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5月30日のガーナ戦に向けての代表メンバー・リストが5月18日に西野朗監督から発表されたが、内容はきわめてオーソドックスなものだった。 ワールドカップ・ロシア大会に向けて、日本サッカー協会はFIFA(国際サッカー連盟)に対して35名の代表候補リストを提出しているが、日本協会はその35名のリストは公表しないまま、ガーナ戦用の27名のリストを発表したのだ。
西野監督は会見の席で、今野泰幸と小林悠の2名が故障のために除外されたことを明言。また、久保裕也は国内リーグの日程のために合流が遅れるため、ガーナ戦メンバーに入っていないことも明らかにした。したがって、27名に今野、小林、久保を含めた30名がFIFAに提出されたリストに入っていたことが明らかになった。残りは5人。そして1人は予備のGK(おそらく西川周作)だから、名前が明らかになっていない候補選手は4名ということになる(確度の高い情報によれば、森重真人も35名のリストに入っているという)。
GKとしては川島永嗣、東口順昭、中村航輔の3人。負傷で心配された東口がおもったより早く復帰し、最近のパフォーマンスと代表招集歴を考えれば順当な人選だった。 DFラインにも、これまでの代表での実績を考えれば妥当な顔ぶれが並んだ。サイドバックが手薄だが、長友佑都や酒井宏樹は左右両サイドをこなせるし、場合によっては槙野智章や遠藤航もサイドバックもできる。
DFの若手では鹿島アントラーズのストッパー・コンビの昌子源と植田直通、そして遠藤航がメンバー入り。遠藤は、昨シーズン後半から今一つの出来が続いているが、彼らは将来の日本代表の守備の屋台骨を背負って立つ能力の高さを持つ選手だけに、ワールドカップで実際に出場機会が与えられないにしても、経験を積ませるための招集だろう。また、遠藤の場合はセンターバック、サイドバック、ボランチと守備的なポジションならどこでもこなせるポリバレント性も魅力だ。
しかし、ガーナ戦やトレーニングでのパフォーマンスによっては、若手3人のうちの誰かがメンバー落ちとなる可能性が高いだろうし、森重に変更されるかもしれない。若手DF3人にとっては今後のサッカー人生の懸かる合宿になるだろうし、ロシア大会以降の日本代表にも影響してくるところだ。
西野監督は「DFとかMF、FWという区分けをしたのは私ではない」と語った。 とくにMFは守備的MFからFWに近いサイドアタッカーまでが含まれているので、ここではセントラルMF(いわゆるボランチ)タイプとサイドアタッカー・タイプとに分けて考えよう。当落線上にいる選手たちは、それぞれのグループの中で比較されることとなる。
まず、セントラルMFでは、やはり今回の27名のうち最もサプライズ感を与えたベテラン青山敏弘の招集が目立つ。ただ、青山の実力は森保一監督の下での広島の黄金時代以来、証明しつくされているところ。ロングレンジの正確なパスを駆使できる、日本では稀有な選手だ。解任されたヴァイッド・ハリルホジッチ監督はDFの裏へ抜ける縦に速いサッカーを志向していたが、そういうサッカーをするなら、パス出しのうまい青山や中村憲剛などをなぜ招集しなかったのだろうか。青山は、今シーズンの広島の好調ぶりを背景に満を持しての招集となる。
このポジションでは守備力の成長が著しい大島僚太が最も生き残りに近いだろう。すでに代表でもその度胸の良さを発揮した実績を持つ井手口陽介は海外移籍後に出場機会を減らしているところが最大の心配。最近急成長を見せている三竿健斗にとっても、生き残りを懸けた合宿となろう。
ベテラン勢では、やはりチームの精神的な中心である長谷部誠の出来は気がかりなところ。クラブではリベロの役割もすっかり板についており、ワールドカップでも当然押し込まれる時間が長くなるはずで、長谷部はリベロ(またはフォアリベロ)として守備に貢献しながら、試合の流れをコントロールするプレーに期待が集まる。これまでは、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の強権的な姿勢と選手との間を取り持つ、ピッチ外でのキャプテンとしての役割に勢力を注いだろうが、監督も日本人に変わったことで、長谷部にはピッチ上でのプレーに全力を削いでもらいたい。
最も人材がそろっており、それだけに激戦区となっているのがサイドアタッカーだ。 「MF」に含まれている選手、「FW」に分類されている選手がいるが、乾貴士、香川真司、原口元気、宇佐美隆史、岡崎慎司、武藤喜紀、浅野拓磨あたりの当落線上の選手たちがアタッカーだ。
香川や岡崎は実績は十分のベテランだが、ともに長く戦列を離れていただけにどこまでコンディション的に上がってきているのかの見極めが重要だ。もし、コンディション面での不安がなければ、その経験値を生かすためにも23人枠には入れておきたいが、逆にコンディションが悪ければ、香川や岡崎であってもはずされてしまうだろう。
27名のリストを見ると「FW」が4人だけ記載されている。サイドアタッカーなら、MF登録の選手たちの多くがもこなせる選手であるが、CF候補は本当に限られている。まず、この日本代表で長くCFをこなしていた大迫勇也であり、またプレミアリーグで実績を残してきた岡崎。そして、強靭なフィジカルを生かす本田圭佑もセンターFWとして起用できる。
いよいよ千葉県内で始まった最終段階の合宿。この合宿とガーナ戦でそれぞれのポジション毎に競争が始まる。大きな問題さえなければ当選確実と思われるのは12、13人程度。残りの枠は、各ポジション内での競争にかけられる。最も重視すべきはまさにコンディション。残り僅かの日数で間違いなく上げていけるのがコンディションだ。少なくとも、コンディショニングだけに関して言えば、日本人選手の身体的な特性を把握している日本人スタッフで行うべきだ。
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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