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サッカー フットサル コラム 2020年6月8日

避けることはできないのか……。Jリーグの過密日程強行を考える

後藤健生コラム by 後藤 健生
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6月に入ったばかりというのに、北日本を含めて全国的に気温が30度を超える真夏日となり、西日本はすでに梅雨入りし、東日本も間もなく梅雨を迎える。これから約3か月は憂鬱な酷暑となる……。長期予報では、今年も「暑い夏」となるという。

まあ、新型コロナウイルス(COVID−19)は暑さや紫外線によって感染力が低下するという説もあるので、「暑い夏」は必ずしも悪いことばかりでもないかもしれないのだが……。

そんな中で新型コロナウイルスの影響で延期といたプロ野球とJリーグが、いよいよ開幕(再開)を迎える。これから本格的に経済社会活動を再開させようという日本を象徴する出来事といっていいだろう。まずは、素直に喜びたい。

Jリーグに続いて、プロ野球も選手など関係者全員のPCR検査を定期的に行うことを決定した。プロ野球は1か月に1回、Jリーグは2週間に1回という違いはあるが、積極的に検査を行うことによって感染者を見つけ出して隔離することによって、陰性者は正常な活動を維持することが可能になる。

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これまで、日本では検査体制の不備もあって、検査は有症者および濃厚接触者のみに限定して行われていた。あくまでも「治療の一環としての検査」だったのだ。しかし、検査体制が拡充され、しかも唾液による検査が可能になったことで、これからは感染を防止するために積極的に「全員検査」を行うことも可能になっていく。東京都はいわゆる「夜の街」について「全員検査」を行うことを決めた。

そんな動きの先鞭をつけたのが、いち早く「全員検査」実施を決めたJリーグだったのだ。

政府の自粛方針決定に先駆けて試合の延期を決めたJリーグ。その後も、プロ野球と情報を共有しながらコロナウイルス対策で常に先頭に立って感染防止対策を練り続けてきたことは、大いに評価していい。

だが、これから感染防止に努めながら、実際に試合を開催していかなければならないのだ。「これからが正念場」といっていいだろう。

さて、このコラムでも何度か懸念していたように、Jリーグの再開時期は夏本番を迎えるのと同じタイミングになってしまった。

新型コロナウイルスの影響で、選手は長くグラウンドでのトレーニングができないでいた。緊急事態宣言解除を受けてチームとしての全体練習が始まってから、地域によってバラつきはあるものの、約1か月だ。コンディションが万全のはずはない。

春から次第に気温が上昇する中で試合を繰り返すことによって、選手たちの体は暑さに順応してくる。基礎代謝量が減り、発汗が促進されることによって、暑さの中でも試合ができる体が出来上がってくる。だが、今年は何か月も実戦から遠ざかっていた選手たちが、いきなり猛暑の中で試合をしなければならないのだ。

夏場の試合では、いかに水分補給をするかが大事だが、今年は感染症対策のために、ライン際に置いたボトルを使って飲み回しをするわけにはいかないだろう。

交代枠が3人から5人に拡大されたとしても、あるいは試合中の飲水タイムを増やしたとしても、きわめて過酷な条件と言わざるを得ないのだ。

こうした状況を考えれば、選手たちの走行距離は大幅に下がるだろう。選手層の厚いチーム、あるいは人は走らずにボールを動かすチームが有利になるのは間違いない。いずれにしても、試合のレベルが低下することは間違いない。

いや、プレーのレベルの低下などよりも、選手たちの健康状態の方が心配になる。「新型コロナウイルスの感染は防げたけれど、熱中症で何人もの選手が倒れた」などという冗談のような事態すら起きかねないのだ。そして、疲労がたまっていくことによって、免疫力は低下するから、新型コロナウイルス感染=発症のリスクも高まりかねない。

そこで、僕はこれまでいくつかの提案をしてきた。

一つは秋春制の暫定的な導入だ。過密日程を避けるために、シーズン閉幕を遅らせることによって試合日程に余裕をもたせるためだ。

もし、秋春制に変更ができないなら、試合数を減らすために大会形式を変えることも提案した。たとえば、東日本と西日本に分けて9チームずつでリーグ戦を行って、プレーオフで最終順位を決めることもできるし、今シーズンはホーム&アウェーの2回戦総当たりをやめて1回戦総当たりにすれば、試合数は半分で済む。

プロ野球はもともと各チーム143試合を行う予定だったが、今シーズンは各チーム120試合に試合数を減らす決定をしている(ポストシーズンのクライマックスシリーズも中止または方式変更の予定)。アメリカの大リーグ(MLB)は、選手会との交渉が難航していることもあって、76試合制という話まで出ている。

だが、6月末に再開するJリーグは12月20日に終了するという。普段のシーズンより2週間伸びただけだ。7月4日に開幕するJ1リーグは12月までに25週間で33試合を消化しなければならない。J2リーグは26週間で41試合だ。さらに、YBCルヴァンカップもある。大会形式を変更したといっても、グループリーグとトーナメントで優勝するためには、5試合戦う必要があり、いずれはAFCチャンピオンズリーグも再開されることだろう。

つまり、1週間おきに連戦があるようなシーズンになるのだ。暑さの厳しい時期に連戦を避けるとすれば、その後は毎週ウィークデーに試合をしなければならなくなる。

Jリーグが、どうしてこんなに無理をしてまでも、通常通り34節(J1の場合)開催にこだわるのか……。

これまで新型コロナウイルス感染対策でJリーグは素晴らしい対応をしてくれていた。僕はJリーグの姿勢を高く評価していた。だが、過密日程の強行という決定には疑問を感じざるをえない。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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