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サッカー フットサル コラム 2020年4月26日

「VARがあったらなぁ!」。昔の試合の映像を見てて感じるいくつもの違和感

後藤健生コラム by 後藤 健生
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安倍晋三首相が特措法に基づいて「緊急事態」を宣言。いよいよ僕たちの行動が大きく制約を受けることになってしまった。

先日はNHKから出演依頼が来たので「当日は何時入りですか?」と聞いたら、「今はNHK職員以外は電話出演になります」と言われてしまった。

たしかに、最近はテレビを見ていてもコメンテーターがスタジオには来ないでリモート出演で顔を出している番組が多い……。

そんなわけで、最近は僕もほとんど在宅で原稿を書いているか、身辺を整理するか、あるいは前回も書いたように昔の試合の映像を見るような生活が続いている。

FIFAのサイトだけでなく、最近は各局が「懐かしの映像」を流してくれるのでありがたい。僕のような年寄りは昔を懐かしく思い出しながら見ることができるし、若い方々にとっては新鮮な映像になるのだろう。現在を理解するには過去を知ることは不可欠なのだ。来し方行く末を考える良い機会だと理解したい。

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先日は、某局が1999年のJリーグ・チャンピオンシップの映像を流してくれていた。ファーストステージ優勝のジュビロ磐田とセカンドステージ優勝の清水エスパルスのいわゆる「静岡ダービー」が実現した試合だ。ファーストレグもセカンドレグもともにホームチームが延長㈸ゴールで勝って、最後はPK戦の末に磐田が2度目の年間王者となった歴史的な試合だった。

じつは、当時僕はイタリアに滞在していたのでこの試合は生で見ていなかったのはもちろん、実はこれまでフルゲームの映像を見たことがなかったのだ。こういう映像が見られたのも、新型コロナウイルスのおかげだ……

こうした初期のJリーグを見ていても、サッカーというスポーツの本質は何も変わっていないし、試合のクオリティーという点でもさすがに日本のトップクラブ同士なので、“現在の目”から見てもまったく違和感はない。強いて言えば、当時のJリーグの難点は、両チームともあまりにもテンポが速すぎることくらいか。もう少し、落ち着いてタメを作った方がいいのではないかという場面が多々あった(もっとも、チャンピオンシップという舞台なので気持ちが入りすぎるのは当然ではあろうが……)。

時代の違いを一番感じるのは、試合そのものよりも試合の周辺、とくに審判関係だった。たとえば、「VARがあったら……」と思うことが何度もあったのだ。

VARが本格的に採用されてからほんの数年しか経っていないし、現在でもVARを巡っては賛否の意見が飛び交っている。だが、昔の映像を見ていると、VARという制度がすでに僕の心の中にすっかり定着してしまっているということを実感する。

たとえば、先日のコラムにも書いた1986年メキシコ・ワールドカップ準々決勝のブラジル対フランス戦。僕の観戦史上最高の試合だ。延長後半116分にはミシェル・プラティニの必殺のスルーパスでブルーノ・ベローヌが抜け出してフリーになった場面があった。すると、ブラジルのGKカルロスがエリアから飛び出して、手でベローヌの体を止めたのだ。当然、「決定的得点機会の阻止」で一発退場となるべきプレーだ。だが、イオアン・イグナ主審(ルーマニア)はこのプレーを見逃して、フランスにはFKも与えられなかった。

今だったら、当然、VARが発動されてカルロスは退場となったはずだ。

フランスは、実はその4年前のスペイン大会の西ドイツとの準決勝でも“犠牲者”となっていた。西ドイツ・ゴール前の空中戦でGKハラルト・シューマッハーがフランスのパトリック・バティストンに体当たりを食らわせ、バティストンは意識を失って担架に乗せられて退場したのだが、この時もフランスにはFKすら与えられなかったのだ。

こうした場面を見れば、“正義”を実行するためにVARは絶対に必要不可欠な制度だということを確信させられる。もっとも、今から20年も経って現在の試合を見返したら、VARのために試合が長時間ストップしているのを見て、「昔の(つまり、現在の)審判員はなんて手際が悪いのだろうか!」と呆れることになるのだろうが。

この10数年の間に、審判を巡ってはVAR以外にも数々の進化があった。

試合がアディショナルタイムに入ると、今では第4審判が追加時間を掲示する。だが、20年前には追加が何分あるのか、選手も、観客も、実況アナウンサーも、副審も誰も分からないまま試合が続いたのだ。「知っているのは主審のみ」だった。

先日、やはり映像を見返した1978年のアルゼンチン・ワールドカップのブラジル対スウェーデン戦では、試合終了間際にブラジルがCKから決勝ゴールを決めたかに見えたが、CKで蹴られたボールが空中にある間にレフェリーがタイムアップの笛を吹いていたために得点が認められなかったという“事件”まであった。

また、マルチボール・システム採用前の試合ではタッチに蹴り出したボールがなかなか帰ってこなくて試合再開が遅れる場面があって、ついつい苛立ってしまう自分がいた。マルチボールも、残り時間の掲示も、VARも、あるいはバニッシングスプレーも、いずれも試合をスピードアップし、また分かりやすくするための素晴らしい改革だった。昔の試合を見ていると、そんなことに気が付く。

現在のサッカーで最も分かりにくいのは、「主審がアディショナルタイムを何分取るのか」ということだ。追加時間は掲示されるのだが、それを見た時に「なんで、2分しかないの?」とか、逆に「なんで6分も取るんだ!」といった疑問を抱いた経験は誰にでもあるだろう。

ラグビーでは、今では時間はタイムキーパーが管理していて、選手の負傷などで試合が止まるとスタジアムの時計も同時に止まる。だから、時計の針が前後半の40分を指した瞬間に終了のホーンが鳴るのできわめて分かりやすい(ただし、ラグビーの場合はプレーが切れるまでは試合が続くのだが)。いずれは、サッカーでもこういうやり方が採用されるだろう。改革は恐れてはいけない。

20年後に現在の試合を見たとしたら、最も大きな違和感を覚えるのはやっぱり審判関係の部分なのではないか。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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