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サッカー フットサル コラム 2018年8月15日

U-21代表、ネパール戦は辛勝に終わる 森保監督は2戦目以降、チームをどこまで上向にできるのか

後藤健生コラム by 後藤 健生
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森保一監督がフル代表の監督に就任してから初めての公式大会となる。アジア大会(サッカー競技)がスタートした。その初戦となったネパール戦で、U-21日本代表は1対0の辛勝に終わった。

開始からわずか7分で三苫薫のゴールが決まった時にはゴールラッシュも期待されたが、その後はポゼッションでは大きく上回ったものの、相手の守備ラインの裏に入り込むことができず、時折つかむチャンスも相手GKの攻守に阻まれ、結局1対0のスコアのままでタイムアップを迎えてしまった。

ネパールとの実力差は大きく、早い時間に日本が先制したのに、ネパールは時には6-4-1という極端に守備的な布陣で守備を固め続けた。 したがって、日本の勝利という結果は当然のこと。追加点が奪えなかったこと、また、相手守備網の中に飛び込んでいく勇気あるプレーが見られなかったことなど、反省点ばかりのゲームと言っていい。

日本にとって気の毒な状況がいくつも重なった試合ではあった。 アジア大会のレギュレーションでは23歳以下(U-23)にオーバーエイジ3人を加えられることとなっているのに、日本はアジア大会には毎回U-21、つまり次のオリンピックを目指すチームを送り込んでおり、オーバーエイジは加えていない。

これに対し、ほとんどの国は最強編成で参加しており、たとえば日本と並ぶ東アジアの強豪、韓国はトッテナム・ホットスパーの孫興民(ソン・フンミン)まで招集して優勝を狙っている。U-23の大会であるアジア大会では、クラブ側には放出の義務はないのだが、韓国協会はトッテナムと交渉をして合流を実現した。これに対して、日本代表は海外組、たとえば堂安律(フローニンヘン=オランダ)とか冨安健洋(シントトロイデ=ベルギー)といったこの世代の有力選手を招集していないのだ。

海外組だけではない。Jリーグが終盤戦を迎えようとしている8月の大会ということもあって、国内組の招集についても「各クラブ1人」という縛りが存在しているのだ。森保監督も、オリンピック代表の監督の難しさを、今さらながら感じていることだろう(もっとも、同じ状況だった8年前のアジア大会=中国・広州ではせ関塚隆監督率いる日本代表が優勝しているのだが)。

こうしたチーム編成上のいくつもの制約に加えて、初戦のネパール戦では準備時間もまったく与えられなかった。前の週末(11日、12日)にJリーグの試合があり、ここでフル出場した選手も多く、彼らはジャカルタまで長距離移動して、中2日でネパール戦に臨んだのだ。これだけの悪条件が重なれば、良い内容の試合を期待する方が無理というもの。初戦は、勝点3を確保したことで満足せざるをえないだろう。

とすれば、最大の注目は、2戦目以降、森保監督がどのようにチームをまとめていくのかだろう。 日本の2戦目はパキスタンだが、パキスタンとは実力差は大きいのだから、問題なく勝てるはず。したがって、この試合はテストの意味合いで使うことができる。初戦に出た選手は休ませて、全体のコンディションをそろえるための試合でもある。目標は、グループリーグ最終のベトナム戦なのだ。

万一、ベトナム戦を落として2位になってしまうと、決勝トーナメント1回戦の相手が韓国となってしまう可能性が大きいから、ベトナムには、きちんと勝利して1位通過を目指したい(1位通過なら、1回戦の相手は他グループの3位チームのいずれか)。

そして、ベトナムU-23代表は、今年の1月に中国で開かれた「AFC U-23選手権」で準優勝してアジアを驚かせたチームなのだ。ベトナム戦は最初の一つの小さな山場と言っていいだろう。 そういえば、その「AFC U-23選手権」でも、日本は初戦のパレスチナ戦で1対0という辛勝に終わっている。ボールは持っているが、攻めが遅く、決定機をあまり作れない。つまり、アジア大会のネパール戦とよく似た印象の試合だった。

しかし、この大会では、2戦目のタイ戦、3戦目の北朝鮮戦と日本は徐々に調子を上げ、またコンビネーションも確立させていった。また、初戦で危さのあった中盤での守備も2戦目までにはしっかり修正していた。今回も、森保監督がこれから苦しい状況にあるチームをどうやって上向かせていくのかが、大いに注目される。

さて、海外組が招集できないことやJリーグ・クラブからも各クラブ1人しか招集できないことなど、オリンピック・チームの強化には毎回大きな制約が課せられる。これまでも、北京オリンピックの時も(反町康治監督)、ロンドン大会の時も(関塚隆監督)、そして前回リオ大会の時も(手倉森誠監督)、各監督はそうやって苦心しながらチームを強化していった。

しかし、今回はこれまでのオリンピックとは意味が違うはずだ。次回のオリンピックは、東京で開かれるのだ。 日本代表はロシア・ワールドカップで決勝トーナメント進出に成功し、ベルギーと大激戦を演じて日本中を熱狂させた。また、イニエスタの加入でJリーグにも注目が集まっている。だが、長期的に見れば、日本国内のサッカー人気は頭打ち(現状維持)が続いている。

そんな状態を打破するには、熱心なサッカー・ファン以外の、いわゆる「ライト層」にサッカーに興味を持ってもらう必要があるのだ。そのために、東京オリンピックでは男女そろってメダル(できれば、金メダル)を獲得したいのだ。もし、東京オリンピックで結果が出なかったら、サッカーは他の競技に埋没してしまう。

つまり、2020年大会はこれまでのオリンピック以上に重要な意味があるのだ。だから、協会にはこれまで以上にオリンピック代表の強化に本腰を入れてほしいのだ。Jリーグ・クラブに対して、自由に選手を招集することを認めさせる。あるいは、韓国のようにクラブと交渉して海外組の招集を実現する。それくらいの努力をしてほしいものである。

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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