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サッカー フットサル コラム 2020年6月22日

東京大会が「中止」になった場合、マイナー競技には手厚い配慮が必要なはず

後藤健生コラム by 後藤 健生
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東京都知事選挙が告示され、史上最多となる22人が立候補。これから7月5日の投票日までの選挙戦が始まった。政権与党である自由民主党や野党第一党の立憲民主党、野党第二党の国民民主党など各政党は“小池百合子現知事に勝てる候補者”を見つけることができない状態の中でもこれだけ多くの候補者が出そろったのは、やはり都知事というものの存在感の大きさによるものなのだろう。

新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の流行に対して正面に立って対処に当たったことで、各都道府県知事の存在感はこれまでになく高まっている。とくに、小池知事は「ロックダウン」だの「アラート」だのといった横文字のキャッチフレーズを多用しながら、発信力の高さをアピールしてみせた。

そんな中で迎えただけに東京都知事選挙の注目度は高い。1400万人という人口と巨額の財政規模を持つ東京都知事の権力の強さは圧倒的だ。財政規模はスウェーデン並みとよく形容される。

争点の中心はもちろん新型コロナウイルスだが、もう一つの重要な争点は「来年7月まで延期された東京オリンピック・パラリンピックをどうするのか」という問題だ。

オリンピック開催問題は知事の決意や覚悟にかかっている。はっきり言えば、知事ないし内閣総理大臣が「中止する」と決断すればすぐに中止になるわけだ。ただ、逆に「どうしても開催しよう」と決断しても、新型コロナウイルス感染症の状況によっては不可能となるのだが……。

有力な都知事候補の主張を見ると、現職の小池都知事は「簡素化し、費用を縮減しての開催」だという。

3月に安倍晋三首相がトーマス・バッハIOC会長と電話会談をして延期を決めた当時は、政府も東京都も「通常開催」を目指していたが、その後の感染症の世界的な拡大や経済状況などによって通常開催が難しいことが明らかになってきた。「治療薬やワクチンが早期に開発される」という奇跡が起こらなければ、世界中の国々から選手や役員、さらに観客を集めてのオリンピック通常開催は難しいだろう。開催を目指すなら簡素化した形(最悪の場合は無観客開催)を目指すしかあるまい。

一方で、立憲民主党などが支持する野党統一候補的存在の宇都宮健児候補は「感染症対策の専門家が困難と判断した場合、IOCに中止を働きかける」と主張。さらにれいわ新選組の山本太郎候補は、はっきりと「中止すべきだ」としている。

そして、第三の主張も出てきた。日本維新の会の小野泰輔候補(元熊本県副知事)は「2024年に延期を目指す」と主張。NHKから国民を守る会の立花孝志候補も「2年後あるいは4年後に開催する」という主張を掲げている。

各候補者が掲げる選択肢は3つにわけることができる。つまり、簡素化して開催か、中止か、2024年開催かである。

簡素化してでも開催できるのであれば、それがベストであろう。

これまで、巨費を投じて準備を進めてきたのだからそれを無駄にはしたくない。とくに、実際にこれまで準備に携わってきた現職の小池知事がそう考えても不思議ではない。小池氏はそうした晴れ舞台を好む気持ちが人一倍強い人物だし、何らかの形で開催に漕ぎつけられれば多少でも“経済効果”なるものを得ることができる。

ただ、世界規模で見れば1日当たりの感染者数の増加は続いているのだ。延期(2021年開催)のための巨額の追加費用をかけた結果として、最終的に中止に追い込まれるというのは最悪の選択となる……。そのように考えれば、早期に「中止」を決定する方が合理的な選択のように思われる。

そこで、浮上してきたのは2024年開催という案である。つまり、4年延期して東京が2024年にオリンピックを開催し、2024年開催の予定だったパリ大会、2028年開催予定だったロサンゼルス大会をそれぞれ4年ずつ延期するという案だ。

これは論理的な提案だし、東京で準備してきた競技会場も無駄にならない。

ただ、これを実現するには現在2024年大会の準備を進めているパリ市の同意が条件となる。もちろん、フランスも新型コロナウイルスの感染では大きな被害を受けているし、EU(欧州連合)は英国の離脱問題という難題を抱えているので、「4年延期」に同意する可能性もあるが、まずパリ側の意向を確認しなければならないだろう。

同様に、2028年開催予定のロサンゼルス市が延期に同意すれば、2028年に東京大会を開くこともできるだろうし、さらに2024年のパリ大会、2028年のロサンゼルス大会を予定通りに開催してから、2032年に東京大会を開くこともできる。パリ市、ロサンゼルス市、IOCと協議を行う価値はありそうだ。

ただ、日本のスポーツ界としては、東京大会の「中止」もしくは「長期延期(最大12年の延期)」は大きな痛手となる。陸上競技や水泳などの人気スポーツはオリンピックを延期しても世界選手権などで活躍すれば人気も高まるし、財政的にもしのげるはずだ。あるいは、野球やサッカーといったプロのある競技にとっては国内リーグこそが最重要だし、代表レベルでもサッカーのワールドカップや野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)といった大会の方がオリンピックよりも重要だろう。

だが、いわゆるマイナースポーツ、4年に一度、オリンピックで活躍した時だけ注目を集めるような競技にとっては、地元東京での開催という絶好のアピールの場が奪われてしまうことは致命的だ。実際に、一部の競技では「1年延期」が決まってからすでにスポンサー離れが起こっているという。

政府にしても、東京都にしても「中止」あるいは「長期延期」となった場合にはスポーツ界とくにマイナー競技に対する配慮だけは忘れないでほしい。いわば、マイナー競技にとっての「持続化給付金」的なものが必要なのだ。

そのことは、オリンピックを強行開催するよりずっと大事なことだ。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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