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サッカー フットサル コラム 2019年3月4日

リヴァプールが首位陥落。雰囲気のあるージーサイド・ダービーだった

プレミアリーグコラム by 後藤 健生
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イングランド・プレミアリーグ第29節。エヴァートン対リヴァプールの「マージーサイド・ダービー」は、いろいろな意味でいかにもダービーらしい雰囲気のある好ゲームだった。

プレミアリーグで首位を走ってきたリヴァプールを、中位に低迷しているエヴァートンが迎え撃ったのだが、そこが「ダービー」の魅力か、エヴァートンが気持ちの入った素晴らしい戦いを繰り広げてスコアレスドローに終わったのだ。リヴァプールにとっては、2010年以来のマージーサイド・ダービー無敗記録を伸ばしたことになるが、それよりもついにリーグ戦でマンチェスター・シティに首位の座を明け渡す痛い引き分けとなってしまった。

試合は立ち上がりから激しいものとなった。中盤でのプレッシングで互いに、簡単にはパスをつなげない状況が続く。最終ラインではパスをつなげても、なかなか中盤での組み立ては機能しない。そこで、リヴァプールはDFのフィルジル・ファン・ダイクからのロングボールでモハメド・サラーを走らせるような形が多くなり、一方のエヴァートンはGKのジョーダン・ピックフォードの早いタイミングでのパントキックが武器。

ロングボールを使ったシンプルな攻防が、どこか昔のイングランド・スタイルのサッカーを思いださせてくれる。

エヴァートンも、MFのギルフィ・シグルズソンが豊富な運動量で攻守に貢献し、リヴァプールのゴール前までボールを運ぶことができており、互いにチャンスは作れていた。だが、個人能力の違いで、チャンスが“決定機”につながったのはリヴァプールの方が多い。最初のチャンスは28分。中盤でパスをカットしたファビーニョからのスルーパスを受けたサラーが抜け出した場面。しかし、サラーのシュートはGKのピックフォードが片手でブロック。こぼれ球をジョーダン・ヘンダーソンが狙ったが、エヴァートンのDF3人がブロックに行って防いだ。

一方のエヴァートンはチャンスの芽は作れても“決定機”まではなかなか行けないまま時間が経過したが、次第に右サイドのセオ・ウォルコットが相手のマークから逃れてフリーで浮いた状態になる場面が多くなり、39分にはロングボールを受けてそのままシュートというビッグチャンスを作って前半を終了した(これが、エヴァートンの唯一のシュートだったが、エヴァートンもシュートまでいかないチャンスを作っていた)。

後半に入っても、気持ちの入った両チームの運動量は落ちず、激しい戦いが続いた。

63分にはリヴァプールのユルゲン・クロップ監督は中盤にジェームズ・ミルナーを入れ、前線ではディヴォック・オリジに代えてロベルト・フィルミーノを投入し、攻撃の圧力をさらに強めた。早速、65分にはフィルミーノとサラーでチャンスを作り、最後はサディオ・マネがヘディングで狙うチャンスを作った。3人だけで完全に相手を崩し切るあたりは、さすがに首位を走ってきたチームらしい攻撃だった(ただし、マネのシュートは枠には飛ばなかったのだが……)。

それでも、エヴァートンの最終ラインでは左サイドバック(つまり、サラーの対面)のリュカ・ディーニュやストッパーのマイケル・キーンが頑張って踏みとどまる(57分、サラーが抜け出した際のキーンの後方から正確にボールを捕らえたタックルは見事だった)。

そして、試合終盤にはリヴァプールの猛攻に耐えたエヴァートンがアンドレ・ゴメスを投入して再び反撃するチャンスも作るなど、試合は最後まで白熱したが、結局そのまま引き分けに終ったのだ。試合後に両チームの選手たちがピッチ上で健闘を称え合う、内容の濃い90分だった。

もう一つ、素晴らしかったのがグディソンパークという舞台だった。

まさに、昔のイングランドのフットボール・グラウンドの雰囲気をそのまま残したスタジアムだ。地方都市の小さなスタジアムを除いて、主なスタジアムで今でもこういった風情が残っているのはフラムの本拠地のクレーブン・コテッジか、グディソンパークくらいなものだろう。

今は、どこのスタジアムの屋根も片持ち梁式だったり、つり屋根構造になっていて、柱がないのが普通だが、ここグディソンパークではテレビのメインの画面で見える西側メインスタンド(グディソンロード)にも屋根を支える太い柱が立っているし、2回席最前列の鉄骨製の枠組みなども20世紀のフットボール・グラウンドの姿をそのまま残している。

そう20世紀前半にイングランドのほとんどすべてのスタジアムを設計したアーチボルド・リーチのスタイルが今でも残っているのだ。実際に行ってみると、スタンドの床などは今でも木製なのだから驚かされてしまう。グディソンロード・スタンドの右側(北側ゴール裏スタンドとの間)の大型映像装置の後ろには、有名な聖ルーク教会の屋根も垣間見える。

もちろん、クラブの発展のためにはスタジアムの拡張や改築も必要になるのだろうが、この雰囲気はぜひこれからも残していってほしいものだ。

ヨーロッパ各国の主要リーグも、いよいよ終盤戦だが、多くの国ですでに首位のチームが独走して優勝決定も秒読みの段階とった雰囲気だが、イングランドのプレミアリーグはマンチェスター・シティとリヴァプールのトップ争いは熾烈を極めているし、3位以下の争いも激しくなっている。

優勝争いを楽しみに見るか、試合そのものを楽しみに見るか、あるいはフットボール・グラウンドの雰囲気を見るか……。プレミアリーグの楽しみ方はさまざまあろうが、すべての要素を詰め込んだような、いかにもイングランドのフットボールらしい舞台の上で繰り広げられた、素晴らしいマージーサイド・ダービーだった。

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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