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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引き込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。 「栗村修の"輪"生相談」では、日頃のライドのお悩みからトレーニング方法、メンタル面の相談など、サイクリストからの様々な相談にお答えしております。栗村修に聞いてみたい、相談してみたいことを募集中。相談の投稿はこちらから。

2023年06月21日

【輪生相談】中高年の心臓への負担はいかがなものでしょうか?

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はじめまして。いつもお世話になっております。私は2012年のツールをきっかけにロードレースにハマり、ロードバイクを始めて今年の9月で3年となります。理論的にペダリングを考えて試行錯誤をすることが最も楽しく感じております。近くに平坦でほぼノンストップで走れる15kmの道があるので、そこを往復30km、35km/h巡航することが目標です。ただ心配なことがあります。それは、私は今年50歳になる年齢ということです。健康診断で悪いところは無いのですが、心拍を185まで上げることは、私の年齢の心臓に対して負担が大きいのではないか? 弊害が生まれるのでは無いか?と冷や冷やしております。それでもペダルを回して風を切って走ることが楽しくてたまらないので抑えることが出来ません。実際、中高年の心臓への負担はいかがなものでしょうか? 抑えるべきでしょうか?

(男性 会社員)

■栗村さんからの回答

栗村さん

いつも申し上げることですが、僕は医療の専門家ではないので、健康問題についてはっきりした知見を基にアドバイスすることができません。が、自転車の専門家ではありますから、今回は、「サイクリストにおける50歳の壁」ということでお答えしましょう。というのも、僕がまさにその年齢だからですね。

20210714TDF1021-A.S.O.jpg年を重ねてもレースで活躍し続けるマーク・カヴェンディッシュ(現在38歳)

40代後半のころ、周囲の先輩方からよく「50歳になると一気に『来る』ぞ」と脅されたんですが、僕はあまり信じていませんでした。というのも、30代でも似たようなことを言われたわけですが、特に何も来なかったからですね。

ところが、そいつはやってきました。明らかに、ガタガタと身体に変化が生じたんです。それはちょっとしたことの積み重ねです。

ある時、億劫がってスマホを持ったまま片手で充電コードを抜こうとしたら、指の腱に激痛が走り、三週間くらい回復しませんでした。筋違えみたいなものなのでしょうか。また別のある時など、寝起きにベッドから降りる時に股関節を傷めたりと、とにかく昔は平気だった動きでどこかを痛める機会が増えてきました。

もちろん個人差はあるでしょう。僕は元プロアスリートですが、今は特にトレーニングをしているわけではないですから、現役(アマチュア)アスリートの方とは違うかもしれません。ただ、僕の周囲でも、50歳の壁を感じている人が多いのは事実ではあります。50歳には悪魔が潜んでいるのでしょうか。

ただ、年齢にあった動きや無理を徐々に習得しはじめた現在は、日々の生活でどこかを痛めるといった現象はだいぶ収まってきています。おのれを知り、動きをアジャストすることが重要になるのかもしれません。

さて、質問者さんは心拍数を問題にされていて、たしかにそこは気にすべきではあるのですが、重要なのは、年齢による衰えは心臓だけの問題ではない点ですよね。上記で説明した様に、全身の筋肉や神経系など、さまざまな面で能力が落ちているはずです。ですから、心拍数だけではなく、あらゆる点で無理をせず、おのれを知って現状にアジャストしていくことが、生涯スポーツとして自転車を楽しむコツではないでしょうか。

僕もたまにロードバイクやシクロクロスバイクに乗るのですが、やはりサドルにまたがると昔の血が騒ぎ、すぐに限界まで踏んでしまいます。だから自戒を込めたコメントなのですが、無理は禁物です。

とはいえ、何歳であろうと有酸素運動が心身の健康に貢献するのは間違いなく、医療の専門家もあちこちで運動を推奨しています。また、むしろ高強度の無酸素運動を取り入れた方が若さを保てるといったデータもあると聞きますが、それでもやはり「急」がつく運動には様々なリスクが付き纏うのは間違いありません。ですので無理をしない範囲でぜひ自転車に乗り続けてほしいのです。特にロードバイクの場合に怖いのは、一瞬の「無理」が一生を狂わせてしまうリスクがあることです。事故や落車ですね。

歳を重ねることと落車・事故リスクとの関係について、明確な統計データを見たことはありません。でも、誰でも、人生を歩むにつれいろいろな財産を築き上げてきたはずです。つまり、守るべきものが増えるんですよね。

その意味でも無理はしないでください。質問者さんの心身は、質問者さんだけのものではありませんから。

文:栗村 修・佐藤 喬

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