しゅ~くり~む ら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

最近のエントリー

カテゴリー

アーカイブ

2011/08

S M T W T F S
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。

栗村修の日常 2011年08月01日

鈴木(複雑な人間模様)の日

しゅ~くり~むら by 栗村 修
  • Line

01
[2周目に形成された8名の先頭集団に初山・小坂・若杉の若手3選手がはいる]
photo(c):Tatsuya.Sakamoto/STUDIO NOUTIS

昨日開催されたJプロツアー第10戦の『JBCF東日本クラシック修善寺大会』に於いて、シマノレーシングの鈴木譲選手が自身初となるメジャーレースでの優勝を飾りました。

彼は、アジアツアーなどのGCで優れたリザルトを残し高い実力は認められてきたものの、『地脚』タイプであることが災いしてなかなか勝利に辿り着けなかった遅咲きの選手です。

2007年シーズンに当時私が監督を努めていたチームミヤタに加入した時はまったくの無名選手であり、実は今回のレースで2位に入った鈴木謙一選手(アイサン)の代わりに急遽ミヤタ入り(2007年に鈴木謙一選手はミヤタ入りすることが内定していたものの格上のアイサンチームからも声がかかり我々も勧める形でアイサンへ加入したため)したという経緯がありました。

当時、チームミヤタでキャプテンを努めていたのが柿沼コーチで、エースは現シマノレーシングの鈴木真理選手(今回のレースでは3位)、チームメイトには増田選手と中村選手がおり、移籍の活発な自転車ロード界では『昨日の友は今日の敵』状態になることを改めて認識させられるエピソードでもあります。

今回優勝した鈴木譲選手(シマノ)の選手人生は決して平坦なものではありませんでした。

元々、普通の大学生で Youcan というクラブチーム(在籍歴がある選手は、私、シマノ畑中選手、シマノ鈴木譲選手、アイサン鈴木謙一選手、ブリッツェン初山選手、ほか)で本格的にロードをはじめた彼は、大抜擢でチームミヤタに加入するも、チームはその年に親会社の業績を理由に解散、本人の強い希望でアイサンへの移籍を決めるも力を発揮できず、当時私が在籍していたシマノへ移籍し、ようやく自分の居場所を見つけたという『さすらいレーサー』なのです。

鈴木譲選手(シマノ)にはこれまでロードレースを辞めるきっかけがたくさんありました。

チームミヤタに加入するときもそれなりの反対(大学を休学するという判断をしたため)があり、チームミヤタの解散が決まり移籍先を探す作業が難航した時も続けるかどうかの迷いがありました。アイサンに加入後も一旦は辞めることを考えていたと聞いています。

しかし、彼は諦めずに続けてきました。

『何かを掴みとるには諦めないことが大切』、ということを彼の選手人生が教えくれています。

昨日のレースは、その鈴木譲選手(シマノ)と初山選手(宇都宮ブリッツェン)が終盤に二人で逃げ続け、若い初山選手が力尽きて脱落したあとは、鈴木謙一選手(アイサン)が追い上げるという、会場にいた Youcan 関係者(上記3名は全員 Youcan 在籍経験あり)がいったい誰を応援していいかわからなくなるという状態となり、最終ラップに入ってトップを独走する鈴木譲選手(シマノ)の先輩である鈴木真理選手(シマノ)が追走グループから抜けだして、前をいく鈴木謙一選手(アイサン)を追い上げた時は会場実況のアナウンサーが混乱するという『複雑な人間模様な日』となりました。

このレースの結果、シマノレーシングがチームランキングで首位に立ち、我々は2位に下がりました。しかし、ルビーレッドジャージは増田選手が変わらず死守しています。

『自転車ロードレースは人生のようだ』

私がいつも口にする言葉ですが、昨日のレースにはある種の『人生』を垣間見ることができました。

引き続きがんばっていきます。
  • Line