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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引きずり込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。

栗村修の日常 2010年04月30日

監督か解説者か?

しゅ~くり~むら by 栗村 修
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昨日、Jサイクルツアー第4戦の実業団白浜クリテリウムが終了しました。

結果は、チーム全体で攻めて、辻選手が3位。
辻選手自身も今回は捨て身のアタックを何度も仕掛けての素晴らしい走りでした。

チームの全ての選手が前で展開し、良い走りをしていたと思います。
皆、今できることのベストを尽くしてくれました。

第3戦の東日本実業団ロードと比べてチームは進化した走りを魅せたと思います。

表向きには…

ここから先は、チームの選手たちは読まなくて良いです。

国内ロードレースには解説者がいません。
選手もチームもまだまだ未熟ですが、ファンのレースを見る目も肥えているわけではありません。
なかには、マラソンと同じような感覚でレースを見ている方もたくさんいると思います。
もちろん、そんな偉そうことを言っている私自身が一番未熟ですが…

「表向き」と敢えて表現したことを「解説」します。

私の印象では、第3戦も、今回の第4戦も、同じくらい価値のあるレースでした。
第3戦の群馬のレースには、我々には明確なチームオーダーが存在していました。

よく野球に例えてお話しますが、第3戦の戦い方を説明すれば、例えば、1番バッターがヒットでも、フォアボールでも、デッドボールでも、なんでもいいので塁に出塁し、2番バッターがキッチリとバントで送り、そして3番&4番バッターが長打orホームランで点を捕るお馴染みのやり方です。

あの時のチームオーダーでいえば、1番バッターが=柿沼・中村・小坂・斉藤。
彼らの役割は、逃げができた場合、一人でも多くがその中に入る(出塁)ことでした。

そして、2番バッターが、不調で走りが読めなかった、廣瀬と若杉。
それぞれが、エースの辻と、長沼のそばにいて、重要な局面でサポートすることを望みました。

そして、3番&4番が、辻と長沼でした。

結果で言えば、逃げに乗れたのが柿沼のみで、3番&4番の出番の前にコールド負けをした様なレースだったのです。

あのレース、序盤型の選手の中では、中村の走りは良かったと思っています。
しかし、柿沼・小坂はもう少し、そして斉藤に関してはほぼ機能しませんでした。

柿沼は逃げに乗ったのに何故?と感じるかもしれませんが、「逃げグループに入ったら何があっても千切れてはいけない」という鉄則から外れてしまったからです。

本当は、自分がこの様な文章を書くのは本意ではありません。

柿沼がとてつもない量の仕事(運営面)をこなしてこのチームを支えているのをいつも見ているので、「そりゃあ仕方ないよ、シマノとは今は全てが違うから、彼らが僕たちに負ける方がある意味でおかしい」と思う気持ちは心のなかに少しはあります。

ただ、同じ土俵に立っている以上は、チームの規模や環境を敗因の理由にすることだけは「なし」だと思っていますし、妬みの力でシマノを僕らのレベルに引きずり降ろしたのでは意味がなく、僕らが彼らの位置までチームを引き上げなけらばならないのです。

ですので、開幕から勝ち続けているシマノには感謝していますし、また、勝ち続けることが非常に大変なことも理解しているので、シマノというチームへ尊敬の念もあります。

ともかく、監督である以上は、レースの中に起きた事実から目を背けることはできません。

そして、レース会場では、他チームは皆敵なので、彼らを全力で倒しにいかなくてはいけません。

ちなみに、個人的にはシマノの中に仲の良いスタッフや選手がいますが、レース会場では別です。
もちろんリラックスしている時は笑顔で話をしたりもしますが…

昨日のレース後、シマノのある選手が私に電話をくれました。

「元気がなかったけど大丈夫ですか?僕らもインタビューなどでは過激なこと言ってますけど周りにがんばって欲しいので…」
「OK、大丈夫、わかってる」

ほんの数十秒の会話でした。

私生活と仕事は分けなければ戦うことはできません…

話が逸れましたが、そんなことで第3戦の群馬に挑む我々には明確なビジョンがあったのです。
そして一つ、レース中の選手のやりとりでこんな内容がありました。

14名の逃げが決まる前に、ブリッツェンの前半型の選手たちの消耗が予想以上に激しく、これを見た長沼選手がアタックへの反応をはじめました。

そこで柿沼選手が、「長沼動くな、俺たちに任せるんだ、作戦がある以上、長沼が我慢しなければ白旗をあげることになる」と…

長沼選手は動けないことへのフラストレーションと、自分が動けば乗れたかもしれない逃げが決まってしまい、結局、レースが終わってしまったことで、吐き気がするほどの脱力感をレース中に感じていたと思います。

