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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引き込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
「栗村修の"輪"生相談」では、日頃のライドのお悩みからトレーニング方法、メンタル面の相談など、サイクリストからの様々な相談にお答えしております。栗村修に聞いてみたい、相談してみたいことを募集中。相談の投稿はこちらから。
【輪生相談】栃木県での世界自転車選手権大会開催の可能性について教えて下さい
現在66歳です。今から33年前に栃木県で世界自転車選手権大会が行われました。その時はNHKBSで男子ロードを観戦し感動しました。それから早33年が経過した今、次の開催の便りがいつになっても届きません。やはり誘致資金の問題でしょうか?10万人のサイクリストからクラウドファンディング上で各1万円集めれば10億。これに国、開催自治体、JKA、協賛者から50億ぐらいあれば可能では。とにかくこのままでは死んでも死にきれません。開催の可能性について教えて下さい。
(男性 その他)
■栗村さんからの回答
開催の可能性は、実は十分にあります。ただし条件はいくつかあり、その中で一番大きいのがおっしゃる通り「お金を集められるか?」どうかです。
昨年世界選手権で優勝したレムコ・エヴェネプール
UCIもある意味で商売ですから、「世界戦、やりませんか?」と世界中で営業をかけています。そこで、十分な予算を用意して手を上げる自治体があれば、世界戦が開催される可能性は非常に高いでしょう。誘致の難しさや必要な費用は、サッカーワールドカップやオリンピックなどに比べればだいぶ小さいはずです。
質問者さんのおっしゃる通り、1990年に栃木県でアジア初の世界戦が行われたわけですが、バブルの頂点付近だった当時の日本は今よりも景気がよく、競輪の売り上げも1991年がピークで2兆円の手前まで伸びていました。だから世界戦を呼べたのです。
しかしその後、競輪の売り上げはおよそ6000億円まで減少し、今は底を打って1兆円まで回復したものの、90年代の水準には遠く及びません。今なお競輪界のお金が重要であることは言うまでもありませんが、それだけではとてもまかなえないので、インバウンド関連予算など、国や地域の観光促進に繋がる公的予算を上手く引き入れる必要があります。
で、いくらかかるの? というご質問が来そうですが、細かな金額までは僕も把握できていません。しかし、実は2026年の世界戦の開催が決まっているカナダ、ケベック州のモントリオールが推定経済効果を公表しているんですね。その資料を見ると、ケベック州の推定経済効果は1億7,000万ドル以上で、カナダ全体では2億1,000万ドル以上であろうと書かれています。
当然、黒字が見込めるから開催するわけですから、開催に必要な費用はこれらの数字を大きく下回る金額になります。開催場所やコースの規模などによりますが、日本円にすると、ロードレースのみの開催費用は15億円~30億円といったところでしょうか(全種目を同時開催する「スーパー世界選手権」だと倍くらいか)。このくらいの金額を集められれば、世界戦の開催は現実的になります。ちなみにサッカーワールドカップは通常3兆円ほどかかるといわれています(カタール大会は約30兆円かかったらしいですが......)。
観戦料がないサイクルロードレースは、短期的なマネタイズは難しいのですが、まさに今、フランスがツール・ド・フランスによって国土の魅力を世界中にアピールしているように、インバウンドとの結びつきが非常に強い競技でもあります。
そして幸い、今の日本はインバウンドにとても力を入れている国でもあります。さらに、スポーツ自転車の存在が周知されるにつれ、世界戦はともかく、サイクルロードレースを開催したいという自治体は増えています。自転車がインバウンドにつながることは周知されつつあると言っていいでしょう。
競輪マネーだけに頼るのは難しいのですが、それ以外のお金という観点では、実はけっこう悪くない状況ではあります。もちろん億単位の大金を集めるのは大変なのですが、タイミングがかみ合えば、66歳の質問者さんがもう一度、日本で世界戦を見られる可能性は十分にあると思いますよ。
文:栗村 修・佐藤 喬