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VAR判定によるPKで、イングランド代表の連続無失点記録は624分でストップした。非常に微妙なシーンであり、PKを与えたジェイムズ・タルコフスキにすれば納得できないだろうが、世界基準のフットボールには数多くの罠が張り巡らされている。代表デビューとなったCBにすれば、貴重なレッスンといって差し支えない。ジェイムズ・ヴァーディーの先制点を守り切れなかったイングランドは、イタリアとの親善試合を1-1で引き分けた。
ただ、しっかり守ってカウンターというガレス・サウスゲイト監督の基本戦略は、確実に浸透している。イタリアが統一感に欠けていたとはいえ、許した決定機はわずか二度。試合開始早々に3バックの裏をあっさりつかれたシーンと、3分にジョン・ストーンズが深い位置でボールロストしたときだけだ。アウトサイドのアシュリー・ヤングとキーラン・トリッピアーがリスクを冒さず、中盤センターのエリック・ダイアー、アレックス・オクスレイド=チェンバレンも守りに重点を置いたスタイルで、無難な試合運びを心がけていた。
おそらく、ロシア・ワールドカップでも基本戦略に変更はない。とくに中盤センターは守備力、運動量が最終選考でも大きなウェートを占め、イタリア戦で先発したダイアー、オクスレイド=チェンバレン、さらにジョーダン・ヘンダーソンが主力に名を連ねる公算が大きい。創造性豊かなジャック・ウィルシャーはオプションとして絶対に必要だが、基本戦略に沿ったタイプではない。
さて、マンチェスター・シティに所属する2選手が、今シーズンの好調を代表にも持ち込んだ。ラヒーム・スターリングのスピードは攻撃にリズムをもたらし、本来のアウトサイドではなく右CBに起用されたカイル・ウォーカーも、対人動作、ボールコントロール、ポジショニング、キックの精度などで違いを見せつけている。両選手がサウスゲイト監督の構想内であることは明らかだ。スターリングはイタリア戦のような2ストップ、もしくは2シャドーの一角での起用が有力視され、ウォーカーはDF陣の中心として確かな信頼を得た。
ロシア・ワールドカップ開幕まで約二か月半という時間を踏まえると、3月下旬の親善試合(イタリア戦、オランダ戦)に招集された24名に加え、負傷で回避したハリー・ケイン、フィル・ジョーンズ、ウィルシャーなどがサウスゲイト監督のレーダーに捉えられている、と判断していいだろう。そしてスターリングとウォーカーが示したように、あくまでも今シーズンのパフォーマンスを選考基準とし、過去の実績や知名度は度外視すべきだ。
ジョー・ハート、ガリー・ケイヒル、ジャメイン・デフォー……。彼らの貢献は尊敬に値するものの、イングランドの戦力にはもはやなれない。
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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