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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
photo(c):Tatsuya.Sakamoto/STUDIO NOUTIS
昨日、2013年の日本チャンピオンを決める 『全日本選手権ロードレースエリート男子』 が、総獲得標高6,000m 弱という全日本選手権史上類を見ない過酷なコースで開催され、6月29日に開幕する 『ツール・ド・フランス』 のチーム内セレクションを待つ新城幸也選手(Team Europcar)が、2位に6分15秒という大差をつけて見事優勝を飾りました。
ちなみに優勝した新城選手の平均速度は 28.60km/h で、通常のロードレース(平均速度は 40km/h 前後)と比べていかに過酷だったかがわかります。
宇都宮ブリッツェン勢では、普久原選手が最終完走者となる16位でフィニッシュ。
普久原選手は今シーズンここまで逆風のなかでの活動が続いており、そんな状況を乗り越えて頂上決戦となる全日本でチーム内唯一の完走を果たしたことは、彼の精神力の強さを証明する意味でもとても素晴らしい走りだったと感じています。
しかし、昨年は2位&4位のリザルトを獲得し、今シーズンのチーム目標を3位表彰台に設定していた宇都宮ブリッツェンにとっては、『惨敗レース』 という言葉を使わなくてはいけません。
日々の活動に全勢力を傾けている選手たちというのは、レースでの結果に最大級の期待感(勝つという)を持ち、そしてそれが大きく崩れた時には逃げ場のない失意を味わうことになります。
それはとても残酷な現実。
自分自身を全否定されるわけですから、皆、混乱した頭を整理するのに様々な作業(原因探し、理由、受け入れ、etc)を消化していかなくてはいけません。
まるで、失恋のような、親友に裏切られたような、財産を失うような、勝った(目標を達成した)選手以外は多かれ少なかれそんな精神状態と戦うことになります。
そして、もし立ち直ることができなければ、ただでさえ過酷なトレーニングの質と量に影響がでてしまい、フィジカルスポーツである以上リザルトはどんどん悪化していってしまいます。
自転車ロードレースというスポーツは、100〜200人以上の選手がスタートし、1つの試合で 『勝つ』 という称号を得られるのはたった一人だけ(もしくは1チーム)。
ボールゲームなどは年間順位などを除き、毎試合勝てる可能性は50%あり、選手もチームもファンもスポンサーも 『勝つ』 という快感をそれなりに味わうことができます。
そういう意味では、自転車ロードレースを取り巻くファンやスポンサーというのは、根気(精神力)がないと続けていけないのかもしれません。
ただし、ビジネスとしての参入を考えているような大きなスポンサーさんというのは、メリットがなければ簡単に撤退してしまうことになります。
負けることが標準のスポーツ。
リーグ構想、1つのレースの開催、チーム運営、選手レベルでの育成強化。
立ち位置によって考え方は大きく異なり、ものによっては正反対の意見や評価が生まれたりもします。
『精神力』
これがなくなれば、このスポーツに関わることすらできなくなるのかもしれません。