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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
平成29年5月1日に施工された「自転車活用推進法」。
重点施策として挙げられている14項目を軸として、今後、「自転車をつかった国づくり」が本格的に進められていくことになります。
そんな中で改めて感じることというのは、「自転車」という乗り物が持つ守備範囲の広さになります。
・通勤通学の足代わり
・ちょっとした移動手段
・小さなお子さんのいる主婦の方々の重要な移動手段
・配達業務などを行う方の業務用器具
・健康志向の方のエクササイズ用器具
・レースやイベント出場を目指す方のスポーツ用具
・プロ選手たちの業務用器具
・巡回パトロールを行う警察官の業務用器具
・etc
こういった多岐に渡る使用用途を持つ「自転車」という乗り物は、法律上は「軽車両」という位置付けとなっており、使用(運転)にあたっては運転免許は不要なものの、自動車などと同様の交通規則が定められていて、違反をすれば当然取り締まりの対象になるわけです。
私の様に競技者あがりですと、「自転車=スポーツ用具」とみなす傾向があり、特に本場欧州などでの活動経験があると、その傾向はより強まってしまう様に感じます(自転車乗車=トレーニング)。
欧州では多くの国で自転車の並列走行が可能となっており、特にプロ選手やプロチームに対しては一般ドライバーなどもある程度配慮をみせる(追い越せない様な状況でも静かに自転車の後ろで待機している)ことから、「選手が一般道を走る時は若干特別な存在」という意識が自転車側に芽生えてしまうこともあります(良くないことですが...)。
一方で、日本には「歩行者の延長上」という意識で自転車に乗っているひとがかなりの数います。ですので、道交法を殆ど理解していない状態で自転車に乗っている(しかも歩道上を)ひとも少なくないでしょう。
こういった両極端な存在が同じ空間に混在するなか、更に上記の多種多様なジャンルのサイクリスト(敢えて自転車に乗っているひとを一括りにこう表現する)が時に歩行者などとも混ざり合いがら共存を目指しているわけですから、小さな問題がたくさん発生してしまうのも無理ありません。
この様な状況を解決していくためには、かなり広い視野を持った人材や団体の存在が必要になってくるでしょう。
私がみる限り、自転車業界には数多くの団体とそれぞれのスペシャリストが存在しています。
ひとつひとつの取り組みや主張には正当性があるものの、今回の「自転車活用推進法」施工時の様に、一度俯瞰した視点(鳥の目)を要求される状況になると、対応できる団体とひとの数は一気に数を減らしてしまいます。
私が「求む自転車界の経営者(ジェネラリスト)」という表現を連載などで書くようになったのは、たしか30代前半の頃だったと思います。
あれからもう15年ほどの歳月が経ったわけですが、「他のスポーツ界を強力に引っ張っている様なカリスマ」はなかなか出現しません。
「自転車活用推進法」が施工されたことはとてつもないチャンスだと感じています。
推進法実現に尽力された方々のためにも、自転車界がひとつにまとまる良いチャンスなのは間違いありません。