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新型コロナウイルス(Covid−19)の感染拡大でストップしていたヨーロッパ各国リーグで再開の動きが出てきたようだ。
ベルギーのジュピラー・リーグやオランダのエールディヴィジは早い段階で再開を断念していたが、さらに感染による被害の大きかったスペインやイタリア、そしてフランスなども2019/20シーズンはこのまま終了となるようだ。ヨーロッパ・サッカー連盟(UEFA)も条件付きながらリーグ戦の終了を了承。日程を消化できないままで順位付けがなされれば、その“暫定”の順位に応じて来シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ出場権を与えるという。
そして、一方でドイツのブンデスリーガをはじめ、新型コロナウイルスの被害が軽かった北欧諸国などには再開の動きが出てきたようだ。
各国の状況によって再開方針に差があることは当然だ。
「社会に対してポジティブなメッセージを発する」というのもスポーツの存在意義の一つだとすれば、可能な地域や国では無観客でもいいから早期に再開をしてほしい(もちろん、安全上の配慮が最優先で、もし将来第2派、第3派が襲ってくるような場合にはすぐにでも再中断を決断しなければならない)。
ところで、すでに再開された台湾のプロ野球で観客席にダミーの応援団を配置しているという報道写真を見た。また、再開を検討しているヨーロッパのリーグ戦でも、サポーターが車で来場し、スタジアム隣接の駐車場で大型スクリーンで試合を観戦。クラクションを鳴らすことで盛り上げるというプランがあるという。
また、報道によれば在宅のサポーターがスマホのアプリを通じてスタジアムに歓声や口笛の音声を流すことで、リモート応援ができるようにするという案もあるという。
いやはや、いろいろなことを考えるものである……。
日本のJリーグも含めて、リーグ戦の中止という前代未聞の状況の中で、これまでもクラブや選手とサポーターをオンライン上でつなぐためにさまざまな試みがなされてきた。
上記の「リモート観戦」の試みは、その最先端の取り組みということになる。
各国で発案されたそうしたさまざまなアイディアを持ち寄って、無観客開催を強いられる時期でもサポーターが参加できる新しい応援の形を模索していってほしい。
そして、コロナウイルス禍収束後にも、こうしたリモート観戦のためのテクノロジーはきっと生き残っていくだろうし、それが将来の応戦スタイルにも大きな影響を与えることは間違いない。
新型コロナウイルスによるパンデミックが終息した後のことを考えてみよう。
Covid−19が世の中からなくなるわけではない。このわれわれが対峙しているウイルスが、普通の風邪を引き起こす従来型のコロナウイルスと同程度の普通の病原体となって人類と共存する状態になった時のことだ。
Covid−19の脅威がなくなったとしても、将来、さらに別の病原体がパンデミックを引き起こす可能性は残るし、Covid−19よりも強毒性が強く、致死率が高い病原体がさらに深刻なパンデミックを引き起こす可能性もある。
それに備えるために、人類は大都市に集中する生き方をやめるのではないだろうか。毎日のように満員電車に揺られて通勤し、狭いオフィスで顔を突き合わせて働く必要もなくなるはずだ。今回のコロナウイルス禍によって、テレワークの有用性がかなり高いことも実証された。
つまり、“大都市集中”という文明の在り方が変わるはずなのだ。
そうなったときには、スポーツ観戦の形も変わるだろう。数万人がスタジアムという狭い空間に集まる必要はないという考えが広まって、リモート観戦が普通のことになるかもしれない(そうなれば、さらにリアリティーを追求したプログラムの開発も急がれるはずだ)。
逆に、そんな人と人の接触が希薄になるような社会になったら、だからこそ人が密集して“濃厚接触”をしながら、ともに声を上げるスタジアムでの生応援が貴重な機会として、今よりもさらに重要度を増すことになるのかもしれない。
ただ、いずれにしてもリモート観戦の活用は考えられる。
数万人のスタジアムでの生の声援に加えて、リモート観戦の数十万人のサポーターも加わればスタジアムも盛り上げられるし、スタジアムに行けない遠隔地のファンが試合に関わることができるようにもなる。
もちろん、どんなにテクノロジーが発展しようとも、スタジアムでの生観戦こそが最も楽しいのは間違いない。だが、通信速度が上がり、立体的なイメージを再生できるようになれば、現在のテレビやダゾーンでの観戦よりもさらに臨場感は高まるだろう。
リモート観戦はさらに生観戦に近づくのだ。
一方では、スタジアムにリモート観戦に近い環境を作る必要もあるだろう。
生観戦より、テレビ観戦の方が優れている最大の点は、各種のデータを見ながら観戦できるところであり、またすぐに再生映像を見られるところだろう。
今ではスマートフォンなどを使って、スタジアムで観戦しながらも映像を確認することは容易にできるようになってきた。これをさらに一歩進めて、スタジアムの個席に映像装置やプリンター等を取り付けて、映像や資料等を確認しながら観戦できるようにしてはどうだろうか。
密集状態を嫌う人がいれば、席と席の間隔を開けることが必要になるだろうし、そうなればそうした機器を取り付けるスペースも自然と生まれてくるはずだ。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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