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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
「クラシックの女王 パリ〜ルーベ」が終了しました
見事優勝を飾ったのは、36歳の大ベテラン、フィリップ・ジルベール(ベルギー/ドゥクーニンク・クイックステップ)でした
ドライコンディションの中、コンピエーニュをスタートしたレースは、スタート直後からハイスピードの展開のまま進み、正面からの向かい風を受けつつ約100kmの間、逃げらしい逃げがなかなか決まらないまま最初の石畳セクターに向かっていきました。
最初の逃げが決まったのは、1つ目の石畳区間「トロワヴィル」直前で9名が飛び出します。
ここに優勝候補のポリッツ(カチューシャ)、ランパールト(ドゥクーニンク)、トレンティン(ミッチェルトン)などが合流して先頭集団が23名に膨れ上がったこともあり、メイン集団は逃げを容認できず、ボーラやスカイなどを中心に追撃を開始して間もなく集団は一つになります。
優勝候補と言われる選手たちが前半から動いたこともあり、レースは主催者が想定する上限スピードのまま大集団で最初の難関アランベールに突入します。
この前半のレース展開が昨年とは大きく異なっていた部分であり、更に「低目の気温」や「向かい風」などが後半のレース展開に影響を及ぼしました。
そして、ジルベールの感動の勝利へと向かっていったわけです...。
改めてレース後半のポイントを挙げてみると以下の3つになります。
◯ルーラー、ポリッツの存在と積極的な走り
◯失うものがないジルベールの先手の走り
◯サガンのハンガーノック
絶対的な優勝候補と圧倒的な支配力を持ったチームが不在だったこともあり、今年は多くのアタッカーたちのモチベーションを最大化させました。
そしてその結果、ミスターアタッカーと言っていい、フィリップ・ジルベールが「夢を叶える」勝利を手にしたのです。
アルデンヌクラシックレーサーだったジルベールがキャリアの終盤で手にした「ロンド(2017年/34歳)」と「パリ〜ルーベ(2019年/36歳)」の勝利。
パリ〜ルーベに関しては、これまでのキャリアのなかで出場したのは2007年(52位)と2018年(15位)の2回のみだったにも関わらず、「パリ〜ルーベ」での勝利を本気で夢見て準備をしてきたジルベールのメンタルにはただただ驚かされます。
「限界をつくってしまうのは自分自身」。しかし、「限界を打ち破るのも自分自身」であることを改めて教えてくれたジルベールの走りに心から感動しました。
今年の「パリ〜ルーベ」は記憶に残る素晴らしいレースだったと思います。