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10月の親善試合(12日対パナマ、15日対ウルグアイ)に臨む日本代表のメンバーが発表されたが、招集されたその顔ぶれから森保一監督の意図を読み解いてみよう。
前回、つまり9月のシリーズでは、ロシア・ワールドカップで主力として戦った選手の多くが招集されなかった。そして、その代わりに東京オリンピック世代(現在のU-21)の冨安健洋や堂安律も含めて、代表経験の少ない選手が数多く招集されたことが目に付いた
ベテラン勢が招集されなかったのは、彼らの能力やプレースタイルについてはすでに分かっているからだし、同時に代表活動で負担を課すことを避けようとしたのだろう。なにも、親善試合のたびに全員をヨーロッパから移動させる必要はない。代表活動で負担をかけてコンディション不良のためにヨーロッパのクラブでの出場機会が失われてしまったら元も子もない。その分、まだ代表でのプレー経験が少ない若手を招集して、監督としてトレーニングや試合を通じて若い選手たちを観察しよう。それが、9月シリーズでのメンバー先行の意図だったのではないか。
2022年のカタール・ワールドカップまでには時間がたっぷりある。森保監督にとっては、まだチーム作りに着手したばかりの段階だ。今は多くの選手を招集して観察し、将来の本格的なチーム作りのベースとなる、いわゆる「ラージ・グループ」を作る時期なのだ(ただ、9月シリーズでは北海道での地震の影響でチリとの試合が中止となってしまい、2試合を通じて多くの選手に出場機会を与えようという思惑は残念ながら達成できなかったが)。
さて、僕は、その9月シリーズを受けて10月にどんなメンバーを招集するのか、興味を持って見ていた。9月に招集を見送った「主力組」が招集されるだろうことは容易に想像がついた。問題はそれ以外の選手の顔ぶれだった。もし、「ラージ・グループ」を作ることを優先に考えたとしたら、9月には招集しなかった選手を呼んだはずだ。だが、実際に発表された顔ぶれはそうではなく、9月シリーズに招集した選手の再招集だった。
つまり、9月シリーズで良いプレーをした選手に「主力組」の海外勢を加えた10月シリーズのメンバーが当面は代表の主軸になっていくと解釈していいのではないか。
9月のコスタリカ戦は「森保色」の薄い試合だった。
森保一監督といえば、サンフレッチェ広島には独特のスタイルのチームを築き上げていた。攻め急がず、後方でしっかりボールを回しながら相手守備陣を動かし、相手に穴ができたと見るや、一気に攻撃のスピードを上げてゴールを陥れる。そんなチームだった。
昨年就任した東京オリンピックを目指すチーム(現在のU-21代表)でも、サンフレッチェ時代の森保監督を思い起こさせるようなやり方をしていた。準備時間がほとんどないU-21代表でも短いトレーニング時間でしっかりと戦い方を落としこむことできていた。たとえば1月に中国で開かれたAFC U-23選手権でも1戦目ではギクシャクしていたのが、2戦目までに見事に修正されていて驚かされた。アジア大会でも、試合を重ねる毎にしっかりとチームのコンセプトが落とし込まれていった。
ところが、9月のコスタリカ戦では、森保監督は選手たちには自分たちの特徴を発揮することを要求。プレーにあまり規制を与えないようにしてプレーさせた。
そういうやり方を選んだ理由としてまず考えられるのは、「選手を観察する」という目的があったからだ。そのために、自由を与えて「地のままのプレー」を見たかったのだろう。また、ロシア・ワールドカップで西野朗前監督が選手に自由を与えることで力を引き出すことに成功したことを、森保監督はコーチとして身近に見ていたので、そのイメージを引き継いだのかもしれない。
だから、もし、10月シリーズでも再び新しい選手を招集したとすれば、同じように選手たちに自由を与えてプレーさせたはずだ。だが、今回は9月に招集した選手に「主力組」を加えたメンバーとなったのだ。とすれば、10月シリーズではいよいよ「森保色」を加えた本格的なチーム作りをスタートさせるのではないだろうか。準備期間は短いが、戦術を落とし込むことには長けた監督のことだ。9月のコスタリカ戦とはかなり印象の違う試合になるはずだ。
10月シリーズで、早くも本格的なチーム作りに入るのは、2019年の1月にアジアカップ(UAE開催)が控えているからだろう。
ワールドカップ翌年の1月にこの大会が開かれるのは、ワールドカップ出場国にとっては都合が悪い。新チームになって時間がない中で迎えなければならないからだ(アジアカップは、もともとはワールドカップの2年後の偶数年に開かれていたが、オリンピックとの競合を避けるために、ワールドカップの次の奇数年に開かれるようになった)。それなら、割り切って「アジアカップは将来のチーム作りの準備のために若手主体で臨む」と考えてもいいのだろうが、10月シリーズの招集メンバーを見ると、森保監督(あるいは日本サッカー協会)はアジアカップも現時点での最強メンバーをそろえて勝ちに行くという選択をしたのだろう。
とすれば、「顔見世」のような試合で、選手たちが思い切りプレーしたコスタリカ戦とは違って、10月の2試合では内容と結果両面を求めなければならない。
対戦相手を比べれば、パナマは格下。ウルグアイは格上である。順当に考えればパナマ戦は若手主体で、ウルグアイ戦は最強メンバーということになるだろうが、アジアカップでは格下相手に確実に勝ち切ることも要求されるので、そのあたりのシミュレーションも必要になるかもしれない。
そうした戦略も含めて注目していきたい。
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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