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サッカー フットサル コラム 2018年5月21日

勝負を決めたのはエデン・アザール!チェルシーが昨季プレミア王者の意地見せ、FAカップ制覇

元川悦子コラム by 元川 悦子
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イングランドの17-18シーズン最後を飾るFAカップ決勝が19日、ウェンブリー・スタジアムで行われ、チェルシーがマンチェスター・ユナイテッドを1-0で下して、今季ラストタイトルを獲得。昨季プレミアリーグ王者の意地とプライドを最後に示した。

プレミアリーグを5位で終わり、来季UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)出場権を逃したチェルシーにとって、このFAカップファイナルはクラブの名誉に賭けても獲りたいタイトルだった。「FAカップで優勝しても今季限りで解任されるのではないか」という噂が出ていたアントニオ・コンテ監督だが、この日も3-5-1-1の布陣を採用。

今季積み上げてきた守備的なスタイルを貫き、なりふり構わず勝ちに行った。もちろんカギを握るのは、セスク・ファブレガス、エンゴロ・カンテ、ティエムエ・バカコヨの3ボランチ。「コンテシステム」の象徴的存在と言ってもいい彼らが的確にバランスを取りながら、攻守両面で連動できれば、チーム全体が安定感あるサッカーを見せられる。それをこのビッグマッチで証明したかった。

先手を取ったのはチェルシーの方。前半21分にセスク・ファブレガスの巧みなロングパスにエデン・アザールが反応。見事なファーストタッチでマークについていたDFフィル・ジョーンズの前にスッと出て、ペナルティエリア内でファウルを誘った。そして自らPKを蹴り込んで先制ゴールをゲット。大舞台で大仕事をやってのけたのだ。

シーズン途中からアルバロ・モラタが足踏み状態に陥ったため、1月末に加入したオリヴィエ・ジルーとタテ関係の2トップを形成する機会が増えたアザールだが、どちらと組んでもなかなかゴールを決められずに苦しんだ。今季のチェルシーはプレミアリーグ総得点62とビッグ6ワーストにとどまったが、モラタが11点、アザールが7点という数字がその大きな要因になっている。シーズン終盤も、主要な得点源になっていたのは最終ラインのセサル・アスピリクエタやアウトサイドのビククター・モーゼスら。リスタートによる得点も少なくなかった。

こうした状況では、今季32ゴールを挙げて得点王に輝いたモハメド・サラー擁するリバプール、30ゴールで得点ランク2位につけたハリー・ケイン擁するトッテナムらに比べるとどうしても厳しいものがある。こうした苦境が続いたからこそ、FAカップファイナルという大舞台でアザールが値千金の先制点を奪ってくれたことは、コンテ監督にとっても、チーム全体にとっても大きかったはずだ。

そこからのチェルシーは持ち前の堅守を前面に押し出し、相手の猛攻に耐え続けた。全体にラインが下がりすぎてしまい、相手のマーカス・ラッシュフォードやアレクシス・サンチェスに決定機を作られることもあったが、名守護神のティボ・クルトワの好セーブに救われる。マンチェスターUのジョゼ・モウリーニョ監督は後半に入ってからベンチに置いていたロメル・ルカクやアントニー・マルシアル、ファン・マタといった切り札を次々と投入。何とか1点を奪おうと躍起になったが、一度守りに入ったチェルシーは硬い。コンテシステムの象徴である3ボランチも最後までハードワークを続け、強固な守備ブロックの構築に貢献していた。そのままタイムアップの笛。チェルシーはついに今季ラストタイトルを手にし、昨季プレミア王者のプライドを保つことに成功した。

ボール支配率は39%対61%、枠内シュート数は2対10と、数字だけを見れば圧倒的にマンチェスターUが優勢だった。だからこそ、モウリーニョ監督は試合後「今日は我々が勝利に値し、この試合のベストチームだった。1-0になってから本当に彼らはディフェンシブだった」と相手の戦い方を揶揄するような発言をしたのだろう。しかしながら、「どんな内容だろうと頂点に立てばいい」とイタリア人のコンテ監督は割り切っていたはずだ。結果的にマンチェスターUは今季無冠に終わってしまった。これまで指揮を執ったクラブで就任2年目は大きな成功を収めてきたモウリーニョ監督にとって、この結末は悪夢というしかなかっただろう。

これで今季イングランドの全日程が終了。マンチェスター・シティがプレミアとリーグカップの2冠を勝ち取り、チェルシーが1つのタイトルを手にする結果に終わった。リバプールはUCL決勝が残っているため、まだタイトルの可能性があるが、無冠に終わったマンチェスターUやトッテナム、アーセナルにとっては不本意なシーズンに他ならなかった。

すでにアーセナルは指揮官交代に踏み切ることが決まっているが、他のクラブはいかにしてチームを立て直すのか。現体制で行くにしてもさまざまなテコ入れが求められてくる。まずは今季の収穫と課題をしっかりと検証し、来季につなげることが肝要だ。ワールドカップ出場メンバー以外はまずしっかりとしたオフを取るところから始めてほしい。

代替画像

元川 悦子

もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

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