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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。

2016年12月26日

ポイントランキング

しゅ~くり~むら by 栗村 修
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UCIが2017年のポイントランキングシステムの内容を発表しました。

UCIは現在長期的なシステム変更の道半ばにあり、『目指すべき方向』 に沿いながら、現状の問題点などを考慮しつつ、毎年、試行錯誤を続けながら有効なポイントランキングの 『落とし所』 を探っているような状態です。

正直なところ、『自転車ロードレース』 というスポーツに、有効なポイントランキングを当てはめる作業というのは、とてつもなくややこしい作業だと感じています。

実際、毎年 『良かれ』 と思って変更しているはずのポイントランキングシステムに対して、ポジティブな評価の言葉を聞いたことは殆どなく、チームや選手たちからは言いたい放題のやいのやいのの文句が殺到しています...

そして、たまに 『自転車ロードレースというスポーツにはポイントランキングは必要ない』 といった言葉すら聞くことがありますが、しかし、この論を口にする者というのは、完全に 『木を見て森を見ず』 的な発想に陥っており、ポイントランキングシステムが、広義に於いては 『ファン』、『メディア』、そして 『スポンサー』 の獲得に大きく寄与している事実を見逃してしまっているともいえます(ポイントランキングそのものというよりかはそれを含む全体のシステムの構築が現代のプロスポーツには必要不可欠)。

まあ、上記の 『不要論』 は極端な発想だとして、それでも、現在の 『エースとアシスト』、『フォア・ザ・チーム』 という自転車ロードレースを構築している基本構造を考えると、どうしてもポイントランキングがネガティブな方向を生み出してしまう現実もよく理解はできます。

2017年のポイントランキングシステムのなかで最も目立った変更点というのは、『60位まで個人ポイントが付与される』 ようになるという点でしょう。

ちなみに2016年までは、例えば、モニュメント(世界5大クラシックレース)の一つである 『ミラノ~サンレモ』 では10位まで個人ポイントが付与されていました。

この変更を行った理由というのは、恐らく、実力のある一部の有能な選手(特にセカンドエースクラス)の個人ランキングが著しく低かったことなどが考えられます。

しかし、この変更に対して、早速、有力チームの幹部から苦情の声が挙がりました。

その幹部は 『ミラノ~サンレモ』 を例に出し、『これまではチプレッサ(最後から2番目の上り)でエースを守るために全力でアシストした選手たちは、ポッジオ(最後の上り)を上らずに直接チームバスに向かっていた(完走を目指さずにリタイアする)』 と語りました。

実際は完走を目指してフィニッシュする選手も多くいるのでしょうが、それでも、『自転車ロードレースは1位を競い合うスポーツであり、それを狙えない選手が無理に完走しても意味がない』 という伝統的な考え方に立った主張を行ったわけです。

その上で、60位まで個人ポイントが付与されるようになると、本来は仕事を終えているはずのアシスト選手たちがそのままポイントを獲得するために走り続けることになり、大きな負担と混乱、そしてリスクが選手とチームに降り掛かると危惧しているようなのです。

正論だと思う一方で、いつも一点だけ不安を覚えるのは、これらの主張が 『これまでの伝統はすべて正義である』 といった立ち位置から繰り出されているという点です。

『アシスト選手がポッジオを上らずにチームバスへ向かう行為』 というのは、ロードレース界にずっといた私にとっては 『美談』 として解釈することが可能ですが、一方で、他の価値観を持ったスポーツ関係者が聞いた場合、もしかすると、『不平等』、『不真面目』、『八百長』 といった感覚でこの行為を捉えてしまう可能性もゼロではないわけです。

難しい問題ですが、やはり、すべてのステークホルダーが大きな視野を持つことこそが、未来を切り開くためには重要なのだと、再認識した年末の夜でした。

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