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再開したJ2リーグの第2節(再開初日)。愛媛FC対徳島ヴォルティスの試合で大逆転劇が起きて話題となった。前半、アウェーの徳島が3対0と大きくリードしたのだが、ハーフタイムに3人を交代させた愛媛が盛り返し、後半に4ゴールを奪って4対3と逆転勝利したのだ。
かなりの“珍事”だと思っていたら、翌週のJ3リーグで同じことが起こった。
J3リーグ第2節、Y.S.C.C.横浜とカターレ富山の試合だった。前半、YS横浜が3点をリードしたのに対して、後半、選手交代とシステム変更でリズムを取り戻した富山が4点を奪ったのだ。
愛媛対徳島戦では両チーム合計7ゴールのうち6ゴールがCKから決まったものだった。それに対して、YS横浜対富山戦では、ほとんどのゴールが流れの中からの得点だったのだから、愛媛の試合以上にさらに驚きは大きかった。
前半は、3−2−4−1というフォーメーションで戦うYS横浜の2列目からの飛び出しが非常に効果的で富山を圧倒した。ボランチの宮尾孝一と土舘賢人からのロングフィードが追い風に乗って2列目から飛び出していく選手にぴたりと収まった。
J SPORTS 放送情報
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【女子日本代表 世界初三世代ワールドカップ制覇!】 FIFA U-20 女子 ワールドカップ フランス 2018 準決勝 イングランド vs. 日本
放送日:2020年7月8日(水) 放送時間:午後 10時 30分~深夜 0時 45分
そして16分には宮尾からのロングボールを受けた右サイドハーフの西山峻太が入れたクロスをインサイドハーフの吉田明生が落とし、最後は左のサイドハーフ大泉和也が詰めてYS横浜が先制する。
3分後には、もう一人のインサイドハーフの佐藤祐太が入れたクロスにワントップの宮本拓也が合わせて2点目。そして、29分には宮尾が25メートルのFKを直接決めてスコアを3対0としてしまった。
一瞬、愛媛対徳島の試合のことが頭をよぎったが、そんなことは滅多にないこと。むしろ、「YS横浜のさらなる大量点もありうるかな……」とさえ思えた。
しかし、YS横浜は昨シーズンは13位、その前のシーズンは15位と、これまでJ3でも下位に低迷していたチームであり、勝ち慣れていないチームなのだ。それだけに、いきなり3点をリードしたことで、かえって全体に迷いが生じてしまう。さらに攻撃をするのか、あるいは少なくとも前半はこのスコアを維持するのか……。
ちょうど、強豪ベルギー相手に2点を奪ってしまった後の日本代表のような気持ちだったのだろう。攻めるべきか、守るべきか……
実際にはスコアは3対0のまま前半が終わったのだが、YS横浜は最後の時間帯の悪いイメージをそのまま引きずって後半に入ってしまった。
一方、富山の方はハーフタイムで2人の選手を交代させ、さらにシステムも前半の4−2−3−1から3−4−3に変更してきた。そして、これが効果的だった。
守備ではスリーバックに切り換えたことで、両ウィングバックがYS横浜のサイドハーフをしっかり押さえ、さらに2列目から飛び出してくるインサイドハーフに対してもスリーバックががっちりと捕まえる。そして、後半に投入された戸高弘貴(シャドー)と池高暢希(ボランチ)が素晴らしい働きをした。
富山は、47分にはCKに前半のうちに交代出場していた大野燿平が頭で合わせ、51分には右ウィングバックの田中佑昌からのクロスに戸高が合わせて、YS横浜がシステム変更に対して対応しきれていないうちに2点を奪って追撃の狼煙を上げた。
その後は、富山の猛攻にYS横浜がなんとか耐える時間が続いたが、75分には富山の足立亮監督はさらに交代カードを切って、4−2−3−1の形にしてさらに攻撃を仕掛けていった。
この間、YS横浜は相手の変化に対して、常に後手を踏む形で立て直すことができず、最後は89分、90+3分に失点して、3対0からの逆転負けを喫したのだった。
やはり、この試合も「5人交代制」がゲームを動かした。
富山は前半のうちに交代カードを1枚切っていたのだ。従来のように交代枠が3人までだったら、足立監督もハーフタイムで2人交代させるのは躊躇ったことだろう。だが、今シーズンは交代が5人まで認められるのだ。ハーフタイムに3人目までの交代を使うこともできる。しかも、その後さらに2人を同時に変えてさらに攻撃力アップを図ることさえできたのだ。
一方、YS横浜の側から見れば常に相手の交代に対して後手、後手に回ってしまったのが逆転を許した原因であり、監督の采配能力の重要性も垣間見えた。
それにしても、5人の交代カードを使って次々とシステムや戦略が変化していく試合を見ているのは、大変に疲れるものだ。
普通の試合なら、前半の立ち上がりに両チームのシステムをチェックし、またこの試合での狙いを確認する作業を終えたら、後はゲームの流れや目覚ましい活躍をした選手あるいは精彩を欠いたプレーをした選手を確認したりしていればいい。
選手が交代しても、普通は大きなシステム変更などはないし、あったとしても各チーム1回くらいのものだ。
だが、交代枠が5人になり、各監督が早めに交代カードを使い、また2人、3人同時に交代させてシステムを変更するようなことが多くなった。そして、相手チームもそれに対応して、様々な変更を加えてくるのだ。
そうなると、システム変更や戦略の変更をいちいちチェックしてメモしなければならなくなる。ようやくチェックが完了したと思ったら、また2人同時交代などがあって、また両チームの並びなどを確認する作業が必要となる……。
というわけで、交代枠が5人に増えたおかげで記者席での作業がやたらと増えてしまったようなのだ。
今シーズンは、この「5人交代制」による両監督のカードの切り方が大きな楽しみの一つになりそうである。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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