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日本代表チームがベルギーに遠征したインターナショナルマッチ・ウィーク。日本はマリとウクライナという、ともにワールドカップ出場を逃した両国相手に1分1敗の成績。もちろん、今の段階での「結果」は重要ではないが、2試合とも内容があまりにもお粗末で3か月後のワールドカップで果たして戦えるのか見通しがまったく立たないのが現状だ。
その3月のインターナショナルマッチ・ウィークには世界中でワールドカップを目指す強豪が親善試合を繰り広げていた。 日本がワールドカップで対戦するコロンビアはフランス相手に逆転勝ちしたかと思えば、オーストラリアとはスコアレスドロー。ポーランドもナイジェリアに0対1の敗戦。日本戦を想定した韓国との試合でも、終盤、韓国に立て続けに失点して3対2の辛勝に終わった。対戦相手も絶好調ではないということが分かったことが、日本チームにとって唯一ポジティブなことだったようだ(もっとも、ポーランドは新戦力、そして3バックの新システムのテストの試合だったが……)。
さて、この3月のインターナショナルマッチ・ウィークには強豪国同士のハイレベルでエキサイティングな試合も目白押しだった。 前回優勝国であるドイツはともにホームにスペイン、ブラジルを迎えてのテストマッチ。スペインとは1対1の引き分けに終わり、4年前のワールドカップでの1対7の敗戦のリベンジを目指して本気度満載のブラジルには0対1の敗戦。とはいえ、チームの完成度も高いドイツにとっては、新戦力のテストをしながらの試合だったこともあって、「余裕の敗戦」といった雰囲気だった。
とくにドイツ対スペインの試合はレベルが非常に高く、しかも親善試合ということもあってオープンな攻め合いとなり、1年を通じて何度も見られないほどのエンターテインメント性の高い試合だった。 ドイツ相手に戦ったスペイン、ブラジルは強かった。 スペインはドイツとは引き分けといっても終始押し気味に試合を進めており、イニエスタを中心とするバルセロナ的なパス・サッカーを存分に披露。さらに2試合目では「メッシ抜き」とはいえアルゼンチンを相手に6対1で大勝した。
また、ブラジルもあのテクニシャンそろいのチームが攻守の切り替えを早くして前線から激しくプレッシャーをかけるモダンなスタイルを披露。チッチ監督就任以後の充実ぶりを示した。長短のパスのバランスもよく、こちらも完成度はきわめて高い。 どうやら、2018年のロシア・ワールドカップはドイツ、スペイン、ブラジルが優勝争いの中心となりそうだ。これに迫るのは、今回は結果を出せなかったにしてもやはり本番には合わせてくるであろうタレントの宝庫アルゼンチン。そして、こちらも若いタレントが爆発力を秘めるフランスあたりか。 残念ながら、日本とは別世界の話である……。
ところで、アルゼンチンが「メッシ抜き」だったように、3月シリーズで強豪も含めて各国が苦労していたのがCFの不在だった。 CFというのはもちろんゴールを決める非常に重要な役割を担うだけでなく、ポストプレーという形で試合の流れを手繰り寄せる役割もあり、重要なポジションであるのは明白だ。
しかし、アルゼンチンはリオネル・メッシを欠き、ブラジルもネイマール抜きの試合を強いられた。さらに、オランダ、イタリアという「まさかの予選敗退」組と戦ったイングランド代表も、ハリー・ケインを欠いて戦っていた。
そして、イタリアとの試合では、「ケインのいないうちに」ということでジェイミー・ヴァーディーが先制ゴールをたたき込んでいる。ヴァーディーは前からの守備という意味でも活躍し、ケインとのポジション争いもこれからさらに激化していくことだろう。 負傷でメッシ、ネイマールという得点源を欠いたのがアルゼンチンとブラジルの南米2強だとすれば、ヨーロッパの2強であるドイツとスペインには、もともとストライカー・タイプの選手が不在だ。
ドイツはマリオ・ゴメスやティモ・ヴェルナーあたりがトップを張るが、本格的なワールドクラスのストライカーとは言えない。スペインもロドリゴやジエゴ・コスタがそこそこのプレーを見せていたが、全体のレベルに比べるとストライカーがややウィークポイントに思えてくる。
チーム力としては世界最強と思える戦力を誇るドイツとスペインはCFを欠き、一方で優勝を狙うにはまだ戦力が足りないイングランドにはケインとヴァーディーという本格的な(左右両足、ヘディングのどこからでも点が取れ、またポストプレーもうまい)CFがおり、またポーランドにもロベルト・レバンドフスキという古典的なCFがいる。
つまり、こうしたワールドクラスのストライカーがその試合で大当たりすれば、たとえばイングランドやポーランドがドイツなどの3強を破ることも可能となるのだ。 一方で、南米の2強に目を転じると、アルゼンチンは現状ではゴンサロ・イグアインがファーストチョイスだが、まさにCFの宝庫。そこに、シャドー的なポジションで絶対の得点力を誇るリオネル・メッシがからむのだ。攻撃が好調であれば、当然、優勝も狙えるだろう。
そして、ネイマールが不在であっても攻撃でコマ不足と感じさせないブラジル。3月のテストマッチではガブリエウ・ジェズスをセンターにドウグラス・コスタ、ウィリアンの3人を前線に並べ、そこに2列目からパウリーニョやフェリペ・コウチーニョが飛び出してくるので攻撃の迫力満点。ネイマールが復帰したら、いったい誰をはずすのだろうかと心配になるほどの充実ぶりだ。 CFというポジションに注目して強豪国を比べてみたが、同様にたとえばGKの戦力比較という観点で各国を比べることもできるだろう。
3月の親善試合を見る限り、今年のワールドカップはいつになくハイレベルの戦いになりそうだ。しかも、ヨーロッパ諸国からは移動距離も短く、コンディション調整も難しくない。 まあ、3か月も先のことがばかリ考えていてもしかたなかろう。その前に、まずは国内リーグとチャンピオンズリーグというクラブレベルの激しい戦いが待っている。
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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