それは、辻選手も同じだったでしょう。

ただ、柿沼選手がいつも言うように、僕らの理想の戦い方は「予告ホームラン」であり、誰をどんなレース展開で勝たせるか明確にして、それを遂行することなのです。

それは、攻めであっても、守りであっても、両方キッチリと遂行しなくてはいけません。

恐らく、これをするには、最も高いチーム力(=フィジカル)を持たなくてはならないでしょう。

結局、あのレースの敗因は、14名の先頭グループの質を見る限りで、ブリッツェンの前半型の選手4名全員が乗っていても良かった訳ですし、また、脚があれば40秒まで一気に開く前にすぐに集団を繋いで一つに戻すことをしなければいけませんでした。

不確定要素の多いロードレースのなかで、決められたことをキッチリと遂行することほど大変な作業はありません。

その観点では、ここまで4連勝中のシマノも、王道レースができているかと言えば決してそうではないでしょう。

欧州の本当に強いチームというのは、1チームが集団の先頭に固まって先頭交代をはじめ、アタックなどの戦術を使わずに集団をどんどん小さくしていことがあります。

もしくは、勝ちを狙えるスプリンターのためにそのチームが終始集団の先頭に立って逃げが決まらないアベレージでレースを進めていき、最後はそのスプリンターがガチガチのマークをものともせずに、集団を制するというやり方です。

今のシマノは我々の目から見れば本当に強いです。

ただ、彼ら個人個人の強さというのは、結果が示しているほどずば抜けているわけでもありません。

仮に、シマノの選手とブリッツェンの選手を何名か入れ替えると、その選手たちの成績は今のものと変わる可能性があります。

ロードレースという競技は、強い選手はレースを走りながらより余裕が生まれ、弱い選手はレースを走りながらより弱くなっていきます。

それは、チーム力にも当てはまります。

もちろん、チーム全体で集団内に潜んで、他力本願的なレースで戦う場合はまったく別ですが…

昨日の第4戦は、チームで明確なオーダーを決めずに戦いました。

結果としては、辻選手個人の高い能力を改めて示したことになりますし、中村・長沼両選手の実力と的確な判断力を見ることができました。

また、第3戦では実力を発揮できなかった、斉藤・小坂・若杉選手の3名も、展開に絡み、自分で考えながらチームに貢献する走りをしました。

全員がベストを尽くし、「勝ちにいく」という気持ちは、どこにも負けない強いものを持っていたと確信しています。

「親バカ」的な発言になりますが、全力で戦う皆を見て、心から感動しました。

ただし、

昨日は、あくまでも「臨機応変型」のレースでの評価であり、もう一つの形を達成するにはまだまだ努力が必要になります。

現状、Jサイクルツアーを報道するメディアはまったく発達していません。
Jサイクルツアーに限らず、国内で行われている全てのレースがそうです。
テレビ中継もないわけで、レースを客観的に分析できる「解説者」もいないのです。

一チームの監督である私は、レース直後は色々な気持ちになりますし、また、負けたレースを毎回まわりくどく説明することを続ければ、「言い訳チーム」という印象を与えかねません。

ただ、現状の日本のレースを取り巻く環境というのは、我々が「完敗」や「惨敗」という言葉を安易に使えば、それがそのまま吸収されて全ての評価に繋がる怖さがあります。

「潔い」という日本独自の敗者の美学が裏目に出てしまうかもしれません…

逆を言えば、勝ちさえしていれば、中身がどうであろうとバレない環境にあるのです。

本当は、この記事は、勝ったレースのあとに書きたいと思っていました。

ただ、今日はなんとなく昨日の長時間ドライブの影響でテンション上がり気味だったので、つい書いてしまいました…

チームを応援してくださる皆さん、いつも本当に感謝しています。

「勝利を目指してがんばります!」という言葉にそろそろ飽きてきたかもしれませんが、僕たちは例え皆さんに飽きられたとしても、ストーカーの様に皆さんのために戦い続けます!

全員が「宇都宮のプライド」を持って戦っていきます。

勝たなければ何を言っても言い訳に聞こえるのは理解していますが、チームが成長していることは確実です。

ベストを尽くす、心から勝利を目指す、そしてチームが存在することに感謝する。

自分たちの階段、今はこれを昇り続けるしかありません。

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