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サッカー フットサル コラム 2020年3月10日

連敗を喫した女子代表。いまのままでも、そこそこ戦えるではあろうが……

後藤健生コラム by 後藤 健生
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「シービリーブスカップ」に出場している日本女子代表(なでしこジャパン)はスペインとの初戦に続いてイングランドにも敗れて2連敗となってしまった。

もっとも、イングランド戦は83分にDFのパスをカットされて決勝ゴールを許しての惜敗だった(イングランドの決勝ゴールはオフサイドのようにも見えた)。前半は日本の守備がはまって何度も決定機を作っており、「どちらが勝ってもおかしくない試合」でもあった。

初戦のスペイン戦が完敗だったことを考えれば「中2日でよく立て直した」という見方もできる。

内容が良くなったのには、いくつかの理由がある。

まず、日本チームのパフォーマンスが上がったこと。初戦の完敗を受けて守備意識が高くなり、前線のプレッシャーとDFラインの連携が良くなりコンパクトな守備を維持できたこと。そして、何よりも1試合を戦ったことによって試合勘を取り戻すことができていたことの2つが違った。

なにしろ、日本の女子サッカーは昨年末の皇后杯全日本選手権を最後にシーズンオフに入っていたので、スペイン戦は約2か月半ぶりの実戦だったのだ。一方、スペインやイングランドにとってはまさに今がシーズンの真っ盛り。

また、スペインとイングランドの出来も違った。

日本戦のスペインは素晴らしい出来だった。日本のプレッシャーをパスワークでかわして楽々と日本陣内にボールを運べていたし、ボールを失っても攻撃から守備への切り替えが非常に早く、日本の選手はスペインの複数の選手に囲まれてパスコースを切られてしまった。

それに対して、イングランドは初戦のアメリカ戦からメンバーを変更したこともあってとくに前半はプレッシャーも甘く、日本は余裕をもってボールを扱うことができた。そうなれば、当然、日本はその特徴を発揮できる。

オリンピックが開かれる7月は日本選手にとってはシーズンの真っ盛りとなり、逆にヨーロッパ勢はオフ中の大会となる。蒸し暑さなど日本の気象状況にもヨーロッパ勢は苦しむこととなるだろう。それなら、日本はヨーロッパ勢とはなんとか互角に戦えそうだ。

オリンピックのサッカー競技では、多くのスポーツの中でサッカーというスポーツの地位を高めるためにも、男女ともにメダルを期待したい。とくに女子の場合は9年前のワールドカップ優勝の記憶もあるので一般のファンやメディアからの期待も大きくなるだろう。また、日本サッカー協会は2023年の女子ワールドカップ招致に向けて動いており、女子のプロリーグ化も計画中だ。そうしたプロジェクトを成功させるためにもオリンピックでのメダル獲得は大きな推進力となるはずだ。

ヨーロッパ勢と互角に戦えるとすれば(しかも、ヨーロッパにおける最強国のドイツやフランス、スペインは東京オリンピックには参加しない)、メダルの確率は半々程度と見ることができる。

ただ、メダルの確率を上げるには、あるいは決勝進出を目指すのなら、今のままでいいとは思えない。

日本チームの最大の問題点は決定力だ。

イングランド戦でも、日本が優位に進めた前半のうちに先制できていれば、結果は違ったものになったはずだし、昨年のワールドカップのラウンド16ではオランダ相手に攻撃を続けたものの2点目を奪えずに敗れてしまった。

日本の高倉麻子監督はワールドカップではなでしこリーグの得点王である田中美南をメンバーからはずし、横山久美を中心に戦った。今回の「シービリーブスカップ」ではスペイン戦では菅澤優衣香、イングランド絶対のストライカー候補はいない。

イングランド戦の田中はこれまでの代表戦の中ではベストのプレーだった。

田中はなでしこリーグで2016年以来4年連続で得点王に輝いていることでも分かるように、シュートの上手さでは日本選手の中で群を抜いている。しかし、代表ではそのシュート技術を発揮できないでいる。海外勢の激しいマークのせいでもあるが、同時に国内での試合と違って代表では守備の負担が多くなり、シュートを打つことに集中できないからだった。その点、イングランド戦では代表でのプレーとしてはこれまでで最も得点することへの意識が高かった。

しかし、劣勢の時間帯も長くなることも予想されるオリンピック本番を見据えると、CFとしてはボールを収めてポストプレーができる選手がほしいところだ。

そうした意味で、やはり一度は試してほしいのが永里優季だ。

永里は日本代表ではそのサッカー観の違いもあったようで十分に力を発揮できず、2016年を最後に代表を離れているが、ドイツやイングランド、アメリカでプレーしており、昨年もアメリカのシカゴ・レッドスターズで8ゴールを記録している。長く欧米でプレーしているだけに、海外勢の激しいプレッシャーにも耐えられるはずだ。

高倉監督は、最近は熊谷紗希を除いて海外組をほとんど招集していないが、ここは本人と話し合った上で最後のピースとして永里を試してみてはどうだろうか?

現在のままでいっても、東京オリンピックではそこそこの内容の試合はできるだろうし、メダル獲得の可能性も十分に程度ある。だが、さらに上の成績(つまり、決勝進出)の可能性を高めるためには、今のままではいけない。

昨年のワールドカップ以降の上積みがあまり感じられていないし、最近はメンバーもかなり固定されているにも関わらずチームとしてのまとまりも感じられない。

何かを変える必要があるのではないか。永里のような新戦力を求めるのか……。あるいは、さらにドラスティックな変化を求めるのか……。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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