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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引き込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。 「栗村修の"輪"生相談」では、日頃のライドのお悩みからトレーニング方法、メンタル面の相談など、サイクリストからの様々な相談にお答えしております。栗村修に聞いてみたい、相談してみたいことを募集中。相談の投稿はこちらから。

2022年05月11日

【輪生相談】ロードバイクが速くなるためにランニングをすることは間違っていますか?

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ロードバイクが速くなるためにランニングをすることは間違っていますか?

(学生 男性)

栗村さんからの回答

栗村さん

結論からお伝えすると、質問者さんが運動をあまりしていない方であれば、ランニングをはじめることで身体能力が上がり、その結果、ロードバイクも速くなる可能性はあります。一方、ある程度ロードバイクに乗っている人がトレーニングの一環としてランニングをはじめたとしても、それがただちにロードバイクの速さに繋がることはないでしょう。

しかし、長期的に見ると答えは変わってくるかもしれません。どういうことでしょうか。

僕が現役選手のころは、「自転車選手は歩くべきではない。特にシーズン中は」というのが常識でした。歩いたり立っていたりすると余計な筋肉をつかって疲れてしまう、という理屈だったと思います。

僕も雑誌で、80~90年代の名選手であるクラウディオ・キアプッチがエスカレーターでわざわざ座る(!)写真を見たことがあります。今ではそこまでやる選手はほとんどいないと思いますが、あの時代はそれが正しいと信じられていたんですね。

しかし時代は変わりました。2年連続で世界ランキングのトップの座を射止めたプリモシュ・ログリッチなどは、レース当日の朝にジョギングをしたりしています。ほかにもステージレースの最中にウォーキングを取り入れている選手がいるとも聞きます。

正直、キアプッチとログリッチのどちらが正しいかは、すぐには判断できません。ロードレーサーは走ったり歩いたりしないほうがいいのかもしれないし、そうではないのかもしれない。

正解は人によって違うでしょうし、また、状況によっても答えは変わってくるでしょう。翌日の個人タイムトライアルのための判断なのか、それともシーズン全体を見渡したボディメンテナンスなのかでも答えは変わってきそうです。

このようにトレーニングの常識が時代と共に変わり続けているのはまぎれもない事実ですが、僕個人の考えは、「ランニングはアリ」というほうに傾いています。

ジョギングしてからレースに臨むこともあるログリッチ

「歩くべきではない」「歩いて(走って)OK」という二つの理論は矛盾しているように見えますが、時間軸のとりかたによっては、どちらも正解である可能性があるとも思っています。どういうことかというと、ごく短期的には歩くのは避けるべきだけれど、長期的には歩いたり走ったりはロードレーサーとしてもプラス、ということです。

身体をロードバイクに究極的に特化させるなら、走るのはもちろん、エスカレーターの上でも座ったほうがいいのかもしれません。だから、レーススタートの1時間前にランニングをするのはあまりお勧めできません。ローラー台でペダルをまわしながら身体を温めたほうがいいと思います(普段から走っているトライアスロン経験者などはランでウォームアップしたりもしますが)。

しかし長期的に見ると話は変わってきます。僕たち人間の身体はロードバイクに乗るためではなく、歩いたり走ったりするために進化してきたことは間違いありません。1万年前のサバンナに自転車はありませんでしたから。

だから、身体全体のバランスを維持するためには、ある程度歩いたり走ったりすることも必要なのではないかというのが、現時点での僕の推測です。短期的視野で「自転車への特化」にこだわり過ぎた結果、身体全体のバランスが崩れ、故障したり、力が入らなくなってしまったというケースは少なくありません。ランニングを取り入れるロードレーサーの増加は、そのことを示唆しているのではないでしょうか。

文:栗村 修・佐藤 喬

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