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サッカー フットサル コラム 2019年8月16日

猛暑の中でサッカーは行うべきではない!大会の開催方法などを根本的に考え直す時期なのでは……

後藤健生コラム by 後藤 健生
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今年の夏、サッカー界では「暑さ問題」が大きな話題になった。

一つのきっかけは高校総体(全国高等学校総合体育大会)。今年の総体のサッカー競技は沖縄県で行われ、男子は桐光学園(神奈川)、女子は十文字(東京)が優勝したのだが、とにかく暑かったらしい(僕は現地に行っていないから実際の状況は知らないが、夏の大会慣れしているはずのユース年代専門の記者たちが口をそろえて言うのだから間違いない)。

しかも、総体のサッカーはたった7日間で最大6試合を戦うという日程だったから、3連戦が2度あったのだ。寒さの中で行われる冬の選手権は現在は中1日以上の休養日をはさむ日程になっているが、それでも1度だけ連戦があり、そのことが問題になっている。それを考えたら、総体のサッカー競技の日程がいかに厳しいものかがわかる。

そのため、総体では試合時間は70分(35分ハーフ)で、前後半に3分間のクーリングブレイクが設けられ、それ以外にも給水タイムがあったのだそうだ。

もちろん、選手の健康を守るためには当然の措置ではあるのだが、35分ハーフで途中に何度も試合が中断するのでは本来のサッカーではなくなってしまう。

高校総体以外にも夏には各種の大会が行われ、いずれも暑さ対策は喫緊の課題とされている。日本クラブユース選手権の決勝は東京で行われたので僕も観戦に行ったが、選手が試合後に倒れて救急車で搬送される場面を目撃したし、静岡県内で行われたSBSカップでは来日したベルギーやコロンビアの選手たちが慣れない蒸し暑さに苦しめられていた。

そして、もちろんプロの試合でも暑さの影響は大きい。Jリーグも夏場には多くの試合が行われ、ACLにチャレンジしたチームは延期分の試合を戦ったり、また来日したヨーロッパの強豪との試合が組まれたりするので、強豪チームは連戦が増えてしまう。

自らアクションを起こし、ボールも人も動く「志の高いサッカー」をしている横浜F・マリノスや、夏場の連戦が重なった川崎フロンターレが失速しかけているのも暑さの影響によるものかもしれない。一方でFC東京が勝点を伸ばして首位を走っているが、彼らにはACLの負担がなく、またラグビー・ワールドカップ開催中に味の素スタジアムが使えなくなるため、リーグ戦前半にホームゲームが多かったという事情もある。さらに久保建英が退団してからのFC東京は永井謙佑とディエゴ・オリヴェイラを走らせる戦い方が主体でカウンター狙いのリアクション・サッカーに徹しており、その分「省エネ」につながっているという事情もある。

フットボールというのは、もともとイングランドで冬のスポーツとして行われていたものだ。今でもアメリカン・フットボールやオーストラリアン・フットボール(オージーボール)は冬限定のスポーツだし、ラグビーも冬が主体。一年中やっているサッカーでもヨーロッパの競合国は秋春制で真夏は(短いものだが)シーズンオフとなる。

つまり、高温多湿となる真夏の日本では本来ならサッカーはやらない方がいいのだ。

ただ、日本のスポーツは学校スポーツとして発展してきた経緯があり、学校の夏休みに試合が行われるのが伝統となっている(それでも全国高校サッカー選手権が冬場に行われるのはフットボールが冬のスポーツと認識されていた時代の名残だ)。一方、Jリーグのようなプロスポーツの場合は、夏休みの時期は観客動員が見込めるので、夏の開催を止めるのが難しい。秋春制論議はJリーグが発足した直後からずっとくすぶっているが、日本は豪雪地帯を抱えており、そうした地域では冬場の試合開催が難しいという事情もある。

だが、やはりサッカーの質を高め、何よりも選手たちの健康に害を及ぼさないためにも、夏場の大会をどうするのか、根本から考え直すべき時期がきているのは間違いない。

まず、夏場に試合を行うのなら、できる限り北海道や東北北部といった暑さが厳しくない地域で行うべきだろう。高校総体やクラブユースなど各種の集中方式の大会は、北日本に開催地を固定すべきだ。開催地にとっては負担になるかもしれないが、そうした地域で高いレベルの試合がたくさん行われれば当該地域でのサッカー振興にもつながる。

リーグ戦方式の大会では、なるべく北海道や東北のクラブのホームゲームを増やすことはできそうだ。「公平性」という意味では理想的ではないが、たとえばコンサドーレ札幌とかモンテディオ山形などは現在でも開幕直後の寒さが厳しく、雪の多い時期にはホームゲームが開催できない。その分、もし夏場にホームの連戦が設けられれば、そうした北国のクラブにとっては「公平度」が増すことになる。

あるいは、暑さの厳しい地域のクラブは夏場の試合数自体を減らし、気候の良い時期に連戦を組むこともできる。これも、「公平性」の問題があるし、結果として消化試合数に偏りができてしまい、順位争いがわかりにくくなるが、慣れてしまえばそれも面白さとして理解されるようになる。夏場の興行としては、Jリーグクラブによるフットサル大会を開いてもいい。観客にとっても涼しいアリーナでの観戦はありがたいし、フットサルの普及にもつながる。

国際大会でも同様のことはいえる。たとえば、2月、3月の寒い時期に日本チームが東南アジアに遠征すると、身体が慣れていないから暑さの影響が大きい。逆に東南アジアのチームが日本や韓国に来たら、寒さで動けなくなってしまう。だから、ワールドカップが予選とかACLでも、東南アジアと北東アジアの試合は北の国が夏の間に集中すべきだろう(今回のワールドカップ予選のミャンマーとのアウェーゲームが9月初旬に設定されたのは日本にとっては幸運だった)。

猛暑の中での開催となる2020年東京オリンピックも大問題だ。1964年の東京大会は10月の気候の良い時期に行われたが、今は開催時期は7月、8月と決められている。ヨーロッパのサッカーやアメリカン・フットボールのNFLやバスケットボールのNBAがいずれもシーズンオフで、野球のMLBもポストシーズン入りしていない夏場こそが各国のテレビ局やIOCにとって都合がいいからだ。

だが、暑さ慣れしていない国の選手や観客にとって、日本の夏場の大会は負担が大きすぎるはず。サッカーだって、本来シーズンオフのはずの時期に強行日程で行うなど「愚の骨頂」だ(だから、暑さ慣れしている日本チームには有利なのだが)。

そもそも、「決められた時期に一つの都市に集まって各種の競技を一斉に行う」というオリンピックという大会には無理が多いのだ。この辺りも、そろそろ根本的に見直す時期とも言える。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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