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【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。
[JPTフルメンバーが揃い難易度の高いコース上で繰り広げられた力勝負を飯野選手が制する]
photo(c):Tatsuya.Sakamoto/STUDIO NOUTIS
昨日、2012年Jプロツアー最終戦となる『JBCF輪島ロードレース』が石川県輪島市の美しくも厳しい公道サーキットコースで開催され、宇都宮ブリッツェンのルーキー飯野智行選手が自身初となるメジャーレースでの優勝を飾りました。
また、飯野選手と共にワンツーフィニッシュを決めた増田選手が、昨年この地で失ったルビーレッドジャージを執念で取り戻し、全身5箇所を骨折する大怪我を乗り越えて念願のシリーズチャンピオンのタイトルを獲得しました。
これで、2012年メンバーが揃ってのレース活動は一区切りとなります。
既に年間タイトルが決まっていたこともあり、私自身、昨日のレース後は「嬉しさ」よりも「寂しい」という感情のほうが大きかった気がします。
2013年の宇都宮ブリッツェンは、半分のメンバーが入れ替わる予定となっています。
チームを巣立つ全員が新たな道へチャレンジすることになるので、全ては前向きな決断ではあるわけですが、それでも彼らに対して完全にフラットな感情になることは難しく、やはり毎年この時期というのは複雑な気持ちになってしまいます。
私が自転車ロードレースの世界に身を投じたのは15歳のとき。
それから、様々なチームに所属し、色々な場所を拠点としてきました。
自分が選手である時というのは、ある意味で自分自身に集中すれば良いので気持ち的にはシンプルな状態となります。
しかし、チームスタッフになってからは、所属選手たちの気持ちにアンテナを張り、そして一旦彼らの感情に入ってから物事を見なければならないので、自然と自分自身の気持ちだけでは済まなくなってしまいます。
但し、選手と監督の関係というのは、100%終わりのある関係です。
ですから、彼らへの愛というのは、余命付きの儚いものとなります。
もちろん、人間としての付き合いはずっと続いていくものではありますが、「選手と監督」というものに限定すれば、その時間は決して長いものではありません。
そういった意味で監督という職業に求められるものというのは、「人に対する深い愛情」と、「人に対する絶対的な距離感」なのかもしれません…
愛さなければ人は育たない、しかし近づきすぎれば自滅する。
そうやって人との距離感を形成してきた気がします。
人生とは、ある意味で終わりと始まりの繰り返しであり、その繰り返しが階段のように人生を上方へと形成していきます。
「悲しみや不安」というのは、次の「喜びと希望」に繋がっていくのは間違いありません。
今シーズンの最終レースは、11月25日(日)に沖縄県名護市で開催される『ツール・ド・おきなわ』となります。
しかし、自分のなかでは既に2013年のレースとして認識しています。
2012年のタイトル獲得は過去のこと。
今日からまた次のチャレンジがはじまります。