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サッカー フットサル コラム 2018年9月25日

外国籍選手枠の撤廃? 自由化すれば、Jリーグはプレミアになれるのか?

後藤健生コラム by 後藤 健生
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Jリーグの外国籍選手枠を撤廃(もしくは拡大)しようという動きがあるという。早ければ、来シーズンから実施とも言われている。

外国籍選手枠の問題は、国際的スポーツであるサッカーでは、遠い昔から避けて通れない問題だ。最初に問題になったのはイタリアでの話。イタリア系アルゼンチン人選手が多数イタリアに渡り(アルゼンチンの人口の約半数はイタリア系=あのボカ地区などは、イタリア訛りのスペイン語を話す人が多い)、その後、イタリアでは外国人選手を禁止したり、解禁したりの繰り返しだった。

現在のヨーロッパでは、ヨーロッパ連合(EU)加盟国の国籍を持っている選手なら域内のクラブに自由に移動できる。「外国人選手」というより「EU国籍」の選手と考えた方が分かりやすいだろう。そして、南米出身のスペイン、イタリア系の選手たちは容易に両国の国籍が取得できるから、必然的に外国人枠が完全に撤廃されたと同じような状況になっている。

最大の恩恵を受けたのがイングランドのプレミアリーグの強豪クラブだ。テレビ放映権料の高騰で豊富な資金を持つことになったプレミアの強豪クラブは世界レベルの外国人選手を獲得することによってプレーのレベルを上げ、そのことによって海外でのプレミア人気を押し上げてさらに豊富な資金力を付けるという好循環を続けた(現在、英国のEUからの離脱交渉が正念場を迎えているが、選手の移籍も制約を受けることになる。離脱交渉がどのような結末を迎えるにしても「人の移動の自由」は制限することになるだろう)。

ただ、一方で外国籍選手の増加はイングランド人プレーヤーの出場機会を奪うこととなり、そのため代表の強化は遅れ気味となった。最近になって協会(FA)が育成に力を入れ始めたことで若い選手が育ち始めており、今年のワールドカップでは若手の多いイングランド代表がベスト4入りを果たしたことで、将来に希望が持てるようになっているが、やはり強豪クラブではイングランド人選手の数は限られており、「強豪クラブをベースに代表を強化する」という戦略が取りにくいことに変わりはない。

「外国人選手の増加でリーグのレベルは間違いなく上がる。だが、自国の選手の育成は難しくなる」ということは、一般論として言っていい。逆に、選手輸出国の場合は国内リーグの地盤沈下が避けられない(FIFAランキングでついにトップに立ったベルギーの場合、国内リーグは完全に若手育成のためのリーグになってしまった。

功罪、相半ばするわけである。

さて、Jリーグが外国籍選手の制限を撤廃したらどういうことが起こるだろうか?

当然、リーグのレベルアップにはつながるだろうが(このことについては、後に再検討する)、やはり日本人の若手選手の出場機会を奪うことにもなる。問題は、その「功」と「罪」のどちらをより重視すべきなのか、だ。

イングランドなどヨーロッパ各国と比較して、発展途上にある日本のサッカーにとって代表の強化はより重要な意味を持つ。「ヨーロッパでは代表よりクラブ」とよく言われるが、それが代表強化のために多少の障害になったとしても、クラブのレベルアップ(チャンピオンズリーグ出場)が優先されるかもしれない。

だが、日本では、社会にサッカー文化を定着させるまでの間、当分は代表の強化が重要な意味を持つ。とすれば、やはり若手選手の出場機会を確保するための何らかの制限は維持すべきなのではないか。 「出場機会は少なくなっても、Jリーグのレベルが上がれば日本人選手の能力アップにつながる」という意見もある。

その一方で、今のJリーグで外国籍選手枠を撤廃したとして、どの程度、リーグ戦のレベルアップが図れるのだろうか?

プレミアリーグのクラブなら、世界最高の資金力を誇るから、優秀な選手を自由に獲得することができる。その結果、世界選抜的な補強が可能となり、プレミアリーグは世界最高峰のリーグとなった。

だが、それほど資金力がないJリーグでは、世界最高レベルの選手と契約するのは難しい。この夏、アンドレス・イニエスタがヴィッセル神戸に加入して、大きな注目を浴びた。だが、それは三木谷浩史という巨万の富を持つオーナーがいたから実現したことであって、Jリーグの各クラブがイニエスタ・クラスの選手を獲得できるわけではない。

ブラジル人選手にしても、今の状況で日本のクラブが代表クラスのブラジル人選手と契約することはかなり難しい。

もし外国人枠がなくなったとして、いちばん手っ取り早い強化方法は無名のブラジル人(アルゼンチン人でもいいが)を数多く加入させることだろう。「シャフタール・ドネツク方式」とでも言おうか。

シャフタールの場合、ブラジル人の攻撃力を活用することによってチャンピオンズリーグの常連となり、そこで育てた選手(ウィリアンとか、フェルナンジーニョとか……)を西側のビッグクラブに移籍させて経営的にも潤った。日本でも、かつてのフッキのようにJリーグ経験者が、ブラジル代表のエースに駆け上った例もあるから、そういう強化法も可能だし、「費用対効果」を考えれば、イニエスタ・クラスを1人獲得するよりも、ずっと効果的だろう(神戸は苦戦中)。

ブラジル人主体、アルゼンチン人主体のそんなチームも見てみたいきもするが、それでJリーグのレベルが格段に上がるとは思えない。

1990年代のJリーグではブラジル代表クラスだけでなく、ギド・ブッフバルトやドラガン・ストイコビッチなどワールドクラスが何人もプレーしており、同時に日本人選手のレベルもまだ低かった。だから、外国籍選手の加盟は日本のレベルアップにつながった。

だが、今のJリーグの現状を考えれば、外国人枠を撤廃することだけで、急にリーグのレベルが格段に上がるとは思えない。つまり、外国籍選手枠撤廃によって生じる「若手の出場機会の減少」というデメリットを埋め合わせるほとの効果は期待できないのではないか。Jリーグでは、やはり当分の間は外国籍選手の人数は制限していくべきだろいうと、僕は思う。

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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