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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
現在、イタリアで開催されている「ジロ・デ・イタリア」の開幕前日に、昨年の「コッパ・イタリア」優勝チームである「バルディアーニCSF」のステファノ・ピラッツィ(イタリア)とニコラ・ルッフォニ(イタリア)の Aサンプルから禁止薬物のGHRPsが検出されたことが発表され、二人は暫定的に出場停止状態となり、チームは7名での出場を余儀なくされています。
ピラッツィは2014年に「ジロ・デ・イタリア」でステージ優勝を飾っているトップ選手で、今回もエースナンバーを付けて100回目の記念大会に挑む予定となっていました。
また、ルッフォニも直前の「ツアー・オブ・クロアチア」でステージ2勝を飾ってポイント賞を獲得している主力スプリンターです。
チーム最年長の総合エースの選手と、チームのエーススプリンターの二人がジロ直前に暫定出場停止状態となったのはまともな状態とはいえず、正直、チームごと出場停止処分とするべきだったのではないかと個人的には感じております。
現在、UCIは「1年以内に同一チームからドーピング違反者が2名以上でた場合はチームに対して一定の出場停止期間を課す」という罰則を設定していますが、これらが発動されるのは二人のドーピング違反が確定し、懲罰委員会で判断が下されたあとになるので、バルディアーニはほぼ確実に処罰されるものの、「今回は処分が間に合わない」ということでチームは「ジロ・デ・イタリア」を悠々と走り続けています。
今年、「ツアー・オブ・ジャパン」でも似たような状況が起こりました。
アジアツアーランキング1位(上位3位までのチームはアジアツアー1及び2クラスのレースには自動招待される)のイランの「ピシュガマンサイクリングチーム」から1年以内に2名のドーピング違反者がでて、結果、彼らに対して30日間の出場停止処分が下されました。
この30日間というのは、「ツアー・オブ・ジャパン」の開催期間とは重なっていなかったものの、我々はUCI規則に書かれている「レース主催者は大会のイメージや利益を損ねる恐れのあるチームや選手を排除できる」という権利を行使し、彼らに対して正式なレター(出場停止処分を受けるチームを我々のレースに出場させることはスポンサーやファンを裏切ることになるので到底容認できないという主張)を送付して、真っ向から「ツアー・オブ・ジャパン」への出場を拒否しました。
一方、アジアツアーランキング2位の同じくイランの「タブリーズ・シャハルダリ・チーム」からもドーピング違反者がでました。
しかし、彼らは1年以内に2名というルールにはギリギリ抵触せず、多くのレースから排除され今シーズンまだ1レースも走っていない「ピシュガマンサイクリングチーム」とは対象的に、すでに多くのレースに出場しています。
しかし、今シーズンの成績をみると明らかに走れておらず、2016年のアジアツアーランキング2位チームの面影は殆どない状況となっています。
実は、彼らに対しても以下の内容のメールを「ツアー・オブ・ジャパン」主催者として送付しました。
「現在、日本国内ではイランチームの選手たちから過去に何度もドーピング違反者がでた事実が問題視されており、我々はピシュガマンチームの出場を全力で拒否し、また、もしタブリーズチームが来日した場合は不当な扱いを受ける可能性があり、我々はそれらをコントロールできる自信がありませんので、出場を辞退することを要請します。」
もしかすると、上記メールが彼らの今年の成績不振の原因の一部になっている可能性があるのかもしれません。
結局のところ、ドーピング違反者がでてもその選手のみを排除するだけでは、所詮トカゲのしっぽ切りであって、このイタチごっこはいつまで経っても終わりません。
我々がイランチームに対して毅然とした態度で挑んだのは、「ツアー・オブ・ジャパン」の価値を守りたいという思いと共に、彼らがもっと正当な評価を受けられる様になって欲しいという思いが含まれているからです。
私自身、このブログに憶測を書くつもりはありませんし、ミスリードをするつもりもありません。
しかし、やはりどこかでハッキリと線を引かなければ、結局は同じことが繰り返されるのは目に見えています。
「ジロ・デ・イタリア」の主催者には、世界最高峰のグランツールだからこそ、我々に対してしっかりとしたお手本をみせて欲しいと強く感じます。