最近のエントリー
カテゴリー
アーカイブ
このブログについて
【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
最近、なにかと話題に挙がる「自転車ロードレース」に於ける「紳士協定」、もしくは「不文律」といわれている項目について改めて考えてみました。
まずは「紳士協定」、「不文律」という言葉について再確認してみると...。
◯紳士協定
いわゆる不文律(暗黙の了解)の一つで、様々な分野におけるルールのうち、公式な手続きなどを経ずに信用ベースで約束を結ぶもの。
◯不文律
公式ルールなどにはなってない規則やしきたり。暗黙の了解、暗黙の掟と表現されることもある。
一方、代表的なスポーツに於ける「不文律」をググってみると...。
◯サッカー(いくつかピックアップ)
・怪我などで相手の選手がピッチ上に倒れているときはボールをピッチ外に出す
・相手がボールをピッチ外に出してくれたときはリスタート時にボールを相手に戻す
◯野球(いくつかピックアップ)
・連続ホームランのあとの初球を打ちに行ってはならない
・大量リード中はカウント「3-0」のストライクを打ちにいってはならずバントや盗塁などもご法度
また、他のスポーツも含めると「不文律」にはまだまだたくさんの種類が存在していると思います。
一方、自転車ロードレースの代表的な不文律はどんなものがあるのでしょうか。
細かいものを含めるとかなりの種類になりますが、その中でも最近よく議論の的になるのはやはり「ライバル選手のアクシデントに付け込まない」という「不文律」があります。
そして、これが「近年崩れはじめているのでは?」というのが一般的な見解となっています。
結局のところ、「不文律」とは「公式ルールなどにはなってない規則やしきたり」なので、その時々の主観によっていくらでも変化する可能性を含んでいます。
ちなみに、上記に挙げた「野球」や「サッカー」のケースであれば、それが適用される状況が「誰であっても明確に判断できる」内容なので、「不文律を守ったか?破ったか?」かの判断が比較的一目瞭然だったりもします。
しかし、「不文律」を破ったかどうかの判断が難しいものであると、「不文律」そのものの意義を議論する前に、当事者が実際にどう考えて判断していたか(不文律を理解した上で意図的に破ったのかどうか)の「憶測」が生まれてしまい、「不文律」というものを評価することがより一層困難になってしまうように感じます。
元々は「美しさ」の象徴だったはずの「不文律」が、近年論争の原因になってしまっていることはとても残念なことでもあります。
世の中全体が「白か黒か」の時代に変わりつつあるなかで、今後、「不文律」というもの自体が淘汰されていってしまうのか、それとも、「人間らしさ」という部分で再フィーチャーされることがあるのかどうか。
個人的には無くなって欲しくない、という想いもありますが、全体の流れをみつつ、その存在に引き続き注目していきたいと思います。