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サイクル ロードレース コラム 2024年4月2日

【Cycle*2024 ロンド・ファン・フラーンデレン:レビュー】20%超の激勾配コッペンベルグは今年もやはり伝説的、虹を纏うファンデルプールは混沌を切り抜ける術を持っていた

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ロンド・ファン・フラーンデレン

コッペンベルグには数々の逸話が残る

もちろん、現役シクロクロス世界チャンピオンは、この混沌を切り抜ける術を持っていた。過去幾度となくコッペンベルグが舞台のシクロクロスレースに参戦し、2度制した経験も有している。泥に覆われた坂道が「とてつもなく滑りやすく」、「トラクションがまるでかからない」ことなど分かりきっていた。だからこそ坂を登り始めると同時に、ファンデルプールは全力で先頭へと位置取りした。

「加速したのは、単に面倒を避けるため。落車に巻き込まれたくなかったから。独走に持ち込む予定だったわけじゃない。コッペンベルグを絶対に先頭で切り抜けたかっただけなんだ」(ファンデルプール)

黙々とペダルを踏み続けたファンデルプールは、望み通り先頭でコッペンベルグを走りきった。てっぺんで、一瞬だけ、やはり自転車を下りずに後を追いかけてきたヨルゲンソンを待つべきかどうかとも考えたという。ただしすぐに腹をくくった。もはや後戻りはできない。フィニッシュまで残り45km。孤独な長旅へと走り出した。

ほんの9日前のE3サクソ・クラシックで、ファンデルプールは約44kmの独走勝利をもぎ取ったばかり。おそらく距離自体は恐れてはいなかったはずだ。「2019年の世界選手権を思い出させた」とフィニッシュ後に振り返った通り──あの日は英国の冷たい雨に打たれ、脚が止まった──、突然のハンガーノックには最後まで警戒し続けた。フィニッシュのわずか数キロ前まで、ファンデルプールが決して補給を怠ることはなかった。それでもフランドルの大地に降り続く雨と、吹き付ける冷たい風は、世界チャンピオンの体力を否応なしに奪っていった。

「最後の10kmは完全に空っぽだった。ただ眼を閉じて、できるだけ早くたどり着こうと努力した」(ファンデルプール)

幸いにもつい2週間前に10年契約を結んだばかりのキャニオンのバイクを、フィニッシュラインで高々と空に突き上げるだけの体力は、かろうじて残していた。一時は後続との差を2分近くに開いたが、最終的には1分02秒差で勝利を収めた。

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