜FCのスリーバックもしっかり守っており、横浜FMは決定機をつかめないでいたが、31分に左サイドでつないだ後、マルコス・ジュニオールが入れたボールをDFの田代真一がクリアしようとして自らのゴールに蹴り込んでしまい、オウンゴールという形で横浜FMが先制した。
試合はそのまま横浜FMが攻撃を続けながらハーフタイムを迎えたが、「第2フェーズ」」では横浜FCもまだカウンターから脅威を与えることができていた。
後半もキックオフから1分以内に横浜FCが2度の同点機をつかんで始まった。
相手のパスをカットした佐藤からのパスを受けた一美がフリーシュートを打った場面(クロスバーを越す)と、斉藤がドリブルでペナルティエリア内まで侵入したもののDFにクリアされCKとなった場面である。
こうして、前半25分から後半の10分までの約30分間の「第2フェーズ」は、横浜FMがペースを握るものの、横浜FCにもチャンスがある拮抗した時間帯だった。
ゲームの展開を大きく変えたのが横浜FMの追加点だった。分厚い攻撃を仕掛けた後、仲川輝人のクロスにマルコス・ジュニオールが合わせてあっけなく2点目を奪うと、65分にも水沼宏太のクロスに今度は遠藤渓太が頭で合わせて3点目を奪って横浜FCを突き放した。
56分以降は「第3フェーズ」とでも呼ぼうか。横浜FCの足が完全に止まって横浜FMの一方的な攻撃となってしまい、72分に遠藤の突破からエジガル・ジュニオがダメ押しとなる4点目を決め、「好試合もここまでか」と思われたが、「第4フェーズ」にはさらに別の楽しみが用意されていた。
75分に、それまで大いに健闘した佐藤に代わって中村俊輔が登場したのである。
勝負が決した後の余裕ある状況だったこともあり、中村の何本かのロングレンジの美しいパスに対しては横浜FMファンからも拍手が沸き起こった。拍手だけの応援が強いられる現在のJリーグならではの温かい雰囲気が一気に広がった。
横浜FCとしては、今後、佐藤謙介と中村俊輔の2人の優れたパサーをうまく使い分けることができたら面白そうだ。
こうして、ゲームのそれぞれの「フェーズ」で試合展開がまったく変わるという興味深い試合となった横浜ダービー。これからも、両者の対決は楽しみにしたい。
ただ、今回の対戦で残念だったのは、せっかく久しぶりのダービーだったにも関わらず、アウェー横浜FCサポーターの入場が許されなかったことだ。
8月1日からは収容力の50%を上限として観客を入れることができるはずで、そうなればアウェー・サポーターも入場できることになる予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の拡大によって、観客数の制限緩和は先送りされ、アウェー・サポーターの入場もさらに最低でも2週間は禁止が続く。
しかし、そもそもアウェー・サポーターの入場禁止はサポーターの都道府県境を越えての移動による感染拡大を防止するためのもの。そして、政府は人々の移動を奨励する「Go Toキャンペーン」なるイベントを始めている。それなら、同じ都道府県内でのダービーマッチだけでもアウェー・サポーターの入場を認めてもいいような気もする。もちろん、県境を越える「多摩川ダービー」は別としてだが……。
12月に予定されている横浜FCホームのダービーまでには、アウェー・サポーターを含めて満員の観衆を入れて開催できるようになることを祈りたい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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