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年が明けてオリンピック・イヤーを迎えたと思ったら、すぐに東京オリンピックで金メダル獲得に挑戦するU-23日本代表が始動した。
タイのバンコクなどで行われる「AFC・U-23選手権」である。
オリンピック・イヤーに行われるこの大会はオリンピック予選を兼ねている。すでに、開催国として出場を決めている日本を除いて、他の国にとってはこれがオリンピック・アジア最終予選ということとなる。当然、勝負にこだわった激しい試合が多くなるだろう。
日本は、開催国として東京オリンピック出場権を獲得しているが、本気モードの強豪相手の大会である。「準備」といった気持ちで入ったら勝利は覚束ない。自分たちも「ベスト4入りを逃したらオリンピック出場を辞退する」くらいの強い気持で戦ってほしい。
A代表とオリンピック代表の監督を兼務する森保一監督だが、昨年後半は負けゲームが続き、「森保批判」や「兼任監督制批判」の声も上がっていた。
もちろん、これはほとんど意味のない「批判のための批判」としか言いようがない。
2018年のロシア・ワールドカップ終了後にA代表監督に就任した森保監督は、2018年の間はメンバーをほぼ固定して戦い、堂安-南野-中島の2列目の好調さもあって破竹の快進撃を続けた。すべては監督就任からわずか半年で迎えるアジアカップのためにチーム作りを急いだからだった。
2019年1月のアジアカップを準優勝で終えると、森保監督は次々と新戦力やベテランを招集。いわゆる「ラージグループ」作りのためにまるまる1年を費やした。ヨーロッパ組が招集できないコパ・アメリカやE-1選手権などもあったため、A代表、オリンピック代表(U-22代表)の垣根を取り払ったように若手主体のA代表を編成したり、A代表とU-22代表をシャッフルしたりと「ラージグループ」作りが進められた。
その結果、メンバーは固定できず、寄せ集め感の強い急造チームで試合に臨むような状態も生まれたためチームの出来にもムラが多くなり、U-22代表のコロンビア戦やA代表のベネズエラ戦、そしてE-1選手権の韓国戦など不甲斐ない内容での負けが続いたために森保批判などの声が上がったのだ。
だが、状況を考えればこうした結果も想定内。A代表のレギュラーを揃えた韓国相手に若手主体のチームが敗れるのは当然の結果でもあった。
だが、2020年に入るとそうは言っていられない。7月には東京オリンピックがあり、そして9月にはワールドカップ最終予選も始まる。もう、「ラージグループ」作りの段階は終わったのだ(もちろん新戦力の合流はいつでもありうることだが)。
チーム作りを始める段階を迎えたのだ。
その手始めとなるのがAFC・U-23選手権大会ということになる。
この大会もヨーロッパのクラブに所属している選手は招集が不可能だが、それでも今回は最強メンバー、これからのチーム作りの中でコア・メンバーとなっていくであろう選手が招集された。
2017年後半の立ち上げの時期からチームを支えてきた小島亨介や立田悠悟、旗手怜央、上田綺世といった顔ぶれに加えて、昨年1年間で急成長した田中碧や田中駿汰。さらにU-20W杯を経験した世代の杉岡大輝や齊藤未月などを加えたチーム編成となったのだ。ワントップ候補である上田綺世と小川航基、前田大然もそろって出場し、競争を繰り広げる。
森保監督にも、勝負にこだわった采配を見せてもらいたい。
日本代表は、グループリーグでは中東の3チームと同居。かなり難しい試合の連続となることが予想される。
初戦で対戦するサウジアラビアとは、2018年のAFC・U-19選手権(U-20ワールドカップ予選)の準決勝で対戦。すでにU-20ワールドカップ出場を決めていた日本がメンバーを落としたこともあるが、日本は完敗を喫している。また、最終戦で対戦するカタールは昨年1月のアジアカップ決勝で対戦。日本の試合への入り方が失敗し、こちらも完敗だった。
日本チームにとっては、対戦相手以外にも難しい条件がある。
まず、1月は日本のサッカー界はシーズンオフだということ。昔から、日本代表はこの時期の大会では良いパフォーマンスを発揮できないことが多かった。一方の中東勢にとっては、今がシーズンの真っ盛りで、チーム状態は明らかに中東勢が上だろう。
さらに、1月のバンコクは最高気温が35度ほどの猛暑の連続。しかも、乾季のために雨はほとんど降らない。こうした乾燥した高温という状態は中東勢にとって有利な気象条件と言えよう。そんな中で、オリンピック出場権を目指すサウジアラビア、カタールなどはかなり激しいプレーを仕掛けてくることだろう。
ただ、森保監督にとっては1月に国際試合を迎えるのは今年で3年連続だ(2018年には前回のAFC・U-23選手権。2019年にはアジアカップがあった)。そうした経験もあるし、さらに今回は暑熱対策の専門家も同行してデータを取り上げながらの周到な準備も行われている。約1週間の現地での直前合宿でどこまでコンディションを上げられるかが最初の見どころだろう。
目標は「オリンピック出場権獲得」を意味する3位以上か。そして、対戦相手の厳しさもあるものの、やはりグループリーグ突破は最低限のノルマのようなもの。それにすら失敗したら、今度こそ本気で監督交代も考慮すべきだろう。
暑さの中の連戦を乗り切るためのマネージメントを行い、相手によって戦い方を変えるなどゲーム戦術を駆使して勝利を目指すことが、実戦的なチーム作りにつながるはずだ。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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