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このコラムでも再三扱ってきたが、最近の日本の若い世代の選手たちは試合運びがとてもうまい。「サッカーの常識」みたいなものが豊富で、自分たちのことだけでなく、相手の出方を常に伺いながら勝つための最適のプレーを選択し、「勝利」という目的から逆算して戦うことができるようになっているのだ。
「自分たちのサッカー」を貫くことだけを目指していた数年前から考えれば、大きな進歩といってよい。
今年の5月から6月にかけてポーランドで行われたU−20ワールドカップに出場したU−20日本代表。そして、トゥーロン国際とコパ・アメリカに分かれて出場したU−22世代つまり東京五輪世代の選手たちは、そうした成熟度の高さを示してくれていた(トゥーロン国際はU−22代表、コパ・アメリカはA代表として出場)。
それよりさらに若い年代であるU−18代表の試合を見ても、同じことを感じた。
静岡県内で開催されているSBSカップ2019に出場したU−18日本代表のことである。2021年のU−20ワールドカップを目指す世代の代表で、今年のU−20代表と同じく、影山雅永監督が指揮を執る。
今年のSBSカップには、ベルギーとコロンビアのU−18代表が来日。日本代表、静岡ユースを含めた4チームの総当たりが行われている。コロンビアは2014年大会、2018年大会と2度のワールドカップで連続して日本と顔を合わせて1勝1敗。ベルギーはロシア大会のラウンド16で壮絶な撃ち合いを演じた相手で、かつて2002年の日韓共催のワールドカップでは初戦で対戦して引き分けたこともあり、ワールドカップという舞台で日本代表の因縁の相手となった感のある国だけに興味深く観戦した。
初戦で、U−18日本代表はベルギーに完勝した。
日本が4−4−2だったのに対して、ベルギーは日本が想定していたのとは違って4−3−3のシステムでスタート。システム上のミスマッチのせいで、ベルギーのアンカーの位置からゲームを操るアンディ・コシがフリーになってしまったが、ベンチからの指示もあって日本はすぐに修正。自分たちのシステムは変えずに、ツートップ(櫻川ソロモン=ジェフ千葉、と藤尾翔太=セレッソ大阪)がコシをチェックすることで、日本がゲームをコントロール。小田裕太郎(ヴィッセル神戸)と藤尾の得点で日本が2対0で勝利した。
実際には日本にはさらにチャンスがあり、本来なら3点か4点奪っていなければならないような完勝だった。
もっとも、ベルギー代表はすでに国内リーグが開幕しているため、ジャッキー・マタイセン監督が思った通りの選手が招集できず、この遠征で初めて顔を合わせたような選手も多かったそうで、さらに長旅の疲れと33度を超える高温に苦しめられていたわけだから、日本の勝利という結果は当然のことと言わざるを得ない。
ただ、相手のシステムが想定と違ってもすぐに対応できるところや、バランス良く戦うことができたあたりは「さすが」である。
もちろん、リスキーなパスを出して相手に奪われてピンチを招いたり、2点リードの後に不必要に攻め急いでパスがそのままゴールラインを割ってしまったりといったような場面も多く、さらにセットプレーも機能しないなどツッコミどころは満載だった。
だが、ベルギーのような寄せ集め状態ではないにしても、U−18日本代表も今年に入って立ち上げたばかりのチームだった。
僕は、SBSカップはほぼ毎年観戦しているが、立ち上げたばかりのU−18代表が出場すると、まだチームがバラバラな状態ということが多い。その点、今年のチームはこの段階で予想以上にまとまっているという印象を受けた。
試合後の記者会見では、敗れたベルギーのマタイセン監督も「日本チームは成熟している」という感想を述べていた。
だが、U−18日本代表の影山監督は、「(この時期には)まとまっているよりも、もう少しラフでもいいから、1人で決め切るようなプレーが必要」と語っている。
今年のU−20ワールドカップのラウンド16の韓国戦では、日本がしっかりゲームをコントロールしていながら攻めきれず、最後に韓国の一発にやられた経験もあり、「決め切ること」の重要度を感じているのであろう。
サッカー知識が豊富で、試合運びがうまいというのは、もちろん素晴らしいことで、日本の強みなのだが、それをベースにした上で「1人で決め切れる」選手が現われた時、日本は世界の頂点を目指すことができるはずだ。
日本は、ベルギー戦の翌日には静岡ユースと戦った。
この大会の静岡戦は、日本代表にとって鬼門となっている。静岡側は代表チームが相手ということでモチベーション高く戦ってくるし、他の外国チームと違って暑さの中でも普通にプレーができるからで、日本代表が静岡ユースに苦杯を喫する場面を何度も見てきた。
しかし、今年の大会では静岡戦でも日本代表が3対1で完勝してみせた。しかも、2点リードで迎えた後半は、影山監督がハーフタイムにハッパをかけたようで、攻守ともにアグレッシブな姿勢を高めて戦った。
いずれにしても、まだ完成には程遠い状態ながら、これだけまとまった戦いができるというのは日本の選手たちの成熟度の高さを示している。そして、2年後のワールドカップまでにチーム全体がアグレッシブな姿勢を身に着け、そして「1人で決め切れる」ような選手が出現すれば、日本は今年のポーランドでの大会を超える成績を収めることができるだろう。
日本の最終戦はコロンビアとの対戦だ。コロンビアは初戦で静岡ユースに0対1で敗れているが、2戦目ではコンディションが大幅に回復し、ベルギー相手に高い位置からプレッシングをかけて相手のミスやファウルを誘って3本のPKを獲得し、5対1と圧勝した。最終日のU−18日本代表対U−18コロンビア代表の試合はかなりの好ゲームになることだろう。
U−18日本代表は、ワールドカップ予選を兼ねるAFC U−19選手権出場を目指して、11月に予選大会を戦う。成長著しいベトナムと同組で、しかもベトナム開催なので難しい試合になるだろうが、日本の将来のためにもU−20ワールドカップを目指してしっかりと成長していってほしい。
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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