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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引き込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。 「栗村修の"輪"生相談」では、日頃のライドのお悩みからトレーニング方法、メンタル面の相談など、サイクリストからの様々な相談にお答えしております。栗村修に聞いてみたい、相談してみたいことを募集中。相談の投稿はこちらから。

2023年02月15日

【輪生相談】ロードバイクに乗っている方はかなり命がけのレースに出ているのに、賞金が少ないのは何故なのでしょうか

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栗村さんこんにちは。最近、動画サイトのLIVEなどでロードレースを見るようになったのですが、表彰式まで見ていて思うことがあります。ロードバイクに乗っている方はかなり命がけのレースに出ているのに、賞金が少ないのは何故なのでしょうか。怪我や事故の話なども聞きますので、とても少ないように思えます。ぜひ栗村さんの考えを教えてください。

(会社員 女性)

■栗村さんからの回答

栗村さん

サイクルロードレースの賞金の低さは定期的に話題になりますね。それはそれで問題ではあるのですが、まず、賞金の位置づけについて確認しましょうか。

実は、選手の収入に対して賞金が占めるウェイトは、スポーツによってかなり差があります。サイクルロードレースに関しては、賞金のウェイトはさほど大きくはありません。でも、同じ自転車競技でも、競輪選手は収入の大半が賞金です。

さらに書くと、同じサイクルロードレースの選手でも、選手のレベルによって賞金の占めるウェイトは変わります。選手の収入を分類すると、

(1)年俸(チームとの契約金)
(2)賞金
(3)各種出演料(クリテリウムなどの出走ギャラ含む)
(4)個人スポンサー契約金

などです。


命懸けでツール・ド・フランスに挑むトップ選手たち

ロードレースのトップ選手だと、収入に占めるウェイトの大きさは順番に、(1)→(4)→(3)→(2)となる感じでしょうか。つまり、賞金は一番ウェイトが小さいんです。しかし、若手やアシストの選手なら、(1)→(2)→(3)→(4)という並びになると思います。チームとの契約金がもっとも大きいのはトップ選手と一緒ですが、各種出演料や個人スポンサー契約金があまり入らないので、相対的に、賞金の存在感が増すというわけです。尚、弱小チームの中には賞金が最も大きなウェイトを占めている「賞金稼ぎ」的な選手もいます。

長くなりましたが、選手は賞金だけで暮らしているわけではないという点は知っておく価値があります。その上で申し上げますが、賞金を含めた、サイクルロードレースの選手の収入は、労働の重さやケガなどのリスクを考えると、たしかに高くはないかもしれません。トップレベルであれば総年収で10億円ほど稼いでいる選手もいますが、そうではない選手たちはどちらかというと薄給で短命なイメージです。まあ、どのプロスポーツも似たような構造ではありますが......。

この点は日本に限らず本場でも問題視されており、昨年末にも、UCIが2026年から新たなロードレースリーグの創設を検討しているというニュースが入ってきました。「UCIロードチャンピオンズリーグ構想(仮称)」です。内容は、ツール・ド・フランスの存在感に依存する現状の改善、テレビ放映権を管理する新会社設立、レース日程の重複改善、レースの安全性向上などが挙げられており、全体としては、選手たちが正当な対価を得られるビジネスモデル作りに重点が置かれています。

個人的にはやはり、定期的に入ってくる選手たちの事故死のニュースに対して、業界がもっと危機感を持つべきだと強く感じますね。これだけ頻繁に事故のニュースが入ってくるのに、相変わらず自転車やウェアなどに安全装置を取り付ける取り組みは置き去りになったままです。空気抵抗を削減し、軽く、速く走ることばかりが追求されていますが、乗員の命を守ることにももっとお金とテクノロジーを使うべきです。

話が逸れましたが、時に命を落とすこともあるサイクルロードレースの選手が十分な報酬を得られていない、という質問者さんの疑問は、世界的に見てももっともなんです。改善に向けた試みが、国内外で続いています。

文:栗村 修・佐藤 喬

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