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サッカー フットサル コラム 2019年8月5日

日テレ・ベレーザ、リーグカップで優勝。多数の代表を抜かれる中での価値ある優勝だった

後藤健生コラム by 後藤 健生
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「なでしこリーグカップ」で日テレ・ベレーザが優勝。昨年に続く連覇を達成した。

ベレーザは、昨年はリーグカップに加えてリーグ戦、皇后杯にも優勝した常勝チーム。ベレーザの優勝は「当然」は珍しいことではなったくないが、今年の優勝はそれほど楽なものではなかった。

準決勝では、浦和レッドダイヤモンド・レディースに2点を先制される苦しい立ち上がりとなった。

浦和は“女王”ベレーザに対して、立ち上がりから集中してプレッシングをかけて最高の入り方をした。そして、前半の8分にCKから先制すると、さらに28分にも2点目を決めて優位に立つ。だが、ベレーザは前半のアディショナルタイムに籾木結花がGKの頭上を越すループ気味のシュートを決めて息を吹き返し、後半に入ると浦和を圧倒(後半はベレーザのシュート数が13本で、浦和はゼロ!)。宮澤ひなたと田中美南が決めて逆転に成功して、決勝に進出したのだ。

そして、決勝戦はベレーザにとって最高のライバルであるINAC神戸レオネッサとの対戦。両チームとも守備意識が高く、中盤での激しいボールの奪い合いが続き、強度の高い試合となった。

そして、ベレーザは決勝戦でも神戸に先制を許してしまう。前半終了間際の43分にロングボールに抜け出した八坂芽依が抜け出して折り返し、最後は中島依美が決めたのだ。カウンターを狙っていた神戸としては、最高の展開だった。

しかし、勝負強さを見せるベレーザは、後半開始早々にCKからのこぼれ球をDFの有吉佐織が押し込んで同点とし、その後は一進一退。76分には神戸がベンチスタートの岩渕真奈も投入して勝負を懸けるが、そのまま1対1で延長に突入。試合が動いたのは、延長の後半115分のことだった。田中美南が頭で落としたボールを小林里歌子が持ち込んで、スルーパス。これに合わせた田中が決めた美しいゴールだった。そして、さらに終了直前に相手ミスを拾った田中がダメ押しとなる3点目を決めた。

ワールドカップでまさかのメンバー落ちした田中が、重要なゴールを決めて意地を見せた形だ。

2試合とも苦しい展開の中では逆転で勝利を手繰り寄せたあたりはさすがだが、しかし、2試合とも先制を許すなど、絶対女王のベレーザらしくない戦い方とも見えた。

ベレーザにとってこの大会は難しい大会だった。なでしこカップのグループステージは女子ワールドカップと並行して行われたからだ。

日テレ・ベレーザからはなんと10人もの選手がワールドカップ代表に選出されたのだ。つまり、代表選手(=主力)をまるまる1チーム分失った状態でベレーザは戦わざるを得なかったのだ。さらにけが人もいたため、本来の選手は5〜6人だけになってしまったという。

そこで、ベレーザは下部組織である「メニーナ」(U−18)所属の高校生、中学生を動員してグループステージを戦ったのだ。初戦はAC長野パルセイロ・レディースに0対3、3戦目のノジマステラ神奈川相模原に1対2と敗れてしまう。ある意味しかたのないことで、そのまま敗退したとしても不思議はなかった。1勝2敗スタートとんったベレーザだが、そんなチームがその後4連勝してグループステージを首位で突破して準決勝に進出したのだ。

「若い子を使って、いつもより相手の裏にランニング、プレッシャーに行くサッカーをした」とは永田雅人監督の話。そして、チームに残った主力選手たち、DFの岩清水梓や有吉佐織、そして代表からメンバー落ちした田中美南が若い選手たちをサポートするために献身的にプレーしたという。

そして、女子日本代表(なでしこジャパン)のワールドカップでの戦いは予想より早く、ラウンド16で幕を閉じて代表選手たちが帰国。グループステージ最終戦には代表選手たちが戻ってきた。

しかし、「代表が戻ってきたので一安心」というわけにはいかない。

なにしろ、代表選手は事前合宿から1か月間、緊張感の中で戦ってきたのだ。身体的にも、精神的に疲れ切った状態だ。本来なら、ワールドカップ終了後には休養が必要なはずだ。しかも、ワールドカップで主力として戦ってきた選手と、ほとんど出場機会が与えられなかった選手とでは、コンディションもバラバラのはずだ。さらに、代表抜きで戦っていた間のプレーと、代表選手たちが戻って来てからでは、当然戦い方も違ってくる。若い選手たちとともに戦ってきた主力選手たちは、またプレーに戻す必要もある。準決勝、決勝は、いつもほどベレーザの絶対の強さを見せつけるような展開とならなかったのは当然のことだろう。

しかし、そこで勝ち切ってしまうのが、日テレ・ベレーザというチームの底力だ。ベレーザのサッカーの強さの秘密について聞かれた永田監督は、読売サッカークラブの原点にまで言及した。ジョージ与那城やラモス瑠偉が持ち込んだブラジルのストリート・サッカーを原点とする遊び心こそ、ベレーザの強さなのだというのだ。

読売クラブの伝統は今でも生きている。男子部門の東京ヴェルディは今ではJ2にすっかり定着してしまい、人気も低迷しているが、男子でも育成は機能し続けている。最近、日本代表で活躍している中島翔哉(FCポルト)も、安西幸輝(ポルティモネンセ)も、畠中槇之輔(横浜F・マリノス)もすべてヴェルディ育ちの選手だ。

さて、日本サッカー協会は現在、女子のプロ化を構想中だ。しかし、具体的な準備が進んでいるわけではなさそうだ。あまりにも未確定の話なのだが、そのあたりはまた別の機会に論じるとして、競技力の面で言えば、やはり日テレ・ベレーザと同程度のチームが2,3チームはほしい。ベレーザの独走状態が続いてしまえばリーグ戦としての面白さも半減。ベレーザ程度のチームがいくつかあれば、試合も白熱して観客を呼べるはずだ。

今、日本の女子サッカーは重要な局面にある……。

ま、それはそれとして、見事な優勝を飾った日テレ・ベレーザには祝福の言葉をかけるしかない。また、困難な闘いの中で戦い抜いたことで、チームの底上げにもなったはず。8月31日に再開されるリーグ戦も楽しみにしたい。

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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