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サッカー フットサル コラム 2020年5月18日

「ポストコロナ」社会とJリーグ。大都市のビッグクラブではなく、地方の中小都市が重要に

後藤健生コラム by 後藤 健生
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全国39の県で政府の「緊急事態宣言」が解除され、まだまだ“収束”には程遠いものの、新型コロナウイルス(Covid-19)の感染にも出口の光が見えてきたようだ。

そんな中で、J1のサガン鳥栖がチーム練習を始めたというニュースがあったし、目を世界に転じても、5月16日にはドイツでブンデスリーガが無観客開催とはいえ、再開にこぎつけた。

いずれ、6月末から7月上旬にかけて、プロ野球やJリーグをはじめとして国内のスポーツシーンも“通常”には程遠い姿かもしれないが、戻ってくることだろう。

そんな中で、「ポストコロナ」社会の中でのスポーツの将来について考えてみた。

さて、外出自粛が続いた中で「テレワーク」を実践された方も多いだろう。僕もWeb会議やWeb飲み会といったことを今回の外出自粛期間中に初めて経験したが、なかなか快適だったので驚いた。

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Web会議では、いつも無口な人はやはり無口だったし、いつも会議の流れをリードする人は同じようにWeb会議でも積極的に会を仕切っていた。Web飲み会のおかげで、もう何年もゆっくり話していないような旧知の人ともしっかりと話ができた。また、ラジオ放送ではリモート出演も経験した。

なにしろ、会議にしろ、飲み会にしろ、家に居ながらにして実行できるので、行き帰りの心配がないのがうれしい。

たまには用事があって都心に出かけるころもあったが、電車はどこもガラガラで7人掛けのロングシートに間隔をあけて1人か2人が座っているだけ。普段の満員の電車に比べてなんと快適だったことか……。

こうしたテレワークの世界をひとたび経験してしまったら、また元に戻れるだろうか? これからは大して重要でもない会議のために満員電車を乗り継いで出かけるのが億劫になってしまうことだろう。何も、会議で見たくもない顔を突き合わせるために長距離移動をすることはバカらしくなってしまう。

新型コロナウイルスの感染が収束しても、テレワークは普及していくことだろう。「コロナ」のおかげで、時代は10年分くらい一気に前に進む。

さらに長期的に見れば、大都市に密集して暮らす必要もなくなってくる。

密集した大都市での暮らしは、今後いつ再び襲ってくるかもしれない新たな感染症を考えたら危険すぎる(次のパンデミックは、エボラ出血熱やデング熱のように致死性がはるかに高いものかもしれない)。台風や大地震、津波などの様々な災害を考えても、密集した暮らしはあまりにも危険度が高い。

また、とくに日本では大都市(東京、横浜、大阪、名古屋……)はほとんどが海沿いに立地している。

すべて、もともとは低湿地で、あまり人が住むには適していなかった場所だ。こんな所に大都市が築き上げられたのは16世紀後半、安土桃山時代以降のことだ。土木技術が発展し、上水道、下水道(排水)が完備されることによって初めて、低湿地帯を埋め立てて、そこに大都市を建設することが可能になったのだ。そして、海と河川、運河を組み合わせることによって、こうして新しく作られた大都市は全国と物流がつながって発展していったのだ。

だが、温暖化によって海面が上昇すれば、こんな立地の都市は海に沈んでしまう。

ヨーロッパで大都市が発展したのは日本より遅いと考えていいだろう。大都市が成立したのは、産業革命によって近代的な工業化が進んだことによる。工業化時代には、一か所に労働者や消費者が密集して住む方が効率が良かったからだ。メインの産業である工業はきわめて労働集約的であり(つまり、多くの労働者の人出が必要だった)、また重くてかさ張る製品(商品)の流通のためには消費者が密集している方が効率的だった。

だが、今回のテレワークでも体験したように、情報を扱う現代の産業にとっては、労働者や消費者が密集していることはとくに必要ではない。質の高い生活を送るためには、密集はむしろ負担になってしまう。

“ポストコロナ”の社会は、いずれ大都市への密集ではなく、中小都市への分散の方向にベクトルを変えるはずだ。

1923年の関東大震災の後、東京では多くの犠牲者を出した東部の下町から、より安全と思われた西部の山の手に人口が移動した。そして、山手線西部の各ターミナル(池袋、新宿、渋谷)から西に向かって鉄道網が整備されていった。それと同じように、一連の災害を経て、“ポストコロナ”の時代に人々は分散を考えるようになるだろう。

ポストコロナ社会のスポーツ観戦も、密集を避けるようになるだろう。「三密」を避けて、ソーシャルディスタンスを保とうとする意識はこれからも維持されるだろう(それによって、インフルエンザなど既存の感染症による死者数も減る)。5万人以上の観客が1つのスタジアムに詰めかけるといったようなスポーツ観戦文化も変化していくはずだ。大都市のビッグスタジアムから各中小都市の中小規模の快適なスタジアムでの観戦へ……。そして、リモート観戦の技術も発達していく。

幸い、サッカーのJリーグには、中小地方都市をホームタウンとした小さなクラブがすでに多数存在する。未だに観戦者ゼロの岩手県にも、ちゃんとJ3クラブが存在するのだ。また、これまでのJリーグの歴史を見ても、茨城県鹿嶋とか静岡県磐田といった地方の中小都市にも強豪クラブが存在している。

僕は、将来は大都市のビッグクラブがJリーグ全体を牽引していくようにならなければ、Jリーグの発展はないと思っていた。たとえば、マドリードやバルセロナのクラブがスペインのリーガ全体を引っ張っているのと同じように……。

だが、“ポストコロナ“社会を考えると、むしろ地方の中小都市のクラブの存在の方が重要なのかもしれないとも思えてくるのである。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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