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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引き込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。 「栗村修の"輪"生相談」では、日頃のライドのお悩みからトレーニング方法、メンタル面の相談など、サイクリストからの様々な相談にお答えしております。栗村修に聞いてみたい、相談してみたいことを募集中。相談の投稿はこちらから。

2024年05月01日

【輪生相談】喫煙がロードレースなどの持久系のスポーツには適さないことは十分に理解しているのですがやめられません。ロードレースの選手に、喫煙者はいないのでしょうか

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私は喫煙者です。喫煙がロードレースなどの持久系のスポーツには適さないことは十分に理解しているのですが、社会人のストレスもあり、やめることはできません。ロードレースの選手は、やはり、喫煙者などは皆無なのでしょうか。Wikipediaなどを見るとエディメルクスはヘビースモーカーだという情報もあるのですが。喫煙とロードレース選手の相性について栗村さんなりの回答を頂けると幸いです。

(男性 会社員)

■栗村さんからの回答

栗村さん

喫煙とロードレース選手との相性ですが、言うまでもなく最悪です。そもそも、喫煙は非常に有害です。近年はタバコの害について研究が進み、たとえ一日一本でも心筋梗塞や脳卒中のリスクが大幅に上がることがわかってしまっているので、残念ですが、よいところはまったくないと言わざるを得ません。スポーツに与える悪影響に限っても、一般的に、筋力や瞬発力、持久力がいずれも低下すると言われています。

28516171_l.jpg喫煙とロードレース選手との相性は最悪だ

とはいえ、お酒もそうですが、有害なものの影響には個人差があります。特にアスリートは身体が強い傾向がありますから、少なくとも若いうちは、一般の人より害が表面化しにくいことはあるかもしれません。悪影響があったとしても、それ以上にライバルとの力の差があれば、喫煙&飲酒していてもレースで勝つことは可能なわけですからね。

お酒についての話が続きますが、ぶっちゃけ、僕らの世代ではガバガバ飲む選手はいました。「酒に弱いようじゃ強くなれないぞ」的な、昭和な価値観が残っていたせいかもしれません。ステージレースの深夜まで飲んでいて、そのまま翌ステージを制した海外トップスプリンターの武勇伝なんかは耳に入ってきたものです。もちろん今は過度な飲酒は否定されていますが。

ではタバコはどうだったかというと、僕らの世代でさえ、表立って吸っていた選手はゼロでした。隠れて吸っていた選手がいないとは断言できませんが、少なくとも「タバコはあり得ない」という価値観はすでに確立していました。酒に強いのはなんとなくかっこいいけど、タバコ吸ってる奴はさすがにヤバいといった感じです。

それでも昔はちょっとワルぶりたい選手がカメラの前でタバコをふかしたりすることがありましたが、あれも「タバコを吸うなんて論外」という前提があるからですよね。不良中学生がイキがって吸えもしないタバコをくわえるのと同じです。遅れてきた中二病という感じでしょうか。

ただ、ストレスの多いレーススタッフでは喫煙者はそれなりにいました。ヨーロッパは喫煙が文化になってしまっているので、選手でなければ吸う動機がそれなりにあったんですね。ですが、それでも選手が副流煙を吸わないよう、細心の注意を払っていました。そのくらい、昔からタバコはNGだったんです。

質問者さんご自身に話を戻すと、「社会人のストレスもありやめることはできません」という部分が難しいところです。しかし、タバコやお酒のストレス解消効果については、摂取した瞬間はストレスが解消するように感じても、長期的にはニコチン依存やアルコール依存に繋がっていくので、時間が経つほどストレスは増加していってしまいます。

質問者さんはきっと心の中で「禁煙しなくては」と思って質問してくださったのだと思うので、改めて禁煙で得られるメリットを挙げておきますね。まず、ニコチン切れによる禁断症状がなくなりむしろストレスが減り、肩身の狭い思いから解放されます。また、ゴハンが美味しくなりますし、タバコ代が減って自転車部品を買えるようになります。また、健康になりパフォーマンスも上がるでしょう。

というわけで、質問者さんの望む回答でなければ恐縮ですが、ロードレース選手にとっての喫煙は昔から論外で、パフォーマンスを科学的に管理する今はますます論外だろうということになります。社会のタバコへの価値観も変わっていますし......。

たしかに僕らサラリーマンにとってストレス解消策は大事ですが、実際のメリット・デメリットを見極めて、できるだけ失うものが少ないやり方を見つけたいですね。

文:栗村 修・佐藤 喬

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