最近のエントリー
カテゴリー
アーカイブ
このブログについて
【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
11月4日にJCF(日本自転車競技連盟)が東京五輪自転車ロードレース日本代表候補選手を発表しました。
各種目の代表候補選手は以下の通りです。
◯男子ロードレース(参加枠:2名)
新城幸也(36歳/Team Bahrain McLaren)
増田成幸(37歳/宇都宮ブリッツェン)
◯女子ロードレース(参加枠:2名)
與那嶺恵理(29歳/OANDA JAPAN)
金子広美(40歳/イナーメ信濃山形)
◯女子個人タイムトライアル(参加枠:1名)
與那嶺恵理(29歳/OANDA JAPAN)
◯補欠選手
男子:中根英登(30歳/NIPPO DELKO One Provence)
女子:樫木祥子(26歳/株式会社オーエンス)
自転車ロードレースの選手が成熟するにはある程度の時間が必要であることを示すように、代表候補選手の年齢も比較的高めとなっています。
一方、「ツール・ド・フランス」の勝者の平均年齢は28.5歳といわれており、それと比較すると日本代表候補選手たちの年齢はかなり高いともいえます。
近年、世界のトップ選手たちが低年齢化するなかで、日本のトップ選手たちが高齢化しているのはなぜなのでしょうか。
様々な要因があるなかで、最も大きな要素は「ノウハウの蓄積」にあるように感じます。
以下、簡単に考察してみました(今回の代表候補選手個々の話ではなくて全体的な傾向として)。
◯本場のトップ選手たちが若齢化している要因
・トレーニングプログラムの体系化(経験が必要なくなってきている)
・ポジションやフォームの体系化(経験が必要なくなってきている)
・レース戦略及び戦術の体系化(経験が必要なくなってきている)
・スポーツ医学の進歩と体系化(オーバートレーニングや怪我が少なくなってきている)
・ドーピングの排除(裏ネットワークが必要なくなってきている)
・総じてワールドチームの運営が体系化されたため若い選手が短期間で活躍するためのデータやノウハウが組織に蓄積されるようになってきている
◯日本のトップ選手が若齢化しない要因
・トレーニングプログラムが体系化されていないため経験が生きてくる
・ポジションやフォームが体系化されていないため経験が生きてくる
・レース戦略及び戦術を学ぶ機会が少ないので経験が生きてくる
・自転車競技関連のスポーツ医学が発達していないのでオーバーワークや怪我が多い
・本場などで活躍した選手たちのノウハウやデータを体系的に蓄積する器が少ないので若い選手はゼロから手探りで個人的に積み上げていく必要がある
上記を簡単にまとめると、本場では「組織(ワールドチーム)による積み上げ」が進んでいる一方で、日本ではまだ「選手個人や指導者の単発の取り組み」に留まっている感じとなります。
そして、本物のノウハウを持っているのは各国ナショナルチームではなくてUCIワールドチームになるので、「才能のある若い日本人を発掘して早めにワールドチームへ送り込む」ことこそが最も効率的な取り組みといえるのかもしれません。
今後、世界の「UCIワールドチーム」の積み上げはどんどん先へと進んでいくはずなので、小さな資本の日本チームが自助努力だけでそことの距離を縮めていくのは至難の業といえます。
「才能のある日本の若い選手をワールドチームへ送り込む」こと、そして「ノウハウが積み上がっている組織を買収する」ことが現実的な選択肢となってくるのでしょうか。