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サッカー フットサル コラム 2020年6月1日

指導者ライセンス取得を目指す長谷部誠。日本人指導者が欧州活躍できる道を切り拓いてほしい

後藤健生コラム by 後藤 健生
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フランクフルトの長谷部誠が契約を1年延長して現役生活を続けると同時に、ブランドアンバサダーとしても契約。指導者ライセンス取得にも挑むことになったという。

36歳になった現在でもフランクフルトには欠かせない選手として活躍している長谷部誠。“引退後”のことも視野に入れて活動するあたりはさすがだし、指導者資格の取得にクラブ側も全面支援するというあたり、クラブ側からの信頼も感じられる。

選手を見ていると、「この選手はいつか名指導者になってくれそうだ」と思わせるタイプの選手がいる。

たとえば、ワールドカップという舞台で二度、日本代表を率いて戦った岡田武史。日本サッカーリーグ(JSL)の古河電工や日本代表で守備的MFまたはリベロとしてプレーした岡田は、圧倒的なサイズやフィジカルの強さの持ち主ではなかったが、そのインテリジェンスと勝負に対する執念が彼の武器だった。常に一手も二手も先を読む頭脳的なプレー。それを見ていた当時のファンの間では「岡田はいつか名指導者になる」と信じられていた。

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世界で言えば、バルセロナのMFだったジョゼップ・グアルディオラがそうだ。中盤のゲームメーカー、攻守の要として、監督が描いた戦術をピッチに落とし込むのが彼の役割だった。当時の世界中の監督は「グアルディオラのような選手がいたら……」と語っていたものだった。

岡田もグアルディオラも、中盤の底あるいは最後尾からチーム全体を見ていた選手であり、冷静さが光った選手だった。森保一などもまったく同じような印象だ。

もちろん、まったく違ったタイプの名監督も無数にいる。

選手時代には、自分本位のエゴをむき出しにしたようなFWだった名指導者も多い。

ロシア・ワールドカップで日本代表を率いた西野朗やガンバ大坂、FC東京で素晴らしいチームを作っている長谷川健太などはそうしたFW出身の監督だ。戦術の細部にこだわるのではなく、選手たちを気持ちよくプレーさせるあたりがFW的に思える。しかし、FW出身ながら戦術的な緻密さ、細部へのこだわりを持っている高木琢也のような指導者もいる。現役時代のプレーを見ていたら、高木があのようなタイプの監督になることは想像もできなかった。

そういえば、名将イビツァ・オシムもエゴ丸出しの華麗なタイプのCFだったという。

だが、いずれにしても、後方のポジションで、冷静なプレーをする選手だった人に後に名監督になった人が多いということは言える(ジョゼ・モウリーニョをはじめ、選手時代はまったく無名だった人も多いが)。

長谷部は、現役生活を続けながら、指導者資格取得のための研修を初め、またクラブの育成部門でコーチも行うという。S級ライセンス取得には数年はかかるだろうから、40歳前後で引退した段階で指導者デビューできるはずだ。

いずれは日本に戻ってドイツでのキャリアに裏打ちされた指導を行って、世界に通用する選手を育ててもらいたいとも思うが、やはり“長谷部監督”に期待したいのは、ヨーロッパのビッグクラブを率いて各国リーグやチャンピオンズリーグなどで活躍することだ。

日本人指導者の能力は現在でもけっして低くはない。Jリーグでも、この10年をとってみれば、日本人監督が率いるチームが優勝することの方がはるかに多くなっている。相手チームを分析して対策を講じ、それをピッチ上に落とし込んで相手の良さを消しながら戦うといった戦いが多いのがJリーグだ。そうした点でも、日本人監督の能力は今では外国人監督に勝るとも劣らない。

また、Jリーグ発足以来すでに四半世紀が経過し、プロ選手としてプレーした経験を持った監督が増えてきていることも事実だ。

そのおかげで、アジア各国で監督として活躍する日本人指導者は増えている。東南アジアでは日本人監督が成功した例はいくらでもある。

だが、本場ヨーロッパで日本人指導者が活躍するのはかなり難しいことだ。日本人監督がヨーロッパのチャンピオンズリーグで優勝することは、日本代表のワールドカップ優勝よりもさらに困難な目標のように思える。

言語的な問題もあるだろうが、最大の障壁は日本人に対する信用度だろう。ヨーロッパ人には「自分たちがサッカーの本場である」という自負がある(実際、世界のサッカーをリードするのはヨーロッパだ)。そこに、アジア人である日本人が乗り込んでいって指導をするためには、彼らに「こいつは信頼できる」と信じ込ませなければならないのだ。

ヨーロッパ人に日本人指導者のことを信用させるためには、日本代表が(できれば日本人監督の下で)ワールドカップで優勝して見せるという方法もある。そして、もう一つがヨーロッパで長く活躍した人物が監督になることだ。

その点では、10年以上に渡ってドイツ・ブンデスリーガで活躍し、名門フランクフルトで守備の要として高い評価を受けている長谷部誠はまさにうってつけだ。

今回の契約延長の内容を見ても、クラブ側からの信頼度が高いことは一目瞭然。語学的な障壁もなく、“長谷部監督”なら普通のヨーロッパ人と同じように受け入れてもらえるはずだ。そして、“長谷部監督”が成功すれば、日本人指導者一般に対する信用も増すことだろう。

つい20〜30年前のことを考えれば、ポルトガルのトップクラスのクラブでイングランド人が監督を務めることは当たり前だったが、ポルトガル人指導者がイングランドのビッグクラブの監督になることなど夢のまた夢だった。フォークランド紛争があった1970年代に、アルゼンチン人指導者がイングランドで受け入れられることなど誰が想像しえただろうか。

長谷部誠には、ぜひヨーロッパのクラブで監督として成功してほしいものだ。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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