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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。

栗村修の日常 2012年10月13日

ドーピングスキャンダル

しゅ~くり~むら by 栗村 修
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ツール・ド・フランスの最多出場記録を更新して今季現役を引退したばかりの ジョージ・ヒンカピー(アメリカ/BMC)が、自身の過去のドーピング使用を告白したとのことです。

ジョージ・ヒンカピーは、ランス・アームストロングのツール・ド・フランス7連覇を支えた立役者的存在であり、その彼が禁止薬物の使用を認めたということは、USADA(アメリカアンチドーピング機関)との戦いを放棄したばかりのアームストロングの薬物使用についても、一定の憶測と影響が生まれることは必至でしょう。

また、今回の告白と同じタイミングで、USポスタル関連の調査で証言を行った現役選手のダニエルソン(アメリカ/ガーミン・シャープ)、ヴァンデヴェルデ(アメリカ/ガーミン・シャープ)、ザブリスキー(アメリカ/ガーミン・シャープ)、ライプハイマー(アメリカ/オメガファーマ・クイックステップ)などに対しても、USADAから6ヶ月の出場停止処分などが要求されるようです。

私がプロとしてヨーロッパで活動したのは、フェスティナ事件が起こった1998年。

今に続くドーピングスキャンダルのはじまりとなった年といってもいい象徴的なシーズンでした。

私が所属していたチームはポーランド籍のTT2(現プロコンチネンタルチーム)、MROZ。

チームメイトには、旧共産圏の有力選手が多く所属していました。

よく同部屋になっていたのは、東ドイツのスポーツエリートで最後のサイボーグと言われていた、ウーベ・アンプラー(ドイツ)。

その他、ポーランドチャンピオンのピョートル・ワデツキ(ポーランド、後にドモへ移籍しパリ〜ニースでステージ優勝や山岳賞を獲得)、ライモンダス・ルムシャス(リトアニア、後にファッサボルトロやランプレに所属しツール・ド・フランス総合3位やジロ・デ・ロンバルディア優勝)などもいました。

しかし、彼らはその後ドーピング検査で陽性となり、特にルムシャスは奥さんが薬物の運び屋になるなど、人生に暗い影を落とす事態にまで発展していました。

今回ドーピング使用を告白したヒンカピーは、私が17歳の時にフランスのレースで一緒になりました。お互いにジュニアの選手でした。

また、ヴァンデヴェルデについても、アマチュア時代にフランスの研修施設で一緒になっています。

アームストロングと同じレースを走ったこともありますし、ライプハイマーは下積み時代が長くてベルギーのケルメスを懸命に走っていました。

こう見ていくと、私が走り続けた時代というのは、いったいなんだったんだろうか?とつい考えてしまいます…

もし、今の時代に自分が走っていたなら、もっと結果は違っていたのだろうか?とも…

最近の報道や選手たちのコメントを読み解く限り、近年のプロトンというのは、薬物全盛期に比べてだいぶクリーン(速度が落ちている)になってきているのだと感じます。

しかし一方で、バイオロジカルパスポートを持たなくても良い海外のコンチネンタルチームや本場のアマチュア選手などに関しては、未だに薬物使用の実態があるという噂も聞きます。

また、歴史的に薬物スキャンダルの多いイタリアなどでは、ジュニアの選手が薬物に手を出すケースすらあるという記事を読んだり話を聞いたこともあります。

そんな中、一つだけ断言できること、それは日本のレース界が未だクリーンな状態を保っているということです。

一昔前であれば、この状態を『遅れている』と表現する人もいました。

しかし、この現実は、我々がなんとしても守っていかなければならない貴重な『財産』だと言っていいでしょう。

恐らく、今後も本場のレース界が完全にクリーンになることは難しいかもしれません…

だからこそ、我々のやり方でクリーンに世界を目指す方法を創りだすことが重要になってくるのだと思います。
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