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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。

栗村修の日常 2012年07月15日

判官贔屓注意報

しゅ~くり~むら by 栗村 修
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photo(c):Tatsuya.Sakamoto/STUDIO NOUTIS

昨日開催されたJPT第10戦の『JBCF石川ロードレース』に於いて、宇都宮ブリッツェンは『西日本ロードクラシック』に続いて再びワン・ツー・スリーフィニッシュを飾り、6月上旬から続いている連勝を5へと伸ばしました。

現在チームが発揮している実力というのは、選手たちがこれまで続けてきた努力の結晶であり、他のチームの選手たちよりも、多くの情熱と直向な努力をこのスポーツに対して注いできた結果だと感じています。

ロードレースというスポーツは面白いもので、一度チームが噛み合いはじめると『1+1=3』になる側面を持っており、実際の戦力以上に強さが際立つことが多々あります。

5連勝…

この数字は我々と我々を支えて下さる支援者の皆さんの努力の形であり、誰かにお願いして叶えてもらった数字などではありません。

しかし人間とは面白いもので、なんの世界に於いても一種の独占状態がはじまると、その状況に対して嫌悪感を持ちはじめたり、あらを探したり、いっちょ注文をつけたくなるなどの本能を持っていたりもします。

現在、フランスで開催中の『ツール・ド・フランス』に於いても、イギリスのプロチーム、Team SKY が圧倒的な力でレースを支配しているため、様々な角度から Team SKY のあらや弱点を探す作業がメディアを中心にはじまっています(もちろん私自身もガンガンあらを探していますが…)。

これら人間の正常な習性を考えると、そろそろ“判官贔屓”的な感情に対するケアを我々もはじめる必要があるのかもしれません。

ちなみに“判官贔屓”の意味ですが、『弱者や薄幸の者に同情し、味方したり応援したりすること。また、その気持ち。』とあります。

私が監督としてのキャリアを開始した『チームミヤタ』は、この“判官贔屓”の感情を味方につけたチャレンジャー系のチームでした。

そして、チームミヤタが解散後に移籍したシマノレーシングは、経済力にものを言わせて有力選手を贅沢に集める“非判官贔屓”のチームであり、勝って当たり前の空気が漂いまくっていました。

現在の宇都宮ブリッツェンは、まさにこの“判官贔屓系”から“非判官贔屓系”へと正常進化を遂げようとしている過渡期にあると言えます。

それでは、ある意味での『判官贔屓注意報』が発令しそうな状況にいる我々ができることとはいったいどんなことなのでしょうか?

バランスを取るために他のチームへもチャンスが生まれるレース運びをする???

もちろんそれはノーです。

そんなことをすればもっと悲惨な結果を招くでしょう

結局、特別な解決策などなく、これまで同様に『自らの信念を持ち続け』、『結果に関わらず常に最善を尽くし』、そして『どのチームよりも大きな危機感を持って活動を続ける』しかありません。

我々には2012年シーズンの明確な目標があります。

この目標をメディアやスポンサー様などに公言し、その上に現在の活動が成り立っています。

勝利すること、勝利が続いていることは、あくまで努力の結果であり、負け続けている時でも、勝ち続けている時でも、取り組む内容に変化があるべきではありません。

『勝っていてもどこよりも大きな危機感を持って活動し、そして目標に対して最善を尽くすこと』

それこそが我々にできる唯一の“ケア”なのだと思います。
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