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Jリーグが、ついに無観客開催に向けて準備を始めたという。
プロ野球(日本野球機構=NPB)とJリーグが共同して設立した「新型コロナウイルス対策連絡会議」の第6回会議が4月23日に開かれ、記者会見で村井満チェアマンが「無観客試合も想定しなければ」と語ったのだ。同連絡会議の下に設けられた専門家チームからのアドバイスを受けてのことだ。
2月25日に、Jリーグは開幕したばかりのリーグ公式戦の中断を決定。その後、プロ野球も開幕延期を決定した。大相撲やバスケットボールのBリーグが無観客開催を選択したのに対して、Jリーグとプロ野球はともに観客を入れての通常開催を目指してきたのだ。
もちろん、どちらが正しく、どちらが誤っているというものではない。無観客ながら、3月場所の15日間を無事に開催した大相撲は連日テレビで放映され、社会に元気を与えることに成功した(Bリーグは「途中で中断」という残念な結果に終わったが)。
ただ、毎試合数万人のファン、サポーターを集め、彼らの声援に支えられるJリーグやプロ野球が最後まで通常開催にこだわったのは、それもまた勇気ある決断だった。僕もやはり「コロナウイルス禍の収束後に通常開催を実現することによって、経済や社会が大きく動き出す契機とすべきだ」と思っていた。
だが、現在はJリーグが最初に中断を決定した2月下旬とは状況が大きく変わっており、通常開催が近い将来に実現できる見通しは立てられなくなってしまった。
2月の段階では新型コロナウイルス(Covid−19)の蔓延を防ぐことによって短期間のうちに通常の社会活動を再開できると誰もが思っていた。
海外でのウイルス蔓延が中国だけであれば、中国からの入国を全面的に停止し、それでも入ってきたウイルスの感染経路(クラスター)を逐一遮断することによって、かつての重症急性呼吸器症候群(SARS)の時のように国内での蔓延を防げる可能性があった。
だが、中国からの渡航禁止措置が遅れたこと、そしてウイルスの蔓延が中国だけでなく全世界に拡大してしまったことで、日本での蔓延は防げなくなった。4月23日時点での日本国内での感染者数は1万3000人を超えている。しかも、日本ではPCR検査が積極的に行われてこなかったのだから、実際の感染者数はこの数字よりはるかに多く、おそらく10万人以上には達していると思われる。
ただ、もし実際の感染者数が10万人程度だとすれば、致死率は1%を下回るので、このウイルスはそれほど強毒ではないということになる。感染拡大のスピードを遅らせ、重症患者の増加を抑えることによって医療崩壊さえ防げれば、被害は一定の範囲(たとえば、毎年数千人という季節性インフルエンザの死者数)に抑えられるはずだ。そうして徐々に既感染者数が増加し、無症状、軽症のまま抗体を獲得した人の数が増え、それが60〜70%に達すれば「社会的免疫」が達成され、蔓延は収束する。
ただ、そのためには感染拡大を鈍化させるために社会的活動の抑制(たとえば外出自粛とか「三密」の防止)を長期にわたって続けなくてはならない。治療薬が開発されるか、ワクチンが実用化されれば期間は短縮できるが、それにも最低で1年程度の時間はかかることだろう。
つまり、いずれにしても長期戦を覚悟しなければならならず、サッカーや野球を通常開催の形で再開できるのは早くても数か月後のことだ。
それなら、やはり無観客開催を選択せざるを得ない。
開催を急ぐべき一つ目の理由は選手たちのコンディションの問題だ。現在Jリーグクラブは活動を休止しており、選手たちは個々に自主トレーニングに励むしかない状態にあるが、本格的にトレーニングが再開できたとしても、試合を経験できない状態が半年以上続いたら、選手たちの技術レベルやフィジカル・コンディションは衰えてしまう。それを防ぐには、無観客でもいいから早期に公式戦を再開するしかない。
早期開催が望まれる第二の理由はクラブ経営の問題だ。すでにJリーグはいくつもの支援策を決定しているし、北海道コンサドーレ札幌のように選手たちが給与の一部返納を申し出るといった動きもある。だが、試合が開催できずないままではいずれクラブの経営破綻も生じることになるだろう。無観客では入場料収入はなくなるが、公式戦を開催することで放映権料を得ることができるし、それに伴ってスポンサー収入も確保できる。
JリーグはDAZNとの独占契約によって多額の放映権料を獲得しているのだが、このような時期だけにできれば地上波放送なども増やして社会に元気を届けることも必要なのかもしれない。
また、もしJリーグが6月に再開できれば、海外での視聴者を増やす絶好の機会となる。ヨーロッパや南米の各国リーグは中断しており、2019/20年シーズンはそのまま終了となる公算が大きい。そして、来シーズンの開幕まで世界中のファンは試合に飢えた状態にあるのだ。リーグ戦を強行開催し続けているベラルーシ・リーグが各国で視聴されているということも話題になっているし、野球の世界でも無観客開催をしている台湾のプロ野球中継がアメリカで人気を集めているという。
Jリーグは、おそらくベラルーシ・リーグよりはレベルが上のはずだし、アンドレス・イニエスタというヨーロッパでも名の通ったスター選手もいる。各国でJリーグの存在を認知してもらうには絶好の機会になるだろう。
いずれにせよ、これからも状況は刻々と変化していくはずだ。無観客開催、通常階差の両面作戦で再開への準備を着々と進めていってほしい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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