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サッカー フットサル コラム 2020年7月10日

良い内容のサッカーをした仙台と横浜FC。優れた指導者が作り上げた機能的な組織

後藤健生コラム by 後藤 健生
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J1リーグは7月4日に再開され、第2〜3節が終了した。選手や関係者の2回目のPCR検査でも陽性者は出ず、ここまで無事に試合が消化できたことは何よりの収穫だ。

もちろんご承知のように、ここまではすべて無観客の「リモートマッチ」だった。スタンドに人がいないのはもちろん寂しいが、試合が始まってみればプレーに集中しているから大きな違和感はなかった。6月に主要国のトップを切ってブンデスリーガが再開された時には何か試合に集中できなかったのだが、テレビで見るのと生で見るのとの違いなのか、あるいはブンデスリーガなどヨーロッパ各国のリーグを通じて“無観客”に慣れてしまったからなのかは分からないが、試合には集中できた。

選手同士の声が聞こえるのも面白い。Jリーグでは日本語だから、選手同士の声もよく理解できるし……。ただ、ベンチから審判の判定などに対して大声で文句を言う声が聞こえてきたのには興醒めした。たしかに審判も試合勘を失っていて「あれっ?」という判定もいつも以上に多いが(そして、今シーズンはVARも入らないが)、今は大声で異議を唱えるのは自粛してもらいたいものだ。

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さて、無観客開催の間は記者席にも入場制限が掛けられていた。「記者は25人まで」だったのだ。そして、通信社、新聞社、専門誌……といったように優先順位が付けられている。「25人」というのは微妙な数字で、「各社1人だけ」なのではあるのだが、上位チーム同士の好カードではなかなかフリーランスには順番が回ってこないのだ。

そこで、第2節、第3節はビッグクラブ同士の試合は避けて、中位、下位チームの試合を見に行った。第2節は湘南ベルマーレ対ベガルタ仙台、第3節(水曜日開催)は柏レイソル対横浜FCのカードである。

ベガルタ仙台や柏レイソルを「中位」とか「下位」というのは失礼かもしれないが、仙台は渡邉晋監督が作ったアグレッシブなチームだったものの、昨シーズンは内容が結果に結びつかず、11位に終わっている。柏レイソルは、一部には優勝候補に挙げる人もいるが、それでも“昇格組”の一角である。

大きな収穫は「中位」、「下位」チームでも良い内容のサッカーをしていたのを知ったことだ。

良かったのはベガルタ仙台と横浜FCだった。どちらも、非常に組織的なサッカーで粘り強い戦いをしていた。まあ、選手層がそれほど厚くないので、過密日程で行われる今シーズンは上位に食い込むのが難しいかもしれないが、どちらも上位チームはかなり手こずることだろう。上位を食って優勝争いに影響を与えるかもしれない。

両チームに共通しているのは、ピッチの全面で選手間の距離が一定に保たれ、組織が崩れないことだ。そのため、相手はなかなかパスコースをみつけることができなくなってしまうのだ。

湘南対仙台の試合は、開始わずか3分で仙台のジャーメイン良が右から上げたクロスのミスが追い風に乗ってゴールに飛び込んでしまうという幸運な得点でリード。ビハインドとなった湘南がかなり強引に攻め込む場面が増えたが、仙台の組織は90分間まったく崩れず、余裕をもって守り切った。

試合前のウォーミングアップの時に、仙台の4人のDFがラインの上げ下げを確認していたのを見た。コーチがボールを動かす度に4人がラインを保ったまま細かく上げ下げするのだ。かつて、フィリップ・トルシエが日本代表監督だった時に、スリーバックを並ばせてラインの上げ下げの練習をいつもやっていたが、仙台のアップを見ていて僕はそれを思い出した。そう、「選手間の距離を保って組織を崩さないこと」が意識付けされているのだろう。

横浜FCも見事な組織を作って戦った。同じ昇格組といっても、相手の柏レイソルは優勝経験もあるビッグクラブで、今シーズンは補強も活発で上位進出が期待されている。

実際、ボールを持つ時間も柏の方が長く、シュート数も柏が12本で浜FCはわずか4本だった。だが、柏はボールを持っていても横浜FC陣内にスペースが見つからず、くさびを入れることができなくなって後方で回す時間が長くなってしまったのだ。

横浜FCは組織がしっかりしているので、前線や中盤の選手が後ろの心配せずに相手ボールにプレッシャーをかけに行くことができる。21分の先制ゴールは、まさにこの形。柏陣内深いところで瀬古樹がチャージしてボールを奪い、松浦拓弥が縦に出したボールを、走り込んだ斉藤光毅がワンタッチで決めたものだった。

その後は、柏のネルシーニョ監督が選手交代を使い、システムを変更して反撃を試みるのだが、横浜FCは大きく戦い方を変えることなく、柏の攻撃をしっかりと受け止め続けて勝点3をゲットした。今シーズンは選手交代が5人まで認められるので、交代を使ったシステム変更が有効になる試合も多い。だが、「しっかりした組織を作っておけば相手のやり方が変わっても慌てずに済む」ということを横浜FCは証明してみせた。

仙台は、今年から木山隆之監督が指揮を執っている。木山監督はジェフ千葉でも、モンテディオ山形でも、組織的でバランスの取れた良いチームを作り、どちらもチームを昇格プレーオフに導いたことがある。山形では天皇杯準決勝進出も果たしている。その木山監督が仙台で、組織的なチームを作り上げても驚くには当たらないだろう。

柏レイソルを3対1で破った横浜FCは下平隆宏監督が昨年から指導しているが、下平監督にとって柏は“古巣”ということとなる。下部組織の監督として多くの若手を育て、2017年にはトップの監督としてJ1リーグ4位という成績を残している。

木山監督も、下平監督も、これまでもしっかりした組織作りをしてリーグ戦でも実績を残してきた日本人指導者だ。ジェフ千葉も、柏レイソルも、もう少し忍耐強くこの2人にチームを任せていれば上昇曲線を描くことができたような気もする。

こうした能力の高い日本人中堅指導者を見出すことこそが、中堅クラブにとっては最高の強化方法なのではないか。再開直後のJ1リーグを見ての、僕の感想である。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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