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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。

栗村修の日常 2013年08月01日

世界選手権ロード出場枠

しゅ~くり~むら by 栗村 修
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2013年世界選手権ロードの日本の出場枠(エリート男子&U23男子)がゼロになりそうな状況となってきました。

昨年は、現行制度になってから最多となる6名(エリート男子)が出場していたので、近年なかった 『出場者ゼロ』 という数字はそれなりのインパクトを感じます。

最大の被害者といえば、やはりハマれば上位を狙えるだけの実力を持つ新城選手(Team Europcar)でしょう。

他にも、世界で戦える実力を持つ数名の選手は大きく落胆したに違いありません。

しかし、逆に考えると、彼ら以外でこの一件で大きく落ち込む関係者はいったい何人いるのでしょうか?

今回の問題、簡潔に言ってしまえば、世界選手権に出場するために必要な 『各ポイントが足りなかった』 ということです。

宇都宮ブリッツェンに関していえば、今年のチーム目標の一つに 『UCIポイントを獲得する』 という内容を明記しており、実際にUCIレースではポイント獲得を意識した戦いを続けてきました。

そして、チームの若い選手から 『UCIポイントを取るとどうなるんですか?』 という質問を受けた際には、『僕たちが国内UCIレースでポイントを獲得することで代表枠の獲得に繋がる。例え自分たちが選ばれなくても世界で戦う日本人選手を助けるためにも必要なこと』 と説明しました。

結果として、宇都宮ブリッツェンは今季まだUCIポイントを獲得できていません。

もし、日本全体で世界選手権やオリンピックの枠を取るということに集中するのであれば、現在いくつかの国内チームが採用している 『エース=外国人選手、アシスト=日本人選手』 というチーム構成は良くない結果を生み出します。

何故なら、日本籍のチームであっても、チームポイントは各チームに加算されるも、国別ポイントについては該当選手の国籍地へと流れていってしまうからです。

要は、日本のお金と選手を使って他国のランキングを上げ、日本のランキングを下げることに繋がってしまいます。

しかし、上記のようなチーム構成でも同時にポジティブな要素も生み出します。

有能な外国人選手をエースに置くことでそのチームに所属する日本人選手たちは良い影響をたくさん受けるでしょうし、また、日常のUCIレースへの出場権獲得(各チームとしての)もより有利となるでしょう。

シーズン全体で考えると、選ばれる可能性の低い世界選手権の代表枠取りを中心に活動するよりも、その他の大半の時間を優先して活動するのはある意味で仕方がないともいえます。

各チームは、各チーム自身の予算で活動しているわけですから…

だからと言って、世界(トップクラス)で戦っている選手たち自身に、『どうせキミたちが選ばれるんだから枠は自分たちで取ってね』 というのも違う気がします。

ロードレースは個人競技ではないので、上のレベルで戦っている選手ほどレース中の自由度は下がってしまうものなので…

細かい解決案を募集すれば、それぞれの立場からそれこそ星の数ほどの意見が上がってくるでしょう。

しかし、本質的にみると、これまで何度も言ってきたように 『日本のロードレース界全体の共通の価値観』 が不在であることが最大の問題なのは間違いありません。

これから日本全体がどこに向かって(数十年単位の時間軸で)いくのか?

そのなかで世界選手権というレースがどの様な意味を持つのか?

私の先輩世代の方々で全てをまとめあげて一つの方向に皆をいざなうことができた人は誰一人いません。

要するに 『日本全体で何をしたいのか?(競技力向上という一つの要素だけではなく、お金の問題、ドーピングの問題、安全の問題、etc、などトータルでみて)』 ということを明確にしなければ本質的な問題解決はあり得ないということです。

これもこれまで散々書いてきたことですが、立場や時間軸が違えば主張する内容も驚くほどバラバラになっていきます。


若い選手が発する言葉。

ベテラン選手が発する言葉。

イケイケの選手が発する言葉。

かつてイケイケだったけれど怪我やスランプなどを経たあとの選手の発する言葉。

無責任な元選手が発する言葉。

真剣に将来を考えている元選手が発する言葉。

自分を持っていない監督の発する言葉。

自分を持ちすぎてしまっている監督の発する言葉。

2年先までしか見えない監督の発する言葉。

50年先を見据えている監督の発する言葉。

今いる選手の強化のみを考えている指導者の言葉。

日本から世界的な選手を輩出するために有能な子供たちの発掘から考えている指導者の言葉。

何はともあれビジネスの要素がなければ何一つはじまらないと考えている指導者の言葉。

色々なしがらみの中で八方塞がりとなっている連盟関係者の言葉。

ビジネスコンテンツとしての可能性を感じている代理店やメディア関係者の言葉。

etc…


恐らく、上記全ての発せられた言葉というのは、それぞれの価値観でみた場合は全て正解なのだと思います。

しかし、彼らが横並びで議論したとしても、大半が平行線を辿って相容れないまま終わるのが関の山…

必要なのは、彼らから強い突き上げを食らおうとも、信念を曲げずに全体を正しい方向へといざなえる管理者(調整役)なのです。

恐らく、こういった管理者が正当な評価を受けるのは、何か大きなことを成し遂げた何十年もあとになるのでしょう。

それでも強い心を持って諦めずに進み続けられる真の管理者が必要です。

これまでの国内ロードレース界にはまだその様な人材は現れていません。

何人かの方がチャレンジしましたが、みな挫折して自分の殻へと戻ってしまいました。

それでもチャレンジしただけ素晴らしかったとは思いますが…

今回の 『世界選手権ロード出場枠』 問題。

日本のロードレース界が根底に抱える問題の鏡だったのだと感じています。

『仕方がなかった』 で終わらせることなく、本当の意味での問題解決に繋げていくことを望みます。

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