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5月14日に2018年ロシアワールドカップの予備登録が締め切られ、各国のメンバーが続々と発表されている。 注目のイングランドも16日に23人のリストが明らかにされ、常連メンバーだったGKジョー・ハート(ウエストハム)とジャック・ウィルシャー(アーセナル)が落選。19歳のトレント・アレクサンダー・アーノルド(リバプール)が初選出されるサプライズがあった。
イングランドは2006年ドイツワールドカップの際に17歳のテオ・ヴォルコット(エバートン)を抜擢し、2014年ブラジルワールドカップでも18歳だったルーク・ショー(マンチェスターU)を選んでいて、若手のメンバー入りに積極的。今回のアーノルドはその系譜を継ぐ選手ということになるのだろう。
クラブ別に見ると、最多の5人がトッテナム。ハリー・ケイン、デレ・アリ、エリック・ダイアー、キーラン・トリッピアー、ダニー・ローズという顔ぶれで、いずれもガレス・サウスゲート監督率いるチームの中核を担う選手たちだ。 現在のイングランド代表は3-4-2-1、あるいは3-2-4-1の布陣を採ることが多いが、トリッピアーとローズは不動の両アウトサイドに君臨。ダイヤーもダブルボランチかアンカーとしてほぼコンスタントに試合に出ていて、重要性は文句なしに高い。
アリの入る2列目は、ジェシー・リンガードやマーカス・ラッシュフォード(ともにマンチェスターU)らプレミアリーグで活躍するタレントがひしめく激戦区だが、指揮官はアリの能力を高く買っている様子。ケインや両サイドとの関係性を踏まえても、欠かせないアタッカーと言っていい。本番ではファーストチョイスになりそうな雲行きだ。
そして、キャプテンマークを巻くケインの重要性は言うまでもない。ケインは1トップでも2トップでも柔軟にプレーできる万能型FW。2トップの場合はジェイミー・ヴァーディー(レスター)やダニー・ヴェルベック(アーセナル)らとコンビを組む可能性が高いため、彼が引いてお膳立てに関与する機会も増えるかもしれない。役割は状況次第で微妙に変化するだろうが、ケインのハイレベルな決定力は今のイングランドに必要不可欠だ。今季プレミアリーグでは大ブレイクしたモハメド・サラー(リバプール)のシーズン通算32ゴールには及ばなかったが、キャリアハイの30得点を奪い、点取屋としての自信を深めているに違いない。
イングランドはご存じの通り、自国開催だった1966年ワールドカップで頂点に立った後、50年以上もタイトルから遠ざかっている。98年フランスワールドカップ以降を見ても、98年がベスト16、2002年日韓・2006年ドイツがベスト8、2010年南アフリカがベスト16、前回2014年ブラジルでは1次リーグ敗退と不本意な成績が続いている。その大きな要因が絶対的点取屋の不在だった。
若かりし日のデビッド・ベッカムがアルゼンチンの狡猾なMFディエゴ・シメオネ(アトレチコ・マドリード監督)の挑発に耐え切れず、肘打ちして退場を食らったことで知られる98年は、18歳のマイケル・オーウェンが一世を風靡したが、ワンダーボーイはケガに悩まされてコンスタントな活躍はできなかった。2002年日韓大会はDF陣や中盤のタレント力に比べると、エミール・ヘスキーやオーウェン、テディ・シェリンガムといったFW陣はややパンチ力に欠ける嫌いがあった。2006年ドイツ以降はウェイン・ルーニー(エバートン)への依存度が圧倒的に高かったが、怪物FWもワールドカップでは本領を発揮しきれたとは言い難い。
だからこそ、ケインに対する期待の大きさは凄まじいものがある。2015年3月の2016年欧州選手権予選・リトアニア戦で初キャップを飾ってから、まだ20試合超とキャップ数自体も少ないが、ゴールは早くも12点を奪っている。代表通算53ゴールのルーニー、40ゴールのオーウェンはまだまだ先ではあるが、24歳という年齢を考えると、彼らの数字に追いつき、追い越すことは十分可能だろう。そのためにも、彼は今回のロシアワールドカップで力強い一歩を踏み出し、母国を勝利へと導く必要がある。
イングランドの入ったG組のライバルはベルギーだけで、1次リーグ突破はほぼ確実。問題はどこまで上位に進出できるかだ。勝ち上がりによっては優勝候補筆頭のドイツ、ブラジルと早い段階で当たる可能性もあるだけに、ケインがしっかりとチームをけん引しつつ、自らの調子も上げていく必要がある。
いずれにせよ、トッテナム勢が持てる力の全てをしっかりと出すことが、母国の躍進の大きなカギになるのは間違いない。今季プレミアリーグでは3位と優勝できなかった悔しさをロシアの大舞台にぶつけてほしいものだ。
元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。
